文●九島辰也 写真●トヨタ、スバル
（掲載されている内容はグー本誌 2022年7月発売号掲載の内容です）
トヨタとスバルが共同開発したSUVタイプの電気自動車であるbZ4Xとソルテラを自動車ジャーナリストの九島辰也氏がレポート。２台を同時期に乗り比べたからこそわかる違いを紹介します。
走りの味付けに2車の違いが集約されている
すでにご存じの方も多いと思うが、トヨタとスバルの第二弾となる協業が行われた。GR86とBRZに続く今回はEVとなる。スタートは2018年秋で、スバルのエンジニアがトヨタへ出向するカタチで開発が進められた。
サイズはいわゆるDセグメント。スバルでいえばフォレスター、トヨタならRAV4となる。もちろん、それでいてキャビンが広いのは言わずもがな。ギアボックスを有する内燃機関とは異なり、足もとは広い。バッテリーは床下で強固に繋ぐことで剛性を高めている。ロングホイールベースというのもEVの特徴だろう。
とはいえ、デザインはあまり新鮮さはない。前後のライトユニットに個性を出してはいるが、新しい提案は感じられない。リアガーニッシュは「踏ん張り感」を強調するそうだが、プリウスらしさは拭えない。
そんなEVを走らせた。スバル ソルテラを名古屋から郡上八幡まで、そこから金沢までをトヨタ bZ4Xで。走りは総合的によくできていた。EV特有の急加速的な発進は控えられ、アクセルに対しガソリン車のような動きを見せる。なので出だしから自然なフィーリングなのは好印象。それでいて、アクセルを強く踏めばターボのような加速で追い越しができるのはいい。しっかり安全領域を確保できる。
この辺の駆動系制御は両者同じで、トヨタ主体でつくられた。赤信号の前でアクセルを戻すとギアが落ちてエンジンブレーキがかかるように回生ブレーキが働く。このセッティングは絶妙だ。
それじゃ二者の違いはというと、乗り心地。シャシーの味付けはそれぞれ行われた。具体的にはダンパーの減衰圧をスバルは圧縮側に、トヨタは伸び側に振っている。よって、若干だが、スバルのほうがゆったりした挙動に感じられた。そこはまさに“らしい”といったところだ。共通部分はあっても2つのブランドの個性が光るのはさすが。異なる個性の共演であった。
［Profile］自動車ジャーナリスト 九島辰也
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。専門誌での編集長職などを経験しフリーランスへ。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野で執筆。
［CLOSE UP］似ているようでけっこう違うトヨタ bZ4Xとスバル ソルテラ
［トヨタ bZ4X］グリルレスのデザインで新しさを提案
グリルを廃した造形が新しさを感じさせると共にEVであることを強調する。細めのヘッドライトは二枚目風で、トヨタのラインアップのなかではカローラクロスを思い出す。そしてリアに回り込むと一気にプリウス感が強くなるのは否めない。トヨタファミリー的だ。
［スバル ソルテラ］ライトとグリルにスバルデザインのDNAを注入
樹脂パーツが目立つボディまわり。アウトバックやXVのフェンダーの延長線上にあるといえなくもない。個性的なのは前後のライトユニットでレヴォーグに採用される“コの字”をモチーフにする。ボディ同色になるもののヘキサゴングリルはそのまま活用される。
充電システムももちろん進化中！
EVにとって肝心要の充電ポートはボディ右側に普通充電用が、左側に急速充電用が用意される。現在高速道路のサービスエリアでは50kWがデフォルトだが、最近日本でも増えてきた高出力充電の150kWにも対応というのがうれしい。90kWでも40分で80％充電できるのだから、20分もさしておけば相当走ることができそうだ。自宅でもできる普通充電200Vでは約12時間でフルになる。
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