メンバーの一部が全国で相次ぐ広域強盗事件に関与したとみられている特殊詐欺グループは、フィリピンを拠点に被害総額60億円以上に及ぶ詐欺を繰り返していたとされる。特殊詐欺は金額の大きさが注目される一方、それぞれの被害者がどんな目に遭ったのか、詳細に伝えられることは決して多くはない。しかし、約3000万円をだまし取られたある女性を取材すると、失ったのは金銭だけではないという厳しい現実も浮かび上がってきた。【長沼辰哉】
始まりは電話から
「海外の宝くじで3等に当たった。金額は5億2000万円」
浜松市で暮らす80代女性の自宅にこんな電話がかかってきたのは、2014年6月5日の朝だった。電話口から聞こえる男の声はこうたたみかけてきた。「手続きのために当選金額の一部を用意してほしい」
この数日前から「ボランティア」を名乗る人物からの電話が続いていた。「生年月日から調べると、あなたは珍しい幸運の持ち主」「あなたの授かる天然石は100年に1回しか出ない不思議な石」。女性は「良いことが起きるかも」という気持ちになっていた。
女性は戦前から続く家業の問屋の役員を務めており、ちょうど設備投資の資金が必要な時期でもあった。「設備を更新すれば、親族に任せて自分は会社から身を引くことができる。お金にゆとりができれば、孫たちとも楽しく過ごせる」。淡い期待が頭をもたげた。指示に従い、郵便局で購入したレターパックに現金200万円を入れ、男が指定した東京都渋谷区の住所宛てに送った。
「ナガノ」と名乗る男が言うには、当選金を受け取る手続きのため、まずはこちらから億単位の現金を送る必要があるという。とても用意できる金額ではなかったが、「一部は私たちが肩代わりする」と提案してきた。女性は老後や孫のお祝いのための貯金を取り崩したり、知人に借金を頼み込んだりと資金の工面に奔走することになる。
被害の記録、克明に
女性が付けていた日記の14年6月の部分には当時の様子がつづられている。
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からの記事と詳細 ( 失ったのは金だけじゃない 特殊詐欺、被害に遭ってわかった現実 - 毎日新聞 )
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