「本を読まないより読んだ方が良い」は、よく聞く話です。語彙力が増え、集中力が身につくなどのメリットが取り上げられることが多いものの、長年にわたり読書習慣の効果は経験則で語られてきました。 「家庭の蔵書数と学力テスト正答率の関係」を見る しかし近年、教育分野でも科学的根拠を用いた調査や研究が浸透してきています。国立青少年教育振興機構が2021年3月に発表した「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」では、全国の20~60代の男女5000人を対象に、子どもの頃の読書習慣とそれが与えた影響を考察する調査を行いました。 通常、こうした調査の対象は児童・生徒であることがほとんどなので、成人に限定しているのは特筆すべき点といえます。では、子どもの頃の読書習慣・読書量によって、大人になってから多少なりとも違いが出てくるのでしょうか。調査結果は興味深いものになりました。
そもそも、学力は読書量と関係があるのか?
読書習慣の有無でよく議論されるのが、学力との関係性です。今年度の「全国学力・学習状況調査」(文部科学省)では、児童生徒向けアンケートに家庭内の蔵書数に関する質問が初登場しました。 同調査の報告書では、雑誌・新聞や教科書等を除いた蔵書数と、国語・算数(数学)の学力テストの平均正答率は明確な関係をみせています。図表1のように、蔵書数の多い家庭、つまり本が身近にある場合は正答率が高くなりました。 こうした学力テストの結果など、数値化できるスキルは「認知能力」と呼ばれています。一方、この10年、日本で注目を集めているスキルに「非認知能力」があります。非認知能力とは、自己肯定や忍耐力など、生きる上で重要な力とされています。 これまで非認知能力と読書を関連付ける大がかりな調査は国内でほとんど行われてきませんでした。しかし、冒頭に述べた国立青少年教育振興機構の調査分析では、強い関連性が示されています。
読書習慣は意識・非認知能力にも影響を与える
「子どもの頃の読書活動の効果に関する調査研究」では、小中高での読書習慣に基づき4つに分類されたグループで「意識・非認知能力」を分析しています。4つのグループは以下の通りです。 ・小中高少群:小中高を通して読書量が少ない ・上昇群:小中高で緩やかに読書量が上昇している ・低下群:小中高で読書量が低下している ・小中高多群:小中高を通して読書量が多い すると、意識・非認知能力とされる「自己理解力」「批判的思考力」「主体的行動力」のいずれにおいても、小中高多群が一番高く、小中高少群は3分野ともに最も低い結果となりました。 この調査結果だけで断言はできませんが、成人してからの意識・非認知能力の高低は子どもの頃の読書量と連動していることが示唆されています。つまり、「小中高を通じて読書を継続していると、社会人になってからもプラスに働く」というわけです。 今は、グローバル化の進展に加え、コロナ禍による経済停滞もあり、「この仕事に就いていれば大丈夫」とは言えない時代になりました。先行き不透明な中、自分自身で人生を切り拓いていくのに「自己理解力」「批判的思考力」「主体的行動力」は必須です。 こうした能力の形成には複合的な要因があると考えられますが、小学生から高校生の10年間での読書活動が成人以降の意識・非認知能力の高低に影響が及んでいる事実は、読書習慣のメリットの具体的な例になると言えるでしょう。意識・非認知能力と読書を関連付けた今回の結果は非常に意義あるもので、さらなる調査が期待されます。
からの記事と詳細 ( 「本を読まない」影響が出るのは学力だけじゃない!? 大人への調査でわかったこと(LIMO) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース )
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