「運動」の驚くべき“癒し効果”にスポットを当てた研究が、今、世界的に注目を集めている。運動すると……「ストレスから守られる」「抗うつ薬に匹敵する“うつ改善効果”が得られる」「レジリエンス因子が増え、不安に強くなる」「遺伝と同レベルの認知症リスクを解消できる」「自然界で2番目に強い“睡眠導入剤”が体内で作られる」など、その驚きの研究結果をまとめたのが“運動×神経科学”の第一人者であるジェニファー・ハイズ博士だ。彼女の研究は、ニューヨーク・タイムズ、BBC、CNN、ハフポストなど、多数の国際的メディアに取り上げられて話題を呼んでいる。その内容を一般向けにわかりやすくまとめた初の著書の邦訳版『うつは運動で消える 神経科学が解き明かした「心の不調」のリセット法』が9月7日に発売となる。今回は、本書の発売を記念して、その内容の一部を特別に公開する。
運動するとストレスから解放される
定期的に運動すると、ストレス反応が和らぎ、心理的なストレス要因にも反応しにくくなって、一見手に負えないような状況でも楽観的な気分になりやすくなります。
慢性的なストレスが恐ろしいのは、ストレスを消すスイッチが破壊されてしまうからです。すると、ストレスに抵抗するためのコルチゾール値がコントロールできないほど高くなって、心身にダメージを与えてしまうのです。
運動は、脳由来神経栄養因子(BDNF)を与えることで、脳を慢性的なストレスの悪影響から保護します。BDNFは、脳細胞の成長と機能、生存を促進する「肥料」のような働きをし、そこにはストレス反応を遮断する細胞も含まれています。運動直後の脳はBDNFで満たされ、これが強いストレスの悪影響から脳細胞を保護してくれるのです。
運動で、ストレスを消すスイッチの修復もできます。運動後は、運動にだけでなく、生活上の他のストレス要因に対してもストレスシステムがオフになります。この安らぎの時間に、希望の光が差し込んでくるのです。
(本原稿は、ジェニファー・ハイズ著、鹿田昌美訳『うつは運動で消える ~神経科学が解き明かした「心の不調」のリセット法』の内容を抜粋・編集したものです)
世界トップのキネシオロジー(運動科学)学科を擁するカナダ・マクマスター大学のニューロフィットラボのディレクターであり、運動と神経科学研究の第一人者。主に、身体運動がメンタルヘルスや認知能力にもたらす影響について研究し、受賞多数。その研究は、ニューヨーク・タイムズでの特集をはじめ、CNN、NBC、BBC、ハフポスト、CBSなど、国際的メディアの注目を集めている。初の著書の邦訳版『うつは運動で消える』が2022年9月7日に発売。
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