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Tuesday, February 16, 2021

星野源が明かす、「創造」の背景にある創作へのスタンス「自分と他者との間に流れる川に橋をかける行為」 - リアルサウンド

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 昨年「うちで踊ろう」で一大旋風を巻き起こした星野源。2010年のソロデビューからちょうど10年という節目の年に、彼らしく時代に合った形で花を添えていた。大晦日の『NHK紅白歌合戦』で新たに2番を加えたフルバージョンの歌唱も記憶に新しい。そんな彼がこの度、新曲「創造」をリリースした。

 「創造」は、『スーパーマリオブラザーズ』の35周年テーマソングとして本人出演のテレビCMでも使用されている楽曲。ゲームの効果音や任天堂の作品を彷彿とさせるフレーズが散りばめられたことで、曲全体が楽しさで満ち溢れている。ゲームに心躍らせた幼い頃のみずみずしい感動が蘇るようだ。

スーパーマリオブラザーズ35周年 TVCM

 この曲を作るにあたって彼は「久しぶりに腰を据えて作れる作品になったので生半可なものは作りたくない」と自らに高いハードルを課したという。曲に込められたマリオへの愛、影響を受けたという任天堂の物作りの精神、そして歌詞の背景にある自身の経験などを語ってもらった。(荻原梓)

驚きや感動を与えられるパワーを持った作品に

ーー2020年は世界的にも大変な一年となりましたが、その中で昨年は4月にInstagramに投稿した動画からスタートした「うちで踊ろう」や、6月に発表した「折り合い」といった配信でのリリースが続きましたね。

星野源(以下、星野):去年は予定していた音楽活動がほとんどできなかったんです。たとえば海外公演を含めたツアーもやろうとは思っていたんですけど、コロナ禍になったことによって全て流れてしまって、ドラマの撮影も外出自粛で中止せざるを得なくなり、一年の後半までほぼ役者業に徹することになりました。そんな中で突発的に生まれたのがギターの弾き語りで録った「うちで踊ろう」と家の中で打ち込みで作った「折り合い」の2曲でした。日々ふりかかってくる難題にスピード感とアイデアを持って立ち向かうって感じだったんです。

ーー当初は制作に専念する感じではなかったと。

星野:なので、次はもっとじっくりと制作したいと思ってたんです。制作って自分を追い込んで根を詰めるところがあるので、ツアーがあると制作はセーブせざるを得なくなるんですけど、逆にライブがないっていうのはレコーディングや曲作りに集中できることでもあって。去年の年末あたりは役者業が落ち着いたタイミングでもあったので、楽曲制作に集中できる環境ができたんです。

ーーこういう状況だからこそ集中できた面もあったんですね。では今回の「創造」という曲ですが、まず最初にどんな曲にしようと考えて作りましたか?

星野:とにかく聴いてテンションが上がるような曲を作りたくて。聴いてる人に良い意味でショックを与えられるような、驚きや感動を与えられるパワーを持った作品にしたいなと思って作り始めました。それで今回は『スーパーマリオブラザーズ』が35周年ということだったので、音の方でマリオとの関連性を出しつつ、もともと僕は任天堂という会社の物作りの精神が好きだったので、歌詞には任天堂の物作りの職人たちへのリスペクトの気持ちを込めました。

ーー確かにこの曲には、マリオへの愛はもちろんですが、それ以上に任天堂という企業への思いを強く感じます。歌詞には任天堂の出発点でもある花札を思わせるフレーズもありますし、横井軍平さんによる開発哲学「枯れた技術の水平思考」も登場しますね。やはりご自身としても任天堂から影響を受けた部分は大きいですか?

星野:それはすごく大きくって。他にないですよね、勤めてる人たちがこんなにたくさんの名言を残してる企業って。偉大な創業者一人が残すとかならまだ分かるんですけど、各部署にすごい人がたくさんいて、それぞれに見つけていった何かがある。そういう方々のインタビューを読むのも好きなんですよね。自分も表現する立場の一人として「枯れた技術の水平思考」にも影響を受けたし、そうやってキャッチーな言葉にして後世に伝えていく力も参考になっています。継承していく精神っていうのかな。

ーーなんとなく任天堂の商品開発の姿勢は星野さんの音楽性にも通じるような気がします。

星野:「アイデア」(NHK連続テレビ小説『半分、青い。』主題歌)を作った時も任天堂の宮本茂さんの言葉(「アイデアというのは複数の問題を一気に解決するものである」)を意識しました。テレビで流れる部分だけを先に作った後に僕のやりたい音楽の方向性が変わったり、周りから求められる自分のイメージと自分の中にある陰の部分のギャップだったり、あの頃起きたいろいろな問題を解消したのが「アイデア」という曲でした。

ーーサウンドの面ではゲームの効果音など遊び心が詰まってますね。

星野:マリオセッションという日を作ったんです。マリオだったり任天堂関連の僕が好きなメロディを真面目にセッションする日を設けて、そのセッションの中で生まれたものを、曲作りの中で合成していきました。マリオシリーズって良いメロディ、良い曲、良いSEがほんっとにたくさんあるんですよね。でもそうやって公式で遊ばせて貰えるのも、このタイミングじゃないとできないので、思う存分全力でやらせてもらいました。でも、やりすぎても曲自体が破綻してしまうので、まだまだやれてないこともいっぱいあるんです。

ーー特に今回は序盤と終盤に登場するゲームキューブの起動音の演奏が素晴らしいと思いました。

星野:そのマリオセッションの中で一番楽しかったのがゲームキューブの起動音のアレンジでした。もともとセッションの時はジャズ的なアプローチで演奏してたんですけど。あと他にも『スーパーマリオランド』1面のBGMがめちゃくちゃ好きなので、それを演奏しました。

ーーちなみに、マリオというキャラクターについてはどんな印象をお持ちですか?

星野:やっぱり凄いと思うのは、「おじさん」ってことですよね(笑)。

ーーおじさん(笑)。

星野:それが世界的なキャラクターになるってとんでもないことですよ。もっとマニアックな存在になっててもおかしくない。

ーー配管工のおじさんが世界的に人気になるって、よくよく考えてみれば異常なことですよね。

星野:僕は小学生の頃にファミコンどんぴしゃ世代で、スーファミに移行するくらいの時期にゲームにどっぷり浸かってたんです。その中でも『スーパーマリオブラザーズ』は人生で一番遊んだと言ってもいいほど思い入れが強くて。そういう意味ではマリオってポピュラーな存在なんだけど、でも同時にアナーキーな存在でもあるっていう。それが任天堂という会社を象徴していますよね。日本だけでなく世界的にもゲーム業界トップの会社ですけど、守りに入ることを全然しない。常に破壊と構築を繰り返してるからこそ、誰も到達できない領域に行けてる気がします。あのWiiのプロモーションビデオが一番最初に出た時の感動は今でも忘れられないですね。

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