調査は、東京大学大学院医学系研究科 国際保健政策学教室において、1943年から1975年の間に生まれた人を対象に、国立社会保障・人口問題研究所が実施する出生動向基本調査を用いて分析を行なった。分析結果は2022年4月27日、専門誌「Plos One」に掲載された。
近年、日本における少子化が課題となっている。しかしながら、その背景要因については不明瞭な部分が多く、特に経済的状況や学歴がどのように関係しているかについては明らかになっていない。そこで同研究では、国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査を用い、日本人の子供の数がどのように変化しているのか、所得・教育・年齢を中心に、40代の時点での子供の数を用いて分析を行った。
「男女がもつ子供の数の変化」について、1943~1947年生まれと1971~1975年生まれ(40~49歳時点)で比較した結果、子供をもたない人の割合は男性で14.3%から39.9%、女性で11.6%から27.6%へ増加。子供をもたない人の数は、およそ3倍に増加したことがわかった。合計出生率をみても、男性で1.92から1.17に減少、女性で1.96から1.42へ減少。また、子供をもっている人の場合、子供は1人だけの割合が増え、2人以上いる割合は減少していることもわかった。
次に「学歴・収入と子供の数の関係」について比較したところ、もっとも所得が低い層(年収300万以下)では、子供をもたない割合は25.7%から62.8%へ37.1ポイント増加し、合計出生率も1.74から0.73へ1.01ポイント減少した。一方、もっとも所得が高い層(年収600万以上)では、子供をもたない人の割合は6.9%から20.0%で13.1ポイント増、合計出生率は2.10から1.60の0.5ポイント減にとどまった。収入が高い男性よりも、収入が低い男性のほうが、子供をもたない割合の増加度合いが大きいことがわかった。
また、男性では、1943~1947年の間に生まれた人を除き、大卒以上の学歴の人ほど子供をもっている傾向にあった。一方、女性では1956~1970年の間に生まれた大卒の人は、それ以外の人と比べて子供をもっている人の割合が少なく、合計出生率も低かった。しかし、1971年以降に生まれた場合は、大卒とそれ以外の人とでの差異は見られなかった。
調査より、日本では深刻な少子化が言われているが、その原因は子供をもたない人の割合の増加と、子供を複数もつ人の割合が減っていることの双方があることが明らかになった。また、男性は高収入・高学歴であるほど、子供をもっている人の割合や子供が複数いる人の割合が大きいこともわかった。一方で、女性の学歴と子供の関係に関しては、これまでは高学歴の女性ほど子供をもたない割合が高いとされていたが、近年ではそのギャップは縮小傾向にあることがわかった。この傾向がさらに若い世代でも続くのか、また諸外国でも見られている逆転現象(高学歴女性の方が子供をもつ割合が高くなる)となるのかについては、さらなる研究が必要である。
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