環境問題の疑問や不安。誰に聞けばいいのかわからないし、話せる人がいないと寂しい気持ちに……。そんなモヤモヤを一緒に話して解消するグリーンピースの「環境のはなしシリーズ」。第5回はプラスチックをテーマに開催しました。基本的なことから調査でわかった日本の現状、解決策まで、プラにまつわる事実を紹介します。
プラスチックが環境に悪い理由
見渡せばどこにでもあるプラスチック。私たちのまわりに溢れるプラスチックの量は、50年前と比べて20倍にも増えました。
プラスチックの年間生産量はこの50年間で20倍にも増えていて、このまま規制されなければ2060年までにさらに3倍に増える可能性がある(2015年比)。
グリーンピースは、「詳しく知りたい」という声が多いプラスチックについてお話をするイベントを6月8日に開催。グリーンピース・ジャパン プログラム部コミュニティアウトリーチ担当の儀同千弥が以下の内容についてお話しました。
お話しした内容は……
・プラ条約とは?
・プラスチックの問題点 汚染の現状や課題
・プラスチックの健康被害
・リサイクルは有効なの?
・プラ問題を解決させるためには
・グリーンピースがやっていること
・求められているプラスチック条約
・私たちにできること
など。
トピックは科学的事実から、どのように解決すればよいのか、私たちに今できることまで、盛りだくさん。質問も多く集まり、活気あふれる学びの場となりました。
本日は反響が大きかったプラスチックが環境に悪い理由 と、その解決のためにグリーンピースがやっていること を中心に紹介します。
プラスチックは気候変動、生物多様性の喪失、汚染すべてに影響する
今、私たちが住む地球が、「三重の危機」に直面していることをご存じですか?
三重の危機とは
止まらない温暖化による気候変動
速いスピードで種が絶滅していること 生物多様性の喪失
有害化学物質などによる汚染と廃棄物
プラスチックは、この3つの危機すべてに深く関わっています。身近なプラスチックがどのように環境に影響を与えているか、詳しくみていきましょう。
1.気候危機
温暖化と雨不足の影響で極端に水位が下がり、干上がってしまったライン川。ドイツ。(2022年8月)
すごいスピードで増え続けているプラスチックは地球温暖化に大きな影響を与えています。
プラスチックは、つくるためにも、処理のための焼却でも二酸化炭素を出していて、その量は年間で石炭火力発電所189基分にも上ります(2019年時点)。また、生産のためには、化石燃料を大量に使います。もしこのまま何の規制もされなければ、石油生産量の全体の20%もの量をプラスチックをつくるために消費してしまう計算です。
プラスチックが劣化する過程で、二酸化炭素の25倍以上も温室効果があるメタンを発生させることも気候危機に拍車をかける一因となっています。
時にはほんの数分しか使わないもののために石油を使って、大量に二酸化炭素を排出する、これが使い捨てプラの実態です。
2.生物多様性の喪失
使い捨てプラカップの中に入ろうとするウミガメの赤ちゃん。インドネシア、スマトラ島。(2019年12月)
大量のプラスチックごみが、毎年、数十万もの海洋生物の命を奪っています。
クラゲを好んでエサにしているウミガメは、海に流出したレジ袋をクラゲと間違えて食べてしまって命を落とすことも。研究によると、世界中のウミガメの52%がプラスチックの破片を食べていると推定されています* 。海洋に流れ出たプラごみは、海の生きものにとって命を脅かす存在です。
また、プラスチックには、製造時に素材を安定させるために添加剤が加えられています。廃棄されたプラスチックからは、添加剤として含まれている有害な化学物質が、大気、陸上、水中に溶け出します。
さらに、自然環境で劣化し、細かく砕かれてできたマイクロプラスチックが、汚染物質の運び屋になっていて、その一部は生物の身体を媒介し、食物連鎖によって最終的には人の食事にまで及んでいるのです。
マイクロプラスチックについて
3.汚染・廃棄物
先進国から運ばれてきたゴミの中から、売ることができるプラスチックや金属を探す子どもたち。フィリピン、ミンダナオ島。(2020年1月)
プラスチックによる汚染や、無尽蔵に増え続ける廃棄物も深刻な問題です。
日本が、世界で最も多くのプラスチック廃棄物を非OECD諸国に輸出していることをご存じでしょうか(2021年、2022年)。プラスチック廃棄物問題は、特に日本に住む私たちが真剣に考えなければならない問題です。
バーゼル条約によって規制が施行されたものの、日本を筆頭に、先進国は引き続き大量の廃プラスチックを輸出し続けています。廃プラから有害化学物質が発生し、健康被害を引き起こしていることはすでに多く報告されている事実です。
それにもかかわらず、先進国がプラスチックごみの処理を発展途上国に頼り続けることは、不平等な汚染の拡散にほかなりません。
グリーンピースは何をしている?
今回のイベントでは、①調査、②企業への提案、③政策提言、交渉 の3つにフォーカスして、ご紹介しました。を基軸にして、長きに渡りプラスチック問題に取り組んできました。
近年では、カフェチェーンでの使い捨てカップの大規模な消費量調査を行い、これまで明らかにされていなかった国内のカフェチェーンごとの使い捨てカップの消費量を初めて数値化しています。2020年に各チェーンで消費した紙とプラスチックの使い捨てカップの量と、リユース率を発表しました。
この調査で、大手カフェ9チェーンが、1日で100万個ものカップを消費していたことが明らかとなりました。
スターバックス コーヒーとの対話
調査によって、スターバックスの使い捨てカップの消費量は、2億3,170万個(1,626.7トン)と、他8チェーンの合算よりも多いことがわかりました。
グリーンピースは、2021年からリユースカップを導入するようにスターバックスに働きかけ、使い捨てカップの大幅削減を求めてきました。また、このキャンペーンに賛同して寄せられた2,400名(2021年6月時点)からのメッセージをアクティビストのeriさんと一緒に届けるなど、さまざまなアプローチで対話に努めてきました。
そして、2023年の2月、スターバックスは3月末からアイスビバレッジの店内グラス提供を全国1500店舗に拡大することを発表。
スターバックスで提供がはじまったアイスビバレッジ用のリユースグラス。
取り組みの発表から約2カ月後、10人に1人(グリーンピース試算)だったスターバックスの店内でのリユースグラスやマグの利用は3人に1人と増えているようです* 。
スターバックスでは現在、6月30日までの期間限定でタンブラーやマグカップを利用すると55円引きになるキャンペーン を行っています。今後は、テイクアウト向けのリユースの仕組み導入なども含め、さらなる使い捨て削減のための取り組みが期待されます。
プラスチックを減らすには
環境に悪いことがわかっているのに、プラスチックがどんどん地球上に増えているのは一体どうしてなのでしょうか。
その理由の一つには、企業の事情があります。
世界の海や川を最も汚染している企業は、5年連続でコカ・コーラ社。続いてペプシコ、ネスレ、ユニリーバがワースト企業にランクされている。(2022年)
化石燃料や石油化学企業は、世界が再エネに移行し始めたために予想される収入減をカバーするため、プラスチック生産への大規模な投資を行っています。また、現在「最も世界の海や川を汚染している」* コカコーラをはじめ、ペプシコやネスレ、ユニリーバといったプラを多く使っている企業は、プラ生産を増やそうとしている化石燃料、石油化学企業と利害をともにする関係でもあるため* 、こうした業界の動きも注視する必要があります。
地球の環境、そして安全で健康な生活のためには、プラスチックに依存している状態の企業や産業の事情を超えてプラスチック規制などを進めなければいけません。
世界共通のルールづくり
そのために、今最も期待されているのが国際プラスチック条約 です。今回のイベント参加者から寄せられた感想や質問からも、条約への関心の高さがうかがえました。
マンガでわかる!「国際プラスチック条約」〜プラスチック汚染のない未来がやってくる〜 – 国際環境NGOグリーンピース
グリーンピースは効果的な「プラ条約」を誕生させ、使い捨てにさよならするために署名を集めています。また、グリーンピースのメンバーが「プラ条約」のための国際的な話し合いの場に参加し、賛同してくださる人たちを代表して交渉しています。
プラスチックをはじめ、環境問題を解決させるためには、一緒に考え、行動できる仲間の存在が欠かせません。「環境のはなし」イベントでも、ともに環境に思いを馳せる時間を過ごすことで、参加者からも「身近に実行している方々の存在を知ることができた」、「モチベーションが上がった」、「元気をもらえた」などの声が寄せられました。
ぜひ、私たちの、使い捨てない社会を作るためのアクションに参加し、仲間になってください。あなたの一歩が社会を変える大切な力になります。
「国際プラスチック条約」で
使い捨てにさよなら
リユースの時代を始めよう
▶︎リユースを広めるSNS投稿キャンペーン「#リユースでラブアース」を開催 5月30日(火)〜6月30日(金)
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からの記事と詳細 ( プラスチックはどうして環境に悪いの? プラ問題の基本から解決策 ... - greenpeace.org )
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