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Monday, May 22, 2023

電アシ自転車ともバイクとも全く違う乗り味、カワサキの電動3輪『ノスリス ... - レスポンス

カワサキモータースが『noslisu(ノスリス)』シリーズとして新種の「のりもの」3タイプを世に送り出した。電動アシスト自転車の「noslisu」と「noslisu cargo」、そしてフル電動(電動三輪車)でミニカー登録となる「noslisu e」がそれだ。

これらnoslisuシリーズは手作業で組み立てられ、全国のnoslisu取扱店(公式HPに情報あり)で順次、購入可能になる。

カワサキ noslisuシリーズカワサキ noslisuシリーズ

2020年9月から川崎重工業の社内公募制度のひとつとして立ち上がっていた「noslisu」プロジェクトが2022年5月18日に事業化されたことを受け、まずはnoslisu(36万3000円)を5月20日に販売をスタートする。続くnoslisu e(43万0100円)は6月、noslisu cargo(41万4700)は7月にそれぞれ販売を予定する。

発売を前にクローズドコースで短時間の試乗が行えた。noslisuシリーズは公道で走行可能なのりものだが、noslisu特有かつ電動3輪車の特性をつかむためスタッフを解説を受けながらの体験となった。

◆3輪電動アシスト自転車の「noslisu」とは

カワサキ noslisu(ノスリス)カワサキ noslisu(ノスリス)

最初にnoslisuから試乗する。電動アシスト自転車(正式名称/駆動補助機付自転車)に属するのりもので、前2輪、後1輪の3輪車だ。仕組みはいわゆる電動アシスト自転車と同じで、アシストモーター(noslisuと後述するnoslisu cargoは定格出力180WのDCブラシレス方式)が人力(脚力)を補助(アシスト)する。アシストモードは「エコ(アシスト可能距離53km)」、「標準(同47.4km)」、「パワー(同33.1km)」の3段階から選べて、走行中もモード変更が可能だ。

シートは自転車と同じく高さ調整が可能。一方でハンドルの高さ位置は固定式。身長170cmの筆者が適正な乗車姿勢となるようシート高を調整すると、ハンドル位置はやや低めで軽い前傾姿勢になる。よって脚力だけに頼らず全身を使ってペダルを漕ぎやすい。

カワサキ noslisu(ノスリス)カワサキ noslisu(ノスリス)

noslisuとnoslisu cargoの電動アシスト機構は、いわゆる電動アシスト自転車の法規(道路交通法)に則っている。即ち、人がペダルを踏む力とモーターによる補助力の比(アシスト比率)が10km/h未満の速度では1:2を上限とし、10km/h以上 24km/h未満の速度の場合では走行速度が上がるほどアシスト比率が徐々に減少。そして24km/h以上の速度では補助力がゼロ(電動アシストしない状態)になる。

駆動用のリチウムバッテリー(0.248kWh)を含めた車両重量は28kg。3輪で安定していること、電動アシストが介入することから漕ぎ出しは軽い。ちなみに駆動軸にはシマノ製の有段ギヤを装備し、右手の回転ダイヤルで操作可能だ。

◆乗り方で重要なのは「ハンドル操作で曲がる」こと

カワサキ noslisu(ノスリス)カワサキ noslisu(ノスリス)

noslisuの乗り方でもっとも重要な点は、前輪を傾けて(リーンさせて)走らせるのだが、じつはリーンの前にハンドルを曲がりたい方向へとしっかり切ることがスムースに走らせるコツだ。

「バイクに乗り慣れていらっしゃると、カーブ走行させる際、最初にリーンさせてからハンドル操作を自然に同調させる乗り方になると思いますが、noslisuの場合はまずハンドル操作を行なって、つぎに曲がりたい方向へと自然にリーンさせると気持ちよく走らせることができます」(カワサキモータースジャパン企画統括部の吉田修平さん)。

カワサキ noslisu(ノスリス)カワサキ noslisu(ノスリス)

直線での走行フィールは電動アシスト自転車そのもの。ハンドル操作力は前輪の接地面積が2倍(前2輪)なので自転車よりも重めだが、独自に開発した2輪ステア機構(特許取得済み)はフリクションなくスムースで、左右のリーンにおいても違いはなかった。左右輪が独立して上下に動くので、どちらか一方の車輪が段差を通過しても車体は水平を保つ。ここも構造上のチャームポイントだ。

停車時はリーンロック機構(2輪ステア機構の中間あたりにディスクブレーキのような仕組みで固定する)によって自立可能。さらに坂道などで水平を保つため、左右どちらかへと任意の傾斜角をつけた状態での固定も可能だ。加えて前後ブレーキ(ワイヤー式ディスク)を作動させたまま固定することもできるので一層、安定する。

◆25kgの重りを乗せて「cargo」に試乗してみる

カワサキ noslisu cargo(ノスリスカーゴ)カワサキ noslisu cargo(ノスリスカーゴ)

続くnoslisu cargo。機能面ではnoslisuと共通ながら、荷物の運搬を目的に設計した専用フレームが異なる。ちなみにnoslisuシリーズのフレーム開発には、同社のスポーツバイク『Ninja H2』の担当者も加わっているという。

noslisu cargoはその名の通り、荷物の運搬に特化したモデルだ。前輪とハンドルの中間位置に積載スペース(容量は約120リットル)を設けることで、ハンドル操作に影響を与えず重い荷物を載せたまま安全に走らせることができる。

公道を走らせる場合の注意点として公式HPでは、「許容荷重は、都道府県条例により異なる場合があります」とあるが、クローズドコースでの試乗時は積載スペースに25kgのバラストを積載して走らせた。

カワサキ noslisu cargo(ノスリスカーゴ)カワサキ noslisu cargo(ノスリスカーゴ)

一般的に自転車の前かごに重い荷物を載せると安定性能が損なわれフラフラしがちだが、noslisu cargoは積載状態/空荷状態での走行フィールがほとんど同じ。安定感が抜群に高い。厳密には重い荷物があるため、強まる遠心力によって車体が直立しようとする力が強まる。よって、ハンドル操作力を強めつつ、リーン角を保つ必要があるものの、よほど意識しなければわからない。

「ハンドル中央部にヘッドライトを装着していますので、積載する荷物の高さはヘッドライトを覆わないことを基準にしています」(前出の吉田さん)。

宅配事業者でもあるヤマト運輸は2013年からヤマハの電動三輪車+脱着式専用リヤカーを装備した『PAS GEAR CARGO』(最大積載量123kg)を採用しているが、noslisu cargoはそうした法人向けのほか、個人ユースでは週末のまとめ買い用途に使えたり、積載方法に工夫を凝らせばサーフボードが載せられたりするのではないか。じつに想像力をかき立てられる一台だ。

◆フル電動の「noslisu e」は新感覚の乗り味

カワサキ noslisu e(ノスリスイー)カワサキ noslisu e(ノスリスイー)

最後が個人的に大注目していたnoslisu eだ。フル電動(電動三輪車)でミニカー登録となるnoslisu eは、車両重量は35kgと電動アシストのnoslisuから7kgほど重いが、定格出力500W/バッテリー容量0.7kWhのパワートレーンによってぐんぐん走る。

ハンドル左側にある電源ボタンを長押ししてシステムを起動させるとメーターが表示(文字色はライムグリーン!)されスタンバイ状態(メーター表示は「0」)になる。その後、同じく左側の出力モードボタンを操作して「モード1(最高速度20km/h)」、「モード2(同35km/h)」から選択すると、メーターには「1」ないし「2」と大きく表示される

発進操作は、ハンドル右側のアクセルレバーを押し込む方式だ。ここが既存のバイク(オートバイ)と異なっている点で、水上バイクやスノーモービルのような操作ロジックに近い。ATV含め、あらゆるのりものを手掛けるカワサキらしい選択だ。なお、モード2の設定で平坦路を30km/hで走行した場合のAER(1充電あたりの走行可能距離)は47.4km(公式HP)。

カワサキ noslisu e(ノスリスイー)カワサキ noslisu e(ノスリスイー)

フル電動車なのでスタート時から電動モーター走行が可能だが、個人的にはペダル操作で発進させてから、じんわりレバー操作を同調させるとスムースに走らせることができた。

脚力によるペダル操作/電動モーターへのレバー操作では、ともに後輪に駆動力が掛るが回転が速いほうが優先される。また、今のところ電動モーターを活用した回生機能は設けていないという。

正直に告白すると、最初のカーブでは「あ、曲がらない……」とかなり焦った。ハンドル操作の前にリーンさせようと身体が無意識に反応していたからだ。冷静になって説明頂いた吉田さんの言葉を思い出し、

(1)まず減速。
(2)行きたい方向を見てハンドルを切る。
(3)じんわりレバー操作。

この手順を確実に行なえば、フル電動車の利便性と3輪による安定した走行フィール、そして軽い車体からくる手軽さを一度に堪能できた。

カワサキ noslisu e(ノスリスイー)カワサキ noslisu e(ノスリスイー)

◆自動車免許が必要なミニカー登録である点に注意

noslisu eは道路交通法では自動車扱いで、道路運送車両法上では第一種原動機付自転車扱いとなるミニカー登録モデル(ナンバープレートは水色)に属する。よって、歩道や自転車専用道の走行は禁止されていて、必ず車道を通行することが定められている。

そして、ミニカー登録し公道で運転するには普通自動車免許(AT限定可)が必要となり、原動機付自転車免許(原付免許)での走行はできない。また、公道走行時は自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)へ加入することが法令で定められている。

カワサキ noslisu e(ノスリスイー)カワサキ noslisu e(ノスリスイー)

気をつけなければならないのが電源の考え方。公式HPには次の記載がある。「車両区分上、電源が入っていない状態での走行は法令違反となります。走行する際は、必ず電源が入っていることを確認してください」という内容だ。また、noslisu eではヘルメットの装着義務はないが、安全上、筆者としてはヘルメットとグローブの装着を強く推奨する。ジャケット内蔵型でも良いので胸部プロテクターがあれば万が一の際、身体的な損傷度合いを減らせる。

◆「移動すること」自体を楽しめる新種のモビリティ

いずれにせよnoslisuシリーズは生まれたばかり。この先の発展が楽しみだ。個人的には、3モデル共通の印象として、独特のカーブ走行フィールに身体を慣らすことが必要だった。もっともここは個人差が大きいところだから、取扱店で是非とも試乗頂きたい。

また、noslisu eではブレーキオーバーライド機構があるため、後輪に駆動力を掛けたまま(アクセルオンのまま)、後輪のブレーキ操作を併用してリーン角を安定させて走る、といったバイクでは一般的なカーブ走行は不可能だ。よって、カーブの手前で速度を落とし走行ラインを決めてからゆっくりレバー操作で電動モーターの駆動力を掛けていく。その際、カーブ内側のペダルが上に(右カーブでは右足ペダルが上に)なるように準備しておくと、リーンした際もペダルや足が接地せずスマートに乗りこなせる。

SDGsにカーボンニュートラル化。これらの掛け声と共に環境対策のひとつとしてのりものの電動化は急速に進む。そうしたなか、移動自体が楽しめるnoslisuシリーズのような新種のモビリティには夢がある。ユーザーの声を反映した、さらに楽しいのりものへの発展に期待したい。

カワサキ noslisu e(ノスリスイー)カワサキ noslisu e(ノスリスイー)

西村直人|交通コメンテーター
クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。日本イラストレーション協会(JILLA)監事。

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