「虎に翼」(C)NHK
「寅子の『はて?』は私たちが日々思っているモヤモヤそのものだ」
「こんなに自分事で朝ドラを観たことがあっただろうか」
「寅ちゃんはがんばったのに100年経っても変わらないことが山のようにある」
「いろんな虐げられている気持ちが存在することを気づかせてくれる」
毎日のように、こういった感想が上がる連続ドラマ小説『虎に翼』。今SNSには『虎に翼』の登場人物に思いを重ね、自分を語る人たちが増えている。物語は今から約90年も前のお話だが、寅子の「はて?」に対して「今も変わらない」「自分たちの時代で終わりにしなくては」という声は少なくない。
SRHRやジェンダー平等に関する啓発活動を続け、国際会議でも活躍するアクティビストの福田和子さんも4月20日にXで、『虎に翼』の弁護士を目指す5人の女学生が男子学生ばかりの法学部の校舎に入っていく姿を捉えた写真と、2021年2月16日に森喜朗氏の女性蔑視発言の再発防止を求めた「#ジェンダー平等をレガシーに」で集めた署名を東京オリンピック・パラリンピック組織委員会に提出に行ったときの仲間との写真を並べて、「朝ドラとシンクロした瞬間だったと思ってる」とポストした。
100年前の寅子同様、緊急避妊薬のOTC化や性暴力問題、ジェンダー平等など、女性の権利に関する活動を続ける福田和子さんが「初めて朝ドラにハマった」という『虎に翼』への想いを寄稿いただく。
定例文の慰めでは終わらない「本音を描く力」
完全夜型体質で、朝がめっぽう弱い私の体内時計すらすっかり変えてしまった『虎に翼』。これまで「朝ドラを欠かさず見る」という習慣は私にはなかったのだが、在宅で仕事をしている日には、毎日朝昼と2回観て、そのたびに私は涙してしまう。不意に感情が高ぶって、涙がこみ上げてきてしまうシーンがあまりにも多いのだ。
例を挙げたら切りがないが、第2週目の離婚の決着が付かない夫婦の裁判でDV夫に母親の形見の着物を返して欲しいと妻が夫を訴えた裁判を傍聴するために法廷に女学生みんなで入るシーンや、第3週目の男子学生ばかりの法学部に乗り込んでいく寅子たち5人。彼女たちのこうした戦いの先に「今」があるんだと、今戦う仲間たちの姿とも重なって、観るたびに号泣してしまう。
また、寅子の同級生である男装の女学生・山田よねが、貧困や過去に起きた弁護士との出来事を寅子らに打ち明けたとき、寅子がよねにどう言葉をかけていいか迷うシーンが描かれた。寅子が頭の中で「話してくれてありがとう、つらかったわね」と励ますと、「あんた、私のこと可哀想扱いしてるの?」とよねが叫んだときには、スカッとした。
この「話してくれてありがとう、つらかったわね」は、昨今、性被害者にかける言葉の定例文のようになっている。もちろん、「どうして逃げなかったの?」といった二次加害な発言をされるよりはずっといい。しかし一方で、この一言によって、対等な友だちとして話していたはずなのに、「傷ついた自分」と「聞いてくれる相手」という、力の差が生み出されてしまう気もしている。(ありがとうって、誰目線?)とか(そんな簡単につらさがわかるわけなくない?)とか思いつつ、(悪気はない言葉だし……)、とこの言葉を聞くとモヤモヤするだけの自分がいた。
ドラマ内で、励ますべきか迷う寅子、そしてよねの一言に、「よくぞ、このモヤモヤを描いてくれた!」という気持ちになった。本当にこのドラマは、様々な出来事や感情を丁寧に描かれていると感じる。
からの記事と詳細 ( 「『虎に翼』を見るたびなぜこんなに泣いてしまうのか」それがわかった瞬間(福田 和子) - 現代ビジネス )
https://ift.tt/6EF3yf8
No comments:
Post a Comment