スタジオジブリの映画『魔女の宅急便』は角野栄子さんの児童小説を原作としたもの。キキのようなキャラクターを生み出したのは、本当に魔女のような人だった――?

(c)1989 角野栄子・Studio Ghibli・N

そんなことを感じさせられるのが、88歳にして現役である児童文学作家の角野さんに4年間密着したドキュメンタリー映画『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』(1月26日公開)だ。ちなみに角野さんは2024年1月1日で89歳のお誕生日をむかえている。

『魔女の宅急便』の原作者・角野栄子さん (c)KADOKAWA

79歳ではじめて履歴書を書き、2024年1月現在86歳で現役のショップ店員をしている小畑滋子さんに大きな影響を受けたというフリーランスライターの上條まゆみさんが、角野さんに魅せられて密着取材をし、この映画を作り上げた宮川麻里奈監督に話を聞いた。

(以下、上條さんの寄稿)

「老後」という言葉がだいきらいだ

「老後」という言葉がだいきらいだ。だってわたしには、悠々自適の「老後」などないから。

長くフリーランスライターとして働いてきたので、もらえる年金はほんの少し。それだけでは暮らせないので、働き続ける選択肢しかない。よくも悪くも定年がない仕事だし、働くのは好きなのでそれはよいのだが、現実問題、いつまで体と頭がもつのだろう。50代も半ばを過ぎて、それが不安になってきた。

というのも最近、健康面で「あれ?」と思うことが増えてきたのだ。

我ながら驚いているのだが、食事量が減ってしまった! このわたしが! 子どものころから飲むのも食べるのも大好きなこのわたしが! 量が食べられない。
たとえば温泉旅館に泊まって、夕ごはんをたっぷりいただくと、朝食はおなかに入らない。無理して食べると、お昼ごはんはもういらない。街歩きをして、お茶とケーキ、なんてことも夕ごはんを考えると躊躇してしまう。はあ、情けない。
若いとき、自分がこうなるとは思ってもみなかった。これからも、こんなふうに想定外の「老い」に襲われるのだろうか。わたしの「老後」、どうしよう!

――などと、つらつら考えていたときに出会った映画が『カラフルな魔女~角野栄子の物語が生まれる暮らし~』。88歳にして現役児童文学作家・角野栄子さんの暮らしを描いたドキュメンタリー映画だ。
まず、しょっぱなのシーン。カラフルなワンピースを身にまとい、ひょこひょことおどける角野さんのかわいらしさにやられてしまった。色白でふっくらとしたお顔に、個性的なフレームのめがねが似合ってる。

(c)KADOKAWA