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Tuesday, January 18, 2022

クリニック放火 遺族やけが人などの長期的支援が課題|NHK 関西のニュース - nhk.or.jp

大阪のビルでクリニックが放火され巻き込まれた25人が死亡した事件では、専従の警察官らが遺族やけがをした人などの支援にあたっています。
発生直後は80人の態勢でしたが、現在は縮小しているため、長期的な支援をどのように進めていくかが課題となっています。

先月、大阪・北区曽根崎新地のビルに入るクリニックが放火された事件では、巻き込まれた25人が死亡、1人が重体になっていて、警察は事件で死亡した谷本盛雄容疑者(当時61)を殺人と放火の疑いで捜査しています。
大阪府警は被害者支援の講習を受けた専従の警察官ら、およそ80人で態勢を組み、事件発生直後から遺族やけがをした人の支援にあたりました。
被害者ごとに担当を決め、2人1組で▼見舞い金など自治体の支援制度や、刑事手続きの説明を行ったり、▼報道機関への対応などさまざまな相談に応じたりしたほか、▼心の不調を訴える人にカウンセリングを行う団体の紹介を行ったということです。
ただ、支援の期間は事件発生から1週間がめどとなっていて、現在は縮小しているということです。
大阪府警は要望があれば個別に対応するほか、被害者支援を行うNPO法人への引き継ぎなども行っていますが、長期的な支援をどのように進めていくかが課題となっています。
大阪府警は「引き続き、被害にあった方々に寄り添いながら対応していきたい」と話しています。

【途切れない遺族支援を】。
大阪・北区のビルにあるクリニックが放火され巻き込まれた25人が亡くなった事件では、容疑者が死亡し動機の解明が難しくなっています。
遺族などからの相談を受けているNPO法人は「裁判などが行われず、遺族にとって気持ちの区切りとなる場が失われてしまい、途切れない支援が必要だ」と指摘しています。
大阪・北区のビルにある心療内科のクリニックが放火され、巻き込まれた25人が亡くなり、1人が重体となっている事件では、警察が谷本盛雄容疑者(61)を殺人と放火の疑いで捜査していますが、容疑者は先月、死亡しました。
この事件の遺族の支援を行っている「大阪被害者支援アドボカシーセンター」の事務局長の木村弘子さんは、容疑者が死亡し事件がなぜ発生したかを明らかにする裁判が開かれず、刑事責任を問うこともできなくなり、遺族にとっては気持ちの区切りとなる場が失われたと指摘します。
木村さんは「遺族にとっては被告に直接質問して気持ちを意見陳述することは大きな負担で大変なことだが、前を向いて生きていこうというきっかけになることもあり、そうした場も失われた」としています。
そのうえで、捜査が終われば、事件をめぐり遺族と関わる人も少なくなり、自治体や支援団体などからの長期的な支援が必要になるといいます。
木村さんは「書類送検されて捜査が終わったら、そのあとは支えてくれる人がいない、放っておかれていると感じる人もいると思う。私たちが途切れないように支えていきたい」と話していました。
事件の発生から1か月がたち、遺族からは家族を失った悲しみや容疑者が死亡したことに対するやるせなさや怒りの声も出ていて、話を聞いてこころのケアなどにあたりたいとしています。
団体では、被害者や遺族などからの相談を電話番号、06−6774ー6365で平日の午前10時から午後4時まで受け付けています。
大阪府も、警察や被害者支援団体などと連携し、遺族の情報共有を図り必要な支援策を検討していくことにしています。
府は、この事件の関係者などからの相談の専用窓口を設け、電話番号は、06−6697−0877で、平日の午前9時30分から午後5時まで受け付けています。
また、事件の遺族は、国の犯罪被害給付制度により遺族給付金を申請することができ、給付金は、被害者の収入や年齢などに応じて支払われることになっています。

【容疑者死亡の事件は過去にも】。
事件の容疑者が死亡し、真相を解明できなくなったケースはこれまでにも起きています。
▼平成27年6月、東海道新幹線の車内で、71歳の容疑者がみずからガソリンをかぶって火をつけた事件。
巻き込まれた乗客1人が死亡、28人がけがをし、容疑者も現場で死亡しました。
容疑者は、周囲に年金の受給額が少ないことや家賃の支払いに困っていることなどをもらしていたということですが、詳しい動機を明らかにすることはできませんでした。
▼令和元年5月、川崎市多摩区の路上でスクールバスを待っていた小学生と保護者が次々と包丁で刺され、2人が死亡、18人が重軽傷を負った事件。
現場で自殺を図り死亡した51歳の容疑者は、長年引きこもり傾向にあり、親族がたびたび、自治体に相談していました。
事前に凶器を準備し、計画的に事件を起こしたとみられることがわかった一方、親族への聞き取りなどを進めましたが、動機の解明には至りませんでした。
これらの事件は、容疑者死亡のまま警察が書類送検し、捜査が終結しています。

【容疑者死亡の事件 遺族は】。
長野県に住む市川武範さん(56)は、おととし、自宅で長女の杏菜さん(当時22)と、次男の直人さん(当時16)を暴力団員に殺害されました。
暴力団員はその場で自殺し、警察が殺人などの疑いで書類送検したあと、検察は容疑者死亡で不起訴としています。
容疑者が死亡したことについて、市川さんは「怒りをぶつける相手がいないということと、真実を知る機会が得られないという2点が大きいと思う。生きていれば怒りをぶつける、あるいはなぜこんなことをしたのかと直接疑問をぶつけられるが、その相手がいないというのがまず第一に大きい。もし本人が生きていればもっとすんなりと早い段階で胸に落とすことができたかもしれないが、本人の口から聞けるのと、想像することしかできない、その差というのはやはり大きいと思う。あくまでも想像するしかできない結論という部分で苦しさはありました。事実や情報を知ることが私にとっては重要で、容疑者本人から聞けない分、立ち直りには時間がかかりました」と話しました。
そのうえで、市川さんにとっては、捜査を尽くしてもらい、事件の経緯などを詳しく知ることが大切だったと述べました。
市川さんは「被害者それぞれの性格とか環境、時期もあると思うが、私自身は事実を知らなければ乗り越えられないタイプなので、調べ上げたものとかこうだったのではないかという答えに近いものが示されるように、警察、検察、行政等も動いていただくことが被害に遭った方々の心を救う道になるのではないかと思う。私は捜査終結の報告を受けて、疑問をぶつけたことに対し、警察はすべて答えてくれたのでだんだんと気持ちの整理をつけるという段階に入れたのかもしれない」と話しました。
また、当時、必要だと感じた支援については、「やはり寄り添い、支えてくれる人の力が第一に必要だと思う。わかってくれる人がいる、その存在は大きい」と話していました。

【弁護士“できるだけ早くケアを”】。
犯罪被害者の状況に詳しく、容疑者が死亡したケースで遺族の支援にも携わってきた上谷さくら弁護士は、「裁判によって事実が明らかになることは、遺族にとってつらいことでもあるが、一つの区切りになることは間違いない。加害者が生きていれば、裁判に関わるか関わらないか、どちらの選択もできるのに、相手が死んでしまえば、選択肢すら無くなってしまい、精神的な面での回復にもより時間がかかってしまう」と話しています。
今回の事件の遺族に対してこれから必要な対応については、「遺族は事件の直後は起きたことを現実として受け止められないが、そうした時期を過ぎると、大きな悲しみと喪失感が襲ってくる。できるだけ早いタイミングで精神的なケアをすることが重要だ」と指摘しました。

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