絵本作家のいせひでこさん(72)は、13歳まで北海道に住んでいた。
家に風呂はなかった。銭湯に行くため、祖父に手をつながれ、信号のない大通りを渡ろうとしている冬の日の情景が今もよみがえる。
「右を見て左を見て、まだだ、まだだ、と言ってね。私と妹の手をぎゅうっと握って」
握る力は、母よりも父よりも強かった。幼稚園の行き帰りも、ぎゅうっと手を握った。寄り道も許してくれないから、小さい子にはつまらなかった。
ほとんど話さない祖父 たまに口を開くと・・・
祖父は旭川の営林署を退職し、畑や大工仕事をしていた。乳母車もブランコも鶏小屋も、何もかも木で作った。中背でがっしりした体格。サスペンダーに帽子と長靴で、庭に出る姿は絵になっていた。
ほとんど話さない人だった。しかし、母から何回注意されても聞かない時や、危ないことをした時は、叱られた。
「何時まで起きているんだ、このたからもの!」
「なんでそんなことしている、このたからもの!」
必ず最後に「宝物」とつけた。
「怒っているのに宝物?と不…
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