目次閉じる開く
試遊でわかった→ケンタ君がノートに描いて作った予測不能なアドベンチャー
“ノートに小学生が手描きで自作したRPG”というコンセプトで、インディーゲームの数々の賞を総なめにしてきた注目の大作『RPGタイム!』。
これまでも数々のイベントでもお披露目されてきましたが、東京ゲームショウ2021にてついに完成形の作品が出展され、リリースに向けてそのヴェールを脱ぐことになりました。まずはプレイリポートからお届けします。リポートの後は、本作のキモについて開発者のおふたりに伺ったインタビューもどうぞ。
さて、ではさっそくプレイしてみてわかった結論からお話しますと、『RPGタイム!』はRPGテイストであらゆる遊びが詰め込まれたジャンル無用のアドベンチャーゲームなのだということでした!
とりあえず、現在Youtubeにてトレーラーが公開中ですので、まだ未視聴の方は、まずはこちらからご覧になってみてください。
『RPGタイム!~ライトの伝説~』新トレーラー
舞台は小学校の放課後の教室。机の上に置かれた分厚いノート(200ページ級)に鉛筆で細かく描き込まれた勇者と姫と魔王の冒険譚を、ゲームマスターで作者のケンタ君の導きとともにページ内の(ほんとうに)多彩な仕掛けを体験・攻略しながら、ハッピーエンドを目指していきます。
しかし、その遊びはバトルやダンジョン探索といったRPG的なものにとどまりません。
何しろ、ページによってはシューティングになったり、まさかのホラーゲームや謎解きアドベンチャー。果ては大迷路にボクシングやら何やらまで、ジャンルを問わない小学生の作者ケンタ君の夢が詰め込まれたかの如くに、“何が起きるかわからない”遊びとおもてなしが満載!
大注目なノートの外側に広がる3D演出の妙
試遊でわかったポイントとして、どうしてももうひとつお伝えしたいことが。
本作は、手描きのノートにばかり目が行ってしまうのですが、どっこいノートだけが『RPGタイム!』の目玉じゃなかった。ノートの外側……机の上から教室内までもが、とんでもない重要要素だったのです。
3Dで表現される教室こそが、“ケンタくんと教室で手作りゲームをいっしょ遊んでいる”感覚を強烈にプレイヤーに感じさせる“舞台装置”になっていた。
あなたもゲームを始めてしばらくしたら、ケンタ君がそばにいて一緒に遊んでいる感覚に陥っているはず。
例えば、机の上に細々と置かれた道具類の数々。これは、“小学生のケンタ君が身近な道具で再現したゲームのユーザーインターフェース”なのですが、よくみてみると、LIFEはメジャーの長さで表現されており、EXPは付箋をぺたぺたと貼って管理されていきます。
BGMに至っては、ミュージックプレイヤーのプレイリストに、ケンタ君が好きな架空のゲーム群から“ライトの伝説”のイメージに会った楽曲をセレクトして場面に合わせて流しているという体。
操作についても、ページ毎に展開するさまざまな幅広い遊びに合わせて“専用の手作りボタン”が準備されていて、操作方法が切り替わっていく点も楽しいものでした。
例えば、移動の際はおなじみの上下左右への移動ボタンを用意してくれるのですが、地面を掘って宝を探す場面に出くわすと、ケンタ君が“スコップボタン”を用意してくれる……といった形です。
試遊版の流れはこんな感じでした
ここからは、ちょっと長いですがTGS2021に出展された試遊版がどんな内容だったのか、順を追ってご説明していきます。
タイトル画面には、中世ファンタジー風のお城の風景がマジックでガッツリ描かれた小学校の机。
これだけですでに楽しくて仕方がないのですけど、お城の中央に聳える鐘楼の鐘にカーソルを合わせてRスティックを押し込んで触れることで、いよいよゲームの幕が上がります。まさにRPGの時間=タイム!の幕開けを告げる鐘の音といった感じ!
ゲームがすぐに始まるかと思いきや、ケンタ君から「放課後になったから何して遊ぶ?」との問いかけが。
机の上にはサッカーボールとバスケットボールと、もう一つ手作りのノートが一冊が並べられます。どうやら選べる模様。
ここはあえての“サッカー”を選んでみたところ、小気味よいノリツッコミとともに、ケンタ君お手製のノートRPG“ライトの伝説”を遊ぶことに! そりゃそうだよね。
スタートボタンとともにノートの表紙がめくられると、1ページ目には、平和なお城と城下町が描かれていました。
しかし、ケンタ君のナレーションが「暗雲が立ち込めて空が黒雲に覆われる」的な内容になると同時に、鉛筆でケンタ君が空と雲を真っ黒に塗りつぶしていく!
ア、アナログ・・・!!
あっという間にドラゴンのような姿の魔王が現れたかと思うと、城下町はスケルトン的な魔物が溢れかえり、大混乱に。
しかし、そこに現れた勇者ライト。懐かしい絵本『ウォーリーを探せ』のような感じで魔物に襲われる城下町に降り立ちます。
城下町に描かれた小さな勇者は、ケンタ君がくれた特別な“方向ボタン”を使うことで、コントローラーで自在に操作可能になりました。
鉛筆で描かれた街中に散らばる小さなスケルトンっぽい魔物に体当たりすると、どんどん弾き飛ばせたりと、引きの画の中の小さな勇者を動かすのがもういきなり楽しい。
そうこうしながらお城に到達したと思ったら、今度はコミック風にコマ割りされたイベントシーンに!?
コマはひとつずつ“付箋”で隠してあり、ボタンを押して剥がしていくと物語が展開していくというアイデアに感心している暇もなく、今度は魔王にコマンド入力で必殺技を叩き込まねばならない展開に。
ケンタ君、今度は必殺技のための特別なボタンを出してきてくれました。
方向ボタンを←↙︎↓↘︎→と入力してから必殺技ボタンを押すと、コミック上にどえらい必殺技が炸裂!
必殺技が炸裂! ……したと思ったら、なんと剣が折れてしまったではないですか!
ケンタ君、テキパキと机の左上にドットビーズでていねいに作られた装備品欄の剣も、ちゃんとぽっきり折って状況を反映します。
万策尽きた勇者ライト。姫はさらわれて、魔王にしっぽではたかれて城から吹っ飛ばされてしまいました。
場面もノートから飛び出して、勇者は教室の別の机に置かれた手作りの“ワールドマップ”に落下!
落ちてきた場所こそが、本作の最初のステージにして第1章となる“はじまりの洞窟”。ここから、姫の救出と魔王の討伐を目指していくことになるのです。
はじまりの洞窟の最初のエリアは、見開きに描かれた2層構造。落下して地面に突き刺さった勇者を方向ボタンを連打して復帰させたら、洞窟内を探検です。
くり返しになるのですが、やっぱり鉛筆で描かれた洞窟の絵の中の勇者を自在に動かすのが、不思議な体験でこれだけでも楽しい。
でもケンタ君、普通に進めたらつまらないと、なんと消しゴムで道を消してしまったり、梯子をかけてくれたりと気まぐれでルートの内容も変更してしまったりするんです。
ぱっと見はステージの全要が見えているものの、進んでみないと何が起こるかわからない感覚が期待感を否応なく高めてくれます。
ちなみに、この辺りからだんだんケンタ君が創造神に見えてくるようになりました。
途中には“落石のトラップ”を越えなくてはならないエリアもあったりしたのですが、ここはちょっと頭を捻らないと突破できない難所。
その解決法は非常にユニークだったのですが、ここではあえて書かないでおきます。リリースしたらぜひ遊んでみてほしいので!
その後は、洞窟内でRPGの醍醐味である、バトルも展開! 最初の相手は“ファイヤーマン”なる火の玉の魔物。どうやって戦うのかと思っていたら、ケンタ君が今度は鉛筆に剣の柄を模した手作りのキャップを被せて渡してくれます。
そうか、つまりこの鉛筆で華麗なる剣戟の太刀筋を描いて斬りつけるなんて、ノートRPGならでは! これ絶対楽しいやつだ。
しかし相手は炎の魔物。剣がいまひとつ効き目が薄い!? どうしたらいいのかとけっこう悩んでしまいました。
ですが、その解決法もノートの中にしっかりありました。しかし、その方法もここでは伏せておきますね。
ポイントクリックアドベンチャー的な発想で、状況を観察して、謎を解木、魔物の弱点を突く! そういうとっても気持ちいいバトルが展開するので、ぜひここもリリースしたら自力で突破してニヤリ……としていただきたいところでしたから!
……と、ファイヤーマンを倒していざ洞窟の奥へ、と思ったら、TGS試遊版はここまででおしまい。ああ、もっと遊びたい!
ブースにいらっしゃったデスクワークスの藤井トムさんと南場ナムさんに聞いてみたところ、ファイヤーマンはめっちゃザコ敵で、この先にはボスもいたりなんでもドット絵を鉛筆画で再現した(!?)ゲームinゲームinゲーム的な遊びがあったりと想像もつかない展開になるのだそうです。
ボクシングのおもちゃを使ったり、なんと鉛筆画で描かれたドット絵のとある世界を冒険するという驚愕の展開も、こっそり見せていただいたのですが……とにかく随所にこれまでお話ししてきたような“ケンタ君のていねいな仕掛け作り”が散りばめられていて驚きの連続でした。
細部まで描き込まれたネタの数々は、どれもこれも気づくと笑えるといったいい感じにプレイヤーに寄り添うものばかり。
今冬の配信が待ちきれなくなってしまう内容だったことも申し添えておきます。嗚呼、早く続きを遊びたいです。
デスクワークス藤井氏&南場氏へのインタビュー
ここからは、構想15年、9年越しの開発期間を経て、いよいよリリースに向けた一歩を踏み出した『RPGタイム!』の開発者インタビューをお届けします。万感の思いがあるというTGSへの出展や、アニプレックスをパブリッシャーに迎えた経緯、そして現在の開発状況までを開発会社デスクワークスの藤井トムさんと、南場ナムさんのおふたりに伺いました。
藤井トム(ふじい とむ)
クローバースタジオのインターンとして『大神』の開発に関わったのち、いくつものオリジナルRPGの企画を経てプレイステーション3『rain』のリードプランナーを担当。盟友、南場ナム氏とともにスタジオDESKWORKSを結成し、本作の企画を中心に担当。(文中は藤井)
南場ナム(なんば なむ)
藤井トム氏とともにスタジオDESKWORKSを結成し、以降『RPGタイム! 〜ライトの伝説〜』の開発に携わる。印象深い鉛筆手描きのビジュアル制作から、鉛筆画のアニメーション、3D周りの演出の制作を中心に担当。(文中は南場)
15年前の原点〜TGSへの出展への思い
──今回、東京ゲームショウ2021でのプレイアブル出展が、本作のリリースに向けた幕開けになりましたが、おふたりにとってTGSには特別な思い入れがあるそうですね。
藤井 はい、まさにその通りなんです。イベントへ出展するべくブラッシュアップを重ねて作品がレベルアップしてきたのですが、やはりTGSへの出展には、特別な想いがあって。前回のイベント出展からかなり時期が開いてしまったのですが、納得いく形までレベルアップを遂げた『RPGタイム!』を今回のTGSの会場へ持ってこられたことは、本当によかったなと思っております。
──2006年のTGSでアマチュアゲーム部門の大賞を受賞されたのが、そもそも本作の開発のきっかけなんですよね。
藤井 はい。それ以来、会場の空気には特別なものを感じていて。ほぼ毎年というくらいに、TGSには一般のお客さんの立場としても参加してきましたから。
──そのときから、もう15年になると。
藤井 改めて振り返ると、長いなあ(笑)。ちょっと私的な話になっちゃうのですけれど、僕らの大きな後押しをしてくださった担任の先生がいらっしゃるのですが、今年で定年退職されるそうなんです。その先生は『RPGタイム!』のことを、当時教室で試行錯誤して作ろうとがんばっていたころから気にかけてくださっていました。
──恩師が見守ってくださっていたんですね。
藤井 ありがたいことですよ。でも、開発が長引く中で「まだ出ないの? いつ出るの? 来年って言ったじゃないか!」とかおっしゃられるくらいに10年越しでお待たせしすぎていまして(笑)。
──そんなようやくリリースが見えてきたタイミングで、定年を迎えられることに。
藤井 そうなんです(笑)。先生の退職に間に合わせなくてはという思いを抱えつつ、開発状況とのチキンレース的な感覚があったのですが、なんとか退職前に間に合いそうで、ホッとしてます。
──よかったです(笑)。TGSは本作にとっては、なんだか不思議な節目のようですね。
藤井 本当にそうですよね。なのでこれからもTGSに出展し続けられるように、魅力をお伝え出来ればと思っています!
南場 でも、溌溂としていた先生だったのに、もう15年も経つと定年退職になるのかって、時の流れを感じてしまって。
藤井 うん。TGSは、やはり僕らに取っては、いろいろと“ひとしお”だなと(笑)。
現在の開発状況〜ローカライズへ
──それにしても、2020年に配信延期を決定されてから1年、ついにリリースに向けて幕が上がりましたね。
藤井 はい。いまは、いわゆるデバックの段階に進んできています。
──もう本当に完成に近いところまで? これまで出展のたびに、ずっと細かく手直しをされているとお話を伺ってきたので、今度こそはいよいよなのかと感じてしまいます。
藤井 ようやくもう、いわゆるFix(フィックス)ていう言葉があちこちで聞こえてきたというような状態です(笑)。最近Twitterで“ゲーム開発は、最後の1割を仕上げるのに、それまでの9割と同じ時間がかかる“みたいな投稿を目にしたんですが、最初にその投稿を見かけたときは「そりゃさすがに言いすぎだろ!」みたいに思っていたところ……本当にそうで頭を垂れました。
南場 ほぼ、出来てるとは、ずっと言ってきたんですけれど。
藤井 その「ほぼ」がとれるまでにものすごく時間がかかった(笑)。あとはまあ、またちょっとしたおまけ要素をスキがあれば入れ込もうとしたりだとかは……してしまっています(笑)。でも、大きな作業としては、海外でも楽しみにしてくれている方がいらっしゃるので、海外版用に素材を準備しているところです。
──そうか、手描き部分はデジタルに置き換えられないですよね。ということは、イチから素材を準備しなくてはいけないと。これって、ローカライズの作業量が……。
藤井 想定よりもちょっと膨大にはなりつつありますね(笑)。ゲームの企画は自分が担当していて、ビジュアルは南場がメインで描いてくれているんですが。えらい物量になっていて。
南場 描きまくってます(笑)。
アニプレックスがパブリッシャーになった訳
──マイクロソフトさんとのタッグによるXboxプラットフォームとP C(Windows)での発売という点も驚かされたのですが、今回新たにパブリッシャーとしてアニプレックスさんともタッグを組まれるなんてさらなる驚きでした。
藤井 やっぱり『RPGタイム!』は幸運なことにいろんなパブリッシャーさんからお声がけいただいていました。なので、2018年くらいからずっとどことご一緒させていただくべきか、かなり悩んで。「返答はもう少しまってください」と、各パブリッシャーさんにお願いしていたのですが、2019年か2020年頃に、いちどそのすべてのお声がけをお断りしまして……。
──え!
藤井 ええ。もう、「自分たちでパブリッシュするんだ」と、腹を決めた時期がありました。ね?
南場 うん。
藤井 まあ、その意気込みで準備を進めていたんですけど、先ほどお話したように、“ほぼ完成”を“完成”にするというところが、想像以上にものすごく時間がかかってしまって。
南場 これをやりながらパブリッシングするなんて、とてもじゃないけど出来ない! って(笑)。
藤井 ふたりだけで開発しながら、販売戦略や宣伝活動までするなんて、無理だなと。でも、せっかくお声がけいただけていた方々には、一度お断りしてしまって離れてしまっていたタイミングでパブリッシャーの必要性にふたりして気づいたものですから、「ど~しようかなぁ」と困ってしまっていたんです。
──そこにアニプレックスさんからお声がけが?
藤井 本当にたまたまと言いますか、最高のタイミングと条件で アニプレックスさんから「あのもし良かったらパブリッシングの方お手伝いしましょうか」とにお声がけいただいて。もう本当に天の助けのようでした。自分たちでパブリッシングするのもインディーのおもしろさのひとつでもあるのかな~と思っていたのですが、いざアニプレックスさんにパブリッシャーをお願いしてみると、いろいろと楽になって制作に集中出来るようになったので……もっと早くお願いしておけばよかったなと(笑)。
南場 でも、ギリギリのタイミングで決まってよかったと思っています。おかげで世界中に届けることも夢じゃなくなりましたから。
鉛筆描きを超えてさらに深まった世界観のこと
──鉛筆で描かれているというコンセプトだからこそ、おふたりだけでの開発は相当たいへんなのだと思うのですが、やはり手描きは目が離せない魅力です。
藤井 ありがとうございます。そうなんですよね……最初は木の鉛筆で描いていたのですが、それだと流石に作業スピード自体が開発に追いつかない感じになってきたので、途中からデジタルのペンに切り替えましたね。ただ、そのデジタルのペンも、ペン先がすり減ってしまって (笑)。
──結局ペン先を何度も交換されて?(笑)
藤井 はい。結構たくさん買ったよね?
南場 もう何本も。減りにくいペン先も試したけれど、描き心地がちょっと違うから。
藤井 やっぱり鉛筆に近いものはものすごい勢いで擦り減っちゃうんです。デジタルにしてる意味がもうないですよね(笑)
──なかなか開発者インタビューで「ペン先を何度も交換した」とか聞かないです(笑)。
藤井 あはは! でも、ペン先とか鉛筆はぽいぽい捨ててしまっていましたけど、取っておけばよかったなあ(笑)。
ノートの外、ケンタ君のいる教室へと物語は広がる!?
──ところで、大きな画面で遊んだら、ノートのサイズも実寸に近くなりませんか?
藤井 あ! 実はですね。もともと結構解像度高めに作っていたので、Xbox Series X|Sのパワーも生かして大きな画面で遊んでいただく、ていうのもおもしろいんじゃないかなと思いながら調整してきました。そんな時に、まさにちょうど画面内の机の大きさが小学校の机と同じくらいのリアルな大きさになるよね、とか話していたんです(笑)。
南場 ちょうど何インチだったか計算したこともあったっけ(笑)。
藤井 うん。でもやっぱり大きめのモニターで遊ぶと、全画面で机の大きさがかなり実寸に近くなるはずですよ。
──リリースしたら試してみたいです。没入感が増して、子ども時代に戻れるような気がしますから(笑)。
藤井 ははは。プレイ中は、ノートが画面いっぱいに映るようになっているので、南場さんが細かく描き込んでいる鉛筆画も細部まで見てもらえます。あとは、コントローラの最適化がかなり上手くコントローラ気持ちよく遊べるようになりました。
──それはなんてうれしい……発表以来、『RPGタイム!』には往年のRPG作品へのリスペクトが込められているとずっと感じてきただけに、やはりコントローラで遊べるのも楽しみです。
──そういえば、ゲーム内容については、2018年の時点の取材では「あとは磨き上げていく」みたいなお話でしたが……。
藤井 大筋としては変わってないといいつつ……オープニングも変わりましたし、なんならエンディングも変えちゃったよね?
──ストーリー自体が別人みたいに変わってるじゃないですか。
一同 (爆笑)
藤井 制作過程では、物語も描いていくうちに変わっていったんです。「この家ってなんの家なんだっけ?」とよくわからないまま作っていたものが、「あ、この人の家だったんだ」と物語の展開上、僕らも後から分かってくる、というようなことがあって。
藤井 「あー。じゃあそれにしよう」と都度絵を描き足したりだとかね(笑)。あとは、当時からありがたいことに“手描き”というところにちゃんと注目もいただけていて、僕らも力を入れてきたんですけど、2018年以降は、3Dの作業スキルが上がって3D表現が気軽に出来るようになったというところで“ノート外での遊び”も充実してきまして。
──ノートの外の遊びですか。
藤井 割と長く遊んでいると、どうしてもノートの中だけだと、ちょっと退屈になってしまうのかなという危惧もあったのですが、その時にノートの外に意識を向けるとカラフルな世界が広がっている。カラフルな景色を見て、白黒のノートを見るというテンポがいい感じだなと。
──その入れ子的な構造も魅力的ですね。
藤井 “ライト伝説”の世界がノート外に飛び出して遊べるようになることで、ケンタ君のことを、また一歩身近に感じられて、直接遊んでいるような感覚になるといいますか。これまではノートの中にいる魔王と戦ったりという構図だけだったのですが、そこにケンタ君と遊んでいる不思議な感じも出てきて。なので、プレイヤーの心持としては、いまの年齢のままでケンタ君と遊ぶのか、それともどもに戻った体で同年代気分で遊ぶのかによって、ちょっとプレイの別れどころではあるかな……とは思いますね。子どもに戻りたい方は、大きいモニターで遊んでいただく感じで(笑)。
──迷路にシューティング、ホラーまでジャンルを問わない遊びを詰め込まれましたが、お気に入りはありますか?
藤井 幸いなことにけっこうたくさんあるんですけど(笑)。例えば迷路も開発の初期から取り組んできたページでした。最初は迷路を進んでゴールまで行くだけのものでした。しかし、最終的にはそこにいろいろとお話が加わって、途中にハプニングも重なったりだとか、新しいイベントが起きたり、ミニゲームが入ったりだとか、「ゲームじゃないと出来ない遊び」がキモだと思っているので、パワーアップした迷路感とゲームならではの“段階を経て気づけば困難を突破出来ているという達成感”を味わってほしいです。あとは、〇×ゲームが気に入っているかも。
──〇×ゲームって、格子に数字描いていく遊びですよね?
藤井 はい、9マスの。
──懐かしい……あの遊びを、大人になって真顔で遊ぶことになるなんて(笑)。
藤井 そうですか? 僕らけっこう普段から遊んじゃってるんで(笑)。でも、これもまた素直に〇×ゲームが遊べるだけではなく、ケンタ君ならではのギミックなどが入ってきますので、ぜひその辺りも体験してほしいです。あとは、学校教育で学んだ内容がぬるっと入っているところ? 理科の授業とかで覚えた知識を応用した謎解きとかかな(笑)。
南場 小学校の勉強系は、確かに割と入っているよね(笑)。僕は、演出的に鉛筆絵が動くというのはなかなか見られないかな、と思うのでアニメーションが多めのステージがお気に入りにはなっちゃいますね。でも、いまはそれ以外にも3D的な空間の広がりかたを遊びに取り入れたので、そこが気に入っています。脱出ゲームがあるんですけど、鉛筆絵と3Dのものが上手く合わさって、ちょっとおもしろい表現になったのではないかなあと思います。そのあたりの演出の中でも今回は、やっぱり魔王戦は『RPGタイム!』ならではのおもしろさの最高潮かなって。
──ラスボスって、それは今から気になってしまいますよ。
藤井 まだ発売もしていないのに、もうラスボスの話になりそうなのでここまでにしときましょう(笑)。
ケンタ君ならきっとこうする
──ラスボスの話ではなく、最後についに発売が見えてきたいまのお気持ちをお聞かせいただけますか?
藤井 そうですね(笑)。2006年学生の頃に、まあベースとなるようなものを作って、いつかプロとして世に出したいなという思いで2012年くらいから作り始めました。それが、当時思い描いていたもの以上のものが出来たので、いまは、なんだか贅沢な気持ちという訳ではないんですけど、感慨深いものがあるというか……。
南場 あらためてあの頃をいま振り返ると……いいもんできたね、みたいな。
藤井 うん。
南場 たぶんその節目に感じたのが、3Dでノートの外が出来た時だったかも。ノートに手描きのRPGというところから始まったものが、そのうちケンタ君の人格が出来てきてからは「彼ならきっとこうするかな」とかって考えるようになっていったことで、アイデアがどんどん出てくるようになったというか……。
藤井 そうだよね、開発を重ねてきた中で、ノートの外側にケンタ君の存在を強く感じられるようになったことが、ゲームを進化させてくれたと思います。なので、まだまだ作りたいアイデアは尽きないので、もしも“この先”があるんだったら、ちょっとドキドキするなって(笑)。まあいまはまだ、そこまで考えてる段階ではないんですけど……ノートと鉛筆で出来ることってまだまだあるぞ、って。なので、リリースしたら、ぜひケンタ君と一緒に、彼の作ったRPGを遊ぶ時間を楽しみにしていただけたらと思います。
からの記事と詳細 ( 『RPGタイム!〜ライトの伝説〜』構想15年・制作9年 鉛筆で描いて作ったRPGが受賞しまくる理由が遊んでわかった試遊リポート&インタビュー【TGS2021】 - ファミ通.com )
https://ift.tt/3B1ormW
No comments:
Post a Comment