ケニアのアフリカゾウ。2023年撮影。
Eric Lafforgue/Art in All of Us/Getty Images
- 科学者がAIを使い、ゾウには1頭ずつ呼び名があることを発見した。
- 機械学習で、1986~2022年の間にケニアで録音された、数百のゾウの鳴き声を分析した。
- 名前のような鳴き声を認識するゾウの能力は、彼らに抽象的思考能力がある可能性を示している。
AIツールを使う科学者らが、ゾウには1頭ずつ呼び名があるようだ、ということを発見をした。
ある科学者グループが機械学習を使い、1986年から2022年の間にケニアで録音された野生のアフリカゾウの鳴き声を分析し、その結果を6月10日に査読付き学術誌『ネイチャー・エコロジー・アンド・エボルーション(Nature Ecology and Evolution)』で発表した。
科学者らが注目したのは、アフリカゾウ同士の3つの異なるタイプのコミュニケーションで、「ゴロゴロ鳴る音」とも言えるものだ。ちなみにアフリカゾウは、絶滅の危機に瀕している。「コンタクトコール」は、50メートル以上離れた仲間のゾウを呼ぶ時の音。「グリーティング」は近くにいるゾウ同士の音。そして「ケアギビング」はメスのゾウが赤ちゃんゾウをあやしている時の音だ。
「レッツゴー」の音など、他のタイプの音は分析しなかった。そのような状況でゾウは、具体的な名前を使っていないようだからだと著者らは説明した。
こうした意思疎通のタイプそれぞれに、ゾウが互いに特有の名前のような鳴き声で呼び合う証拠を、科学者らは見付けた。人間以外でこのような呼びかけが見られたのは初めてのことだ。
互いに相手の声を真似て呼び合うイルカやオウムとは違い、アフリカゾウの鳴き声は、他のゾウの声を真似ねたものではない。もっと抽象的で、人間が互いを呼ぶときに使うようなものだ。
これは、ゾウはこれまで我々が理解してきたよりも優れた抽象的思考能力を持っている可能性を示している。
機械学習モデルの助けによって、研究者らはそれぞれの鳴き声の音の構造を解釈し、どのゾウが呼ばれているのかを断定することができた。これは、AIの助けがなければ成しえなかった、なぜなら人間だけではゾウの音をきちんと区別することはできないからだと、この研究の主執筆者であるマイケル・パルド(Michael Pardo)はBusiness Insiderに話している。
ある1頭が呼ばれた時の鳴き声を再生したところ、そのゾウは別のゾウに対する鳴き声の時とは異なる反応を示したと研究者らは説明した。
研究者は、自分を呼んでいる娘ゾウの鳴き声の録音を聞いている母親ゾウの動画をYouTubeに投稿した。娘の鳴き声が聞こえると、母親は頭を上げ、返事をしている。
パルドは、飼育下の象は犬や猫のように人間が名付けた名前で反応するが、「今回は、動物同士が名前やそれに似たもので呼び合う数少ない例のひとつ」だと述べた。
それでも、研究者はどの部分の鳴き声にゾウの名前が含まれているかを特定することができなかった。各鳴き声には、年齢、性別、感情状態、行動状況といった発信者の特徴も同時にコード化されていることに留意すべきだとしている。
著者らは、異なるゾウが仲間のゾウを指すのに同じ名前を使うという仮説は賛否両論あるものの、「同じ受け手に呼びかける異なる鳴き声を出すゾウの間で少なくともある程度の収束が見られた」と説明した。また、家族内のすべてのゾウが特定の仲間を指すのに同じ名前を使う可能性があると著者らは書いている。
「これは、ゾウが任意の音とそれが指す個体との抽象的なつながりを理解していることを示唆している」とパルド氏はBusiness Insiderに語り、ゾウが抽象的な名前を理解できるのであれば、他の物事についても抽象的に考えることができる可能性があると付け加えた。さらに、研究の著者らによると、ゾウは他の物体にも名前を使う可能性があるという。
「これは、言語の重要な前提条件である発声学習がどのように進化したかについて何かを教えてくれるかもしれない」とパルド氏は語った。
「発声学習とは、新しい音を出すことを学ぶ能力であり、動物の中では珍しいものだ」
からの記事と詳細 ( ゾウが名前を呼び合っていることがわかった…AIによる音声の分析で。抽象的な思考能力を持つ可能性も - Business Insider Japan )
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