秋から冬にかけて北海道の沿岸で相次いでいた、北朝鮮製とみられる木造船の漂着・漂流の確認件数が、昨年はゼロだったことがわかった。海上保安庁が統計を取り始めた2013年以降、初めて。専門家は、新型コロナウイルスの感染拡大で北朝鮮が出漁を控えているためとみているが、日本海では中国漁船の違法操業が増えており、漁場の緊張は続いている。(金井智彦)
第1管区海上保安本部によると、13~16年、道内沿岸や近海での木造船の漂着・漂流は年に1、2件だった。しかし、深刻な食糧危機の改善を目指す北朝鮮が、国家ぐるみで日本海への出漁を奨励する中、遭難した無人の木造船が増えていった。
17年11月には、松前町沖の松前小島に有人の木造船が漂着。船長らが島内の避難小屋から物品を盗むなどの事件が起きた。18年には無人船の漂着が71件と急増し、自治体や海保は対応に追われた。19年も14件あり、同年は日本海の好漁場・
しかし、北朝鮮製とみられる木造船は昨年、突如として日本海から姿を消した。大和堆でイカ釣り漁船を操業している函館市の漁業会社「天海」の西谷憲夫社長(63)は「2、3年前は海を埋め尽くすかのように数千隻が操業していたが、昨年は全く姿を見せなかった」と語る。
全国的にも漂着・漂流の確認件数は激減している。まれに沖合で発見される無人の木造船は、数年前から漂流しているとみられている。
北朝鮮情勢に詳しい島根県立大の福原裕二教授(朝鮮半島地域研究)は「北朝鮮は昨夏から、コロナ禍で出漁を禁止している」と状況を明かす。北朝鮮漁船は日本海で取ったイカやカニを自国に持ち帰るだけでなく、海上で中国やロシアなどの外国船に売り、外貨を稼ぐケースもあった。
「コロナ感染者ゼロ」を主張する北朝鮮は、コロナ対策を厳格化する中、外国人と接触する可能性のある日本海への出漁を禁止しているという。
ただ、木造船に代わって大和堆に押し寄せているのが、北朝鮮から日本海の漁業権を買っているとされる中国の漁船だ。
西谷社長は「中国船はほとんどが中型以上の大きい船。木造船よりもはるかに大量の漁業資源を取っていく」と頭を抱える。
海上保安庁や水産庁が、ときには放水などをしながら警告しているが、中国船の勢いが衰える気配はない。漁業関係者は、北海道近海の漁業資源にも影響が出かねないとして危惧している。大和堆や北海道近海で取れるスルメイカは、日本の南西沖から日本海を北上して来るからだ。
北海道いか釣漁業協会の千葉伸一専務理事(63)は「外国船の乱獲が続けば、日本海の資源は枯渇してしまう。大和堆は日本人が大切に開拓してきた漁場なのだから、国は強気で取り締まり、漁業資源を守ってほしい」と訴えている。
からの記事と詳細 ( 【独自】突然姿を消した北の漂着船、代わりに増えたのは中国船…日本海漁場の緊張続く - 読売新聞 )
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