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Wednesday, April 19, 2023

【解説】 米機密文書流出、ウクライナでの戦争の重要情報はあったのか - BBCニュース

ポール・アダムスBBC外交担当編集委員

A Ukrainian Grad launcher fires a missile

画像提供, Getty Images

米国防総省の機密文書の流出が明るみになってから10日ほどがたった。ウクライナでの戦争について、どんなことがわかったのか。

流出文書の大半は今年2~3月に作成されており、ウクライナでの紛争の状況についてかなり突っ込んだ洞察を含んでいる。詳細な記述にあふれ、その多くは非常に複雑だ。

しかし行間を読むと、米国防総省が紛争の成り行きを理解しようと、時に困難を伴いながら、最大限の努力をしている様子がみえてくる。

「戦場の霧」があるのは明らかだ。

例えば、双方の人的・物的損害がどれくらいなのかという重要な問題。生データから状況は浮かぶが(死傷兵はロシアが22万3000人、ウクライナは13万1000人)、国防総省はこの数字に「低い信頼性」しか置いていないことが、流出文書から分かる。

理由はいくつかある。作戦上の秘密保持、意図的な改変、「ウクライナによる情報共有についての潜在的偏見」と呼ばれるものなどだ。

つまり、ウクライナにとってアメリカは最も重要な同盟国かもしれないが、アメリカは提供される情報を信用しているとは限らないのだ。

ドンバスの戦闘をめぐっては

似たような「確信のなさ」は、東部ドンバス地方における戦況を要約した文書(2月22日付)にも表れている。

その中では、この戦闘が「2023年を通して膠着(こうちゃく)状態に陥る可能性が高い」という見方に、国防総省は「中程度の信頼性」をもっていると書かれている。

しかし、「ウクライナの作戦の持続力を正確に推定できれば」さらに大きな信頼性をもてるとも記されている。さらに、2022年後半のウクライナの反攻がロシアの士気と装備に及ぼした影響は、完全には把握できないと書かれている。

これらは、国防総省の計画立案者らの頭の中で日々渦巻いている疑問の一部でしかない。他にもまだたくさんある。

どうすればイスラエルをもっと関与させられるのか? 韓国を説得し、ためらいなくウクライナに砲弾を供給させることは可能なのか? ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が死んだらどうなるのか?

Russian President Vladimir Putin

画像提供, Getty Images

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Presentational white space

物事の不確実性が高いことを考えれば、現状への理解を深めるため、アメリカが非公然の手法を使うのは驚くことではない。

たとえそれが、支援を約束している国に対するスパイ活動であってもだ。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と側近らが、ベラルーシやロシア国内のロシアの標的を攻撃することの是非を協議している会話が傍受されていたとされるのは、そのためだ。

そして、うわさもある。

文書によれば、ゼレンスキー氏の首席補佐官を務めるアンドリー・イェルマク氏は2月17日、「ロシアの陰謀」に関する情報を得た。軍のワレリー・ゲラシモフ総司令官と、安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記が関与し、プーチン氏の「特別軍事作戦」を妨害するという内容だった。

この計画は、プーチン氏が化学療法を開始する日に合わせて実行予定だったとされた。だが結局、そうしたことは起こらなかった。

それでも、ロシアの亀裂や弱体化の情報を得たい米国防総省にとっては、この計画に関する報告書は1日ほどは、興味をそそるものだっただろう。

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軍事紛争は大規模で複雑な事象だ。軍事、政治のさまざまな要因によって常に変化する。

つまり、文書が作成されてからの数週間で、状況は微妙に変わっている可能性が高い。

多くの報道がなされているウクライナの防空システムがいい例だ。

枯渇するとみられていたが

2月後半に作成された少なくとも2点の文書では、ウクライナの防衛にとって重要な地対空ミサイルである、ソヴィエト連邦時代のSA-11とSA-10が、それぞれ3月31日と5月2日までに枯渇する見込みだと書かれている。

この二つのシステムがウクライナの中・長距離の防衛の89%を占めていると文書に記されていることを考えると、恐ろしい予測のように思える。

この予測は「現在の迎撃ミサイルの消費量」に基づいたもので、ウクライナはロシアの生活インフラに対する攻撃に、あと2〜3波しか耐えられないと結論づけている。

だが実際には、ウクライナのインフラに対するさらなる大規模攻撃は実施されていない。そのため、ウクライナは貴重な在庫を少しばかり長く保有できている。

流出文書には、スロヴァキアが3月中旬に承認したばかりのミグ29戦闘機13機が届いたことも一切書かれていない。

A Ukrainian MiG-29

画像提供, Getty Images

Presentational white space

必然的に、これらの文書のトーンはアメリカの発表より冷めていて、悲観的ですらある。

予測されているウクライナの反攻が今後数週間のうちに始まれば、ウクライナが大成功を収めるだろうといった予測はない。

その代わり、「若干の領土の獲得」が語られている。

ウクライナの「弱点」は、それが公になるずっと前から、アメリカとウクライナの共同計画に反映されていた可能性が高い。

ただ、そうした弱点がどれほど改善されたかはわからない。今回の流出文書は、最近作られたものではあるが、常に変化する状況の断面に過ぎないからだ。

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