キャリア自律に興味がある人とない人の橋渡しの難しさ
榎本佳代氏(以下、榎本):ありがとうございます。まだ時間もありますので、この後、篠田さんと櫻井さんが、みなさんのお話に答えていけたらと思います。
「今までの話を聞いて、自社での課題にあらためて気づいた」とか「仕組みや環境、制度を整えた企業さんの話を聞いて、自社ではこれをやってみよう」など、コメントをいただけたらと思います。また、「とはいえ、ここは気になっている」などがあれば、まだお時間もありますので質問してくださるとうれしいです。
1分ほどお時間を取りますので、チャットに書き込んでください。すでにいただいている質問も、この後お答えしていきます。
篠田真貴子氏(以下、篠田):その間に私の感想を言いますね。関心がないとスキルが身につかないという例なんですけど。エジプト料理の「コシャリ」の話、櫻井さんがされているのを、私は最低でも20回は聞いていると思うんですね。でも、一度も「コシャリ作ってみよう」と思ったことないですもんね。
櫻井将氏(以下、櫻井):(笑)。いやいや、そうですよね。
篠田:そういうもんですよね(笑)。
榎本:作ってみようとかないですね(笑)。
櫻井:今日ご参加のみなさんは、1on1や自律的ということに興味があるので、「すごく良いものだよ」と伝えると思います。でも人によっては「俺には関係ないよ」と思っちゃうんでしょうね。「わかった、わかった。でもさ、もっと大事なこともあるじゃん」みたいな。
篠田:たぶん「キャリア自律」という仕組みを設計した人事の方は、もう動機を持っているから、動機を持つ前の自分には戻れないし、わからないんですよね。
一度「聴く」ことを自分が経験して、素晴らしいと思ってしまうと、それを知らなかった頃の自分が思い出せないですよね。それで、うまく橋渡しできないこともあるのかもしれませんね。
「1on1が効く」という証明が、施策展開の後押しに
榎本:ご質問で「1on1の必要性をボトムで提案してもトップが関心がない、否定する場合、ボトムの人間はどうすればいいのか」といただいています。これも非常に難しいところですね。
櫻井:組織作りですかね。これはちょっと角度が違っちゃうかもしれないですけど、先ほど言ったYeLLの導入も人事の方にお話しすると、「すごく大事だよね」と多くの方が言ってくださるんですけど、じゃあそれを今この状況で全社で導入するかというとやっぱりなかなか難しくて。
よく取られる手法としては、こういうことに一番興味がありそうな部門でまずは試す。組織の中で起こしたい変化が起きるのかというのをちゃんと定量・定性で見て、それを横の部署に、また興味がある層に展開していく。いくつかやっていくと、人事として「じゃあ全体でやろう」という施策になるというのと似た構造かなと思っていて。
トップの方も1on1がいいとか悪いというよりは、たぶん会社を良くしたいというのが意図だと思うので、それに1on1が効くということを証明できれば、採り入れてくださると思うんです。
1on1ってあくまで手法・手段だと思うので、会社としての目的・方向性と1on1というものの手段が合致するんだよということをどうやって見せていくかなのかなとちょっと思いましたが、気持ちはすごくよくわかります(笑)。
篠田:そうですよね。仕組みとして1on1を本当は入れたいのに、なかなか組織の状況がそうじゃないという方のお話をうかがうことがあるんですけど、定期的な1on1を有志でやるというだけでも、少なくともそれに関わる方々にとっては絶対プラスにはなると思うんですよね。
榎本:そうですね。
篠田:そこで得られた実感をなんとか組織につなげていくということはあってもいいのかなと個人的に、勝手ながら思ったりはしました。
榎本:確かに。
話を最後まで聴けない人にはどう働きかければいいか?
篠田:あと質問で「話を最後まで聴けない人がたくさんいます。改善に向けた働きかけのヒントがあれば」といただいています。
さっき櫻井さんも、最後まで話を聴いていなかった会社の役員が若い人の話を最後まで聞くようになったという、まさに聴けない人が聴けるようになった事例を出してくださいました。「あの変化はどうして起きたの?」とあらためて聞いてみると、何なんですかね。
こういうことがあったので、それまで若い人の話は「そういうことね」と切っていたみなさんが聞くようになったという変化が起きたというエピソードがあると、もしかしたら1つのお答えになるかなと思いまして。
櫻井:先ほどからの繰り返しになってしまう気がするんですが、本当に「聴かれた」という体験だなと思っています。
管理職は、会社に自分の「感情」を扱う場所がない
櫻井:「聴かれた」という体験とは何かと言うと、さっきの図で何度もお見せしている、管理職の方々が、「自分がこの会社ではこう振る舞う」とか「こうするのがいい」という、自分なりの会社の中でのキャラクターみたいなものでずっと過ごされていて、上からのプレッシャーを受けながら、下に対して伝えてもあまり動いてくれないとういう中で動いている。
この上から受けているプレッシャーへの感情とか、下の人たちに言っても伝わらない感情というのを扱う場所がないんですよね。でも、自分としての部長像・課長像があるので、そう振る舞わなければならないと思っていて。
一度ちゃんとこの感情を扱う、自分がそれを感じている価値観を扱うということをした時に、さっきの「上司と社外の1on1ってどう接続するんですか?」という話に近いと思うんですけど。
管理職の方が自分自身として何が大切なのか、どうしたいのかというのを扱った上で、「じゃあこの職に戻ってきた時にどうするの?」という話に違う切り口が現れる。この体験をして「1on1って大事だな」という変化につながっていくという、二段構造みたいになっている。
キャリア自律を阻む「●●たるもの」という思い込み
篠田:そうですね。今の話は、こういう理解の仕方でいいんですかね。つまり話を聴かないという現象を見て、「あの部長は話を聴かない人だ」というんじゃなくて、それはもしかしたら部長という役割・イメージがそうさせちゃっているということに光を当てる。
これはそれこそ人事部門でこういったキャリア自律に向けた施策を、企画・運営される方とか組織の責任者の方の視点に立った時に、今ここで話している構造を知らないで一生懸命働きかけても、やっぱり噛み合わないんですよね。
今までは「部長たるもの、部下の仕事の指導をするものである」と。まったく同じ発想で、今の構造だと「部長たるもの、部下のキャリアを導くのである」と思い込んでしまう。そうすると、本来キャリア自律につながるべき本人の考えとか、いわゆる自分の声との向き合い方がまったく開発されないというか、耕されなくなってしまうんですかね。
榎本:確かに。
「聴く」体験でわかる、組織運営の「そっち側のルート」
櫻井:篠田さんのお話を聞いていて思ったのは、管理職の方々も組織をこうしていきたいという方向性や目的があって、その手段として「話す」「伝える」というアプローチを採っていると思うんですよね。ビジョンを明確にする、方針を明確にして伝える、それをやってもらうということが、一番この目的に近いと思っていると思うんです。
でも自分が「聴かれる」という体験をすることで、その目的に、「そっち側のルートがあるの?」と気づく。「『話す』『伝える』だけじゃなくて『聴く』ということで同じ目的が達成できちゃうなら、むしろそっちのほうが今の時代に合っていそうだな」ということに気づくんですよ。
そうすると、片方だけの話じゃなくて両方の掛け合わせをするんです。ビジネスなのでもちろん「伝える」とか「指導する」とか「厳しく言う」とかはしつつ、「聴く」ということをどう混ぜるか。YeLLの「聴くトレ」というサービスでは、それをどうやってやるかを伝えています。
「聴くトレ」をすると、60分のミーティングで55分話していた課長が(笑)、最初から部下に話を聴くようになったという変化が、リアルに何人も起きてくるんですよね。そっちのほうが組織運営としてより生産的だし、目的を達成できると、たぶん課長が腹落ちをするんだと思っています。
これは「対話が大事だ」と強制するものということではなくて、やっぱり本人が「そのほうが良くない?」と思う体験がないといけないんだと思うんですよね。
篠田:本当にそうですよね。「部長に話を聴かせよう」というアプローチ自体がやっぱり(スライドの)左下の世界観で(笑)、みんなでとにかく右上に、まず根っこの考え方を少しずつ変えていきたいですね。ありがとうございます。
「聴く」も「1on1」も、会社の目的達成のためのやり方の1つ
榎本:エールだとこういうセミナーの場に上司の方と一緒に来て聞いていただいたり。あと、我々とお話しする時や、このセミナーのタイトルもそうなんですけど、「聴く」が大事とか、1on1が大事というのは言っていなくて。
あくまでもキャリア自律であったり、エンゲージメントだったり、会社としてこういう方向に行きたいとか、部長としてはみんなに自律してほしいとか、そういう方々の願いとか「こうしたいんだ」という思いを実現するために、「実はこういうやり方がある」というかたちでご紹介をしています。
一緒に打ち合わせの場とかで、部長さんとか上の方とお話しして、我々も今努力をしている最中なんですけども、部長の方、上司の方、社長の方のお話を「聴く」ということを我々も商談でも意識しておりますので、ぜひご相談いただければと思っています。
社会が変わっているからこそ、「上司像」も変わらないといけない
櫻井:チャットに書いてくださった「『上司はアドバイスしなければならない』というとらわれがある」というのはまさに。そういうとらわれがあるから、「そうじゃないよ」と言ってもたぶんわからない(笑)。「自分はそういうとらわれがあるんだな」と自分自身で気付いていかないと、この行動変容って本当の意味で起きないと思っています。
社会が変わっているのに対して、管理職の方々自身が「上司としてこうあるべきだ」という像や、自分が持っている信念・バイアスが、違うものであるということに気付いていくお手伝いをしないといけないんだろうなと思いますね。
篠田:おもしろいな。本当にそうですよね。
榎本:次のテーマで見て行きましょうか。ありがとうございます。みなさんからチャットにたくさんの書き込みをいただいています。
櫻井:ありがとうございました。
榎本:最後にまたアンケートをいただいて、「もうちょっとここが聞きたかったんだ」というところを、次のウェビナーや記事のテーマにして、みなさまにお届けしたいと思っております。
篠田:全部読んでおりますので、よろしくお願いします。
榎本:今日はチャットでも素晴らしいご意見をいただいてありがとうございます。
篠田:ありがとうございました。勉強になりましたね。
榎本:最後のみなさんの「こんなことをしてみようと思います」という声が、すごく勇気になっていて。ここに集まってきている方の横同士でもつながりたいぐらいですね。では本日に関してはこちらで終了とさせていただきます。またどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
篠田・櫻井:本当にありがとうございました。
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