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Wednesday, December 14, 2022

感染急拡大中?北京で陽性になって分かった「ゼロコロナ放棄の中国」で起きていること[2022/12/14 20:00] - テレビ朝日

新型コロナ検査キットに試薬を落として待つ、ラインが2つ現れた、陽性だ。
特派員として武漢封鎖を目の当たりにし、それから3年間のコロナ禍をこの中国で過ごしてきた私にも、ついにその時がやってきた。

もしかしたら市中感染がかなり拡がっているのではないか。
北京でフェーズが変わったのではないかと感じたきっかけは、一週間前。これまですぐに反映されてきた、定期的に市中で受けるPCR検査の結果が、いつまでたっても私のアプリに反映されなくなったことだ。その時、私は嫌な予感がしていた。

■結果がアプリに反映されない…検査体制の崩壊か

中国では10人分の検体をまとめてPCR検査する10人プール方式を採用し、数十万人もの住民を一気に検査することもできる大規模な検査体制で感染者を探り出し、強制的に隔離することで感染をおさえてきた。

1カ月前、ゼロコロナ政策の真っただ中だった北京では、10人プール方式で陽性が出るとその10人全員に7日間の自宅隔離を課していた。
2週間前、その政策が少し緩和され、10人全員をすぐ1人ずつ検査し、陰性ならすぐに解放されるようになった。しかし、その10人プール方式で陽性となる人が私の身近で明らかに増えてきた。

そして先週、私がPCR検査を受けても翌日までに検査結果が健康コードのアプリに反映されなくなる現象が頻発しだした。こんなことは今まで一度もなかったことだ。当初は、個人情報の入力ミスなど検査会社の処理の問題かと私は思っていた。10人プール方式で当たったとしたら、すぐに連絡が来るはずだと思っていたからだ。

しかし、現実は違った。周りの知人に聞いてみると同じように検査結果がアプリに反映されないという。どうやらすぐに反映される方が稀であることもわかってきた。
私はここで異様な違和感を覚えた。

…陽性者どころか陽性候補者もまとめて、見つけ次第すぐに隔離してきたのがゼロコロナの中国なのに、10人プール方式で陽性が出ても連絡さえしない、いやできないのではないか。陽性件数が検査体制の処理能力を超えたのかもしれない、もしくは、政策が変わって、陽性者を追いかけることをやめたのか…もしそうなら…

この違和感が確信に変わったのは、身近な知人に感染者が続出し始めたことだ。
私は3年間コロナ禍の中国で過ごしてきたが、これまで日本人の知人が感染した話はほとんど聞かなかった。しかしわずか1週間でその人数は10人を超えた。ほかに、陽性ではないが発熱などの症状が出た人も多数いた。

■不気味に広がる市中感染

ゼロコロナ政策を緩和した北京では、陰性証明がなくても自由に動き回れるようになった。そこへ10人プール方式の陽性者を特定せずに放っておく状況が加わるとどうなるのか、言わずもがな「市中感染」の拡大である。検査結果が通知されない人達は、10人プールで自分たちが陽性になっているかどうかもなかなか気が付かない。
これまでは陽性の可能性がある人たちを健康コードで動けないようにしていた北京だが、今はその制限すらない。

日本に暮らす人達は、コロナに対する報道量も多く、科学的な知識を持ったうえで、主体的に身を守りながら行動している人が、多いように感じる。

しかしゼロコロナ政策に慣れた中国の人達はどうだろうか。感染者を強制的に隔離する政策下で過ごしてきた人たちは、コロナに対する「恐怖心」のもと、政府の言う通りにやっていれば、安全が担保できると思って、政策に従ってきた人も多いのではないだろうか?また、コロナの特徴を科学的に分析し「正しく恐れる」報道に触れる機会があまりないため、ウイルスに対する正しい知識を持つ人が、日本よりは少ないように感じる。
そのような人たちが説明の無いまま、ゼロコロナ政策の急転換で、政府から「自由にしていいよ」とお墨付きを得た場合、あまり感染対策を取らずに街に出かけていき、市中感染が広がる可能性は、相当あるのではないだろうか。

12月6日以降、当局が発表する北京の感染者数は減り続けているが、この都市で実際に暮らしている私の実感とは桁が2つ以上異なる数字である。感染者は減るどころか、いまだに知人が感染したという知らせが次々と届く。

■ゼロコロナから大きく変わった管理

感染者となった私は自宅での隔離生活を強いられているが、隔離は慣れっこだ。

初めての隔離は2020年4月、封鎖が解除された武漢へ取材に行き、北京へ戻って17日間隔離された。その時は自宅のドアにセンサーが取り付けられた。

最も厳しかった隔離は2021年12月に日本から中国へ入国した時だ。日本出国前のPCRと抗原ダブル検査での陰性証明を持ち、中国入国直後の空港でもう一度PCR検査を受け、さらに21日間の隔離中に6回もの検査を受けた。

それに比べて今回の隔離は、初めて陽性になったにもかかわらず、驚くほど管理が緩くなった。地区の担当者から指示されたことは、症状が出てから6日目と7日目に自分で抗原検査を行い、陰性ならばPCR検査を行う。そこでも陰性が出れば解放、という理にかなったものだ。ドアにセンサーがつけられることもない。
そして最も驚くことは、これがすべて自己申告で成り立っているということだ。

12月8日、私に咽頭痛と咳の症状が出始めた時、すぐに抗原検査をやったが陰性だった。感染を疑いつつ自主的に自宅から出ないようにしていた。健康コードの陰性証明は更新されないままだったが、店頭での提示がいらなくなったので、行こうと思えばコンビニへ買い物に行くこともできる。
私は、発症から3日目に陽性反応が出たので自分から地区の担当者に連絡して隔離生活に入った。

自主申告しなければ隔離もされない。管理の方針が劇的に緩くなったのだ。ゼロコロナの中国では想像できなかった世界にあっという間に変わってしまった。

幸い検査キットも早めに用意していたので、私はスムースに隔離生活に入れたと思うが、逆に言うと検査キットが買えない人や対処方法を知らない人は、自分が陽性であることも確認できないまま街中を出歩き、症状が出てあわてて病院や薬局に押し掛けているのである。3年前の武漢で起きていたであろうことが、今首都北京で起き始めているのだ。
国営テレビの専門家も、毒性は弱いとはしながら、いくつかの都市で、感染者は数十万人に及ぶ可能性があると言及した。

自覚症状は3日も経つと治まってきた。一時帰国で2回接種したファイザーワクチンのおかげかもしれない。しかしいつものように自炊した料理の味が薄い気がする。寝付きのハイボールも炭酸水のよう。味覚障害も出たようだが、これも徐々に回復してきている。

私や北京で過ごす友人をはじめ、多くの人が振り回されている突然の「ゼロコロナ放棄」。180度政策を転換するのならもっと十分な準備と説明が必要だったと思わざるを得ないし、北京で今起きている実態の早急な把握と事実の公表を、今回こそは望みたい。武漢の二の舞を踏むことなく、感染によって悲しい思いをする人が二度とこの国に広がらないことを願うばかりである。

ANN 中国総局 熱田大

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