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Monday, February 8, 2021

リモート営業では買い手と売り手にギャップも HubSpotが日本の営業の現状を調査 - ASCII.jp

 クラウド型CRMプラットフォーム「HubSpot CRM」を提供するHubSpot Japanは、営業組織を対象にした「日本の営業に関する意識・実態調査2021」を実施。その結果、コロナ禍において広がるリモート営業では、「買い手」と「売り手」の意識にギャップが生まれ始めていること、日本の法人営業担当者は、働く時間の20.2%を「ムダ」であると認識しており、年間では約6650億円の経済損失につながっていることなどがわかった。

 「ニューノーマルの環境において、営業活動を行なうにあたり、一体感のある組織づくりや、業務インフラの整備がボトルネックになっていることがわかった」(HubSpot Japan シニアマーケティングディレクター兼共同事業責任者の伊佐裕也氏)と総括した。

HubSpot Japan シニアマーケティングディレクター兼共同事業責任者の伊佐裕也氏、セールスディレクター兼共同事業責任者の伊田聡輔氏

働く時間の2割がムダ? 社内会議や情報共有、顧客管理に課題

 同調査は、日本の営業組織の状況を定点観測するとともに、日本企業の売上げを支える営業組織の現状と課題を明らかにすることを目的に実施。今回が2回目となる。「働く人の10人に1人が営業職であり、その実態を浮き彫りにすることが大切であると考えた。今回の調査では、2020年の1年間に起きた営業にまつわる変化を明らかにし、営業組織が取るべき施策を考察することを狙った」(HubSpot Japan シニアマーケティングディレクター兼共同事業責任者の伊佐裕也氏)としている。

 従業員数51~5000人の企業を対象に、「売り手」である企業の経営者や役員515人、法人営業組織の責任者515人、法人営業担当者515人の合計1545人のほか、商品やサービスの「買い⼿」となる経営者、役員、会社員309人を対象に、オンラインによるアンケート方式で有効回答を得ている。マクロミルが委託調査を行なった。

 まず、営業担当者に「働く時間のうち、ムダだと感じる時間の割合」を質問したところ、加重平均で20.2%を占め、ムダと感じる業務内容としては、「社内会議」が50.3%(複数回答)でトップとなり、2位には「社内報告業務」の39.3%が入り、社内の情報共有に関するものが多いことがわかった。「会議のための会議」、「似たような書類の複数入力」といったムダを指摘する声も挙がっていた。

 また、顧客の属性や自社とのやりとりなどを記録する「顧客管理」の方法は、3社に1社となる35.5%が「明確ではない、わからない」だった。伊佐氏は、「『やみくも営業』が行なわれている状態がわかった。非効率な営業情報の管理と報告に時間を取られている可能性がある。CRMなどの情報管理の仕組みを導入し、顧客情報と営業活動情報を一元管理したり、レポート作成の自動化で情報共有を効率化したりする必要がある」と提言した。

 さらに、ムダな時間をもとにした経済損失も算出。国税庁の令和元年分民間給与実態統計調査をもとに、給与所得者の時給を2163円とし、法人営業職就労人口を62万人とした場合、約6650億円の損失があるとした。

ムダな時間の経済損失

 残業時間は、2019年12月時点の調査では、加重平均で1日あたり2.01時間だったものが、今回の調査では1.76時間となり、1日あたり約15分減少。ただ、長時間労働を営業組織の課題と考えている人は、経営者では8.3%に対して、営業担当者は19.2%となっており、現場での残業時間の課題認識は、経営者の2倍以上になっていることもわかった。

営業現場でも進むテレワーク リモート営業では失敗も

 今回の調査は、リモート営業を導入する企業の増加など、新型コロナウイルス感染拡大によって変化した営業の実態を明らかにすることにもつながっている。

 テレワークに関しては、法⼈営業組織において導入率54.4%と半数を超え、テレワークを導入している営業組織のうち77.0%は直近1年以内に導入しているという。「新型コロナウイルスの感染拡大により、営業組織においてテレワークが急速に普及している」と述べた。

 また、リモート営業を「直近1年以内に導入した」という回答は、45.0%と半数近くにのぼり、「1年間で営業の現場に急速な変化が起こった」としたが、リモート営業の導入率は36.4%と、テレワーク導入率より、18ポイント低い結果が出た。

テレワークとリモート営業の導入

 その一方で、リモートでの営業活動を導入した企業の気持ちの変化では、「訪問型営業が当たり前ではなくなった」が74.2%、「自分の業種はインサイドセールスができないと思っていたが意外に可能だった」が63.3%、「ワークライフバランスが良くなった」が61.7%、「自宅で営業ができることで、出張などの概念がなくなった」が58.9%、「営業効率が⾼まった」が53.7%となり、ポジティブな評価が見られていることが示された。

ポジティブな評価の多いリモート営業

 さらに、調査に寄せられたリモート営業の失敗エピソードについても紹介。「隣席の人が大声で言った冗談が相⼿にも聞こえてしまった」「他企業名の入ったフォルダをクライアントに見られてしまった」「顧客の上層部が参加していたことに気がつかなかった」、「間違えて電源を途中で落としてしまった」「役員が参加する会議で、開始時刻になっても先方が接続せず、先方の秘書も在宅勤務をしており連絡が取れず、肝を冷やした」などが挙がった。

 調査では、リモート営業において、「買い手」と「売り手」の意識にギャップが生まれていることも浮き彫りになった。

 「買い手」を対象にした調査では、2019年12⽉時点には「訪問型営業が好ましい」との回答が53.7%、「リモート営業が好ましい」とした回答は21.0%だったが、今回の調査では、「訪問型営業が好ましい」との回答が35.0%、「リモート営業が好ましい」とした回答は38.5%と逆転している。また、38.8%が、「リモート営業を提案されてもマイナスの印象は抱かない」と回答している。

 だが、「売り手」の調査では、48.0%が、訪問販売が「好ましい営業スタイル」としており、リモート営業の21.8%を大きく上回っている。また、売り手が、「訪問型営業の⽅が好ましい」とした理由には、「訪問型営業の方が、成約率が⾼いと思うから」が45.0%でもっとも高く、次いで「訪問しないと誠意が⾒せられないと思うから」が36.1%となっている。

売り手と買い手が考える営業スタイル

 しかし、調査によると、リモート営業導入企業の営業担当者の商談成約率は42.2%、非導入企業の成約率は39.1%と、営業スタイルによって成約率に大きな差がないことも明らかになっている。また、買い⼿が「誠意のある営業担当者である」と認識する理由としては、「できないことを明確に伝えててくれる」が47.9%、「短時間で内容の濃い商談をしてくれる」が41.4%などとなっており、「足を運び、対面で話してくれる」は26.6%と、10位に留まったという。

「足を運び、対面で話してくれる」は実は10位

 伊佐氏は、「買い手の意識の変化を売り手が把握できていない、あるいは買い手の変化にあわせて売り方を修正できていないという状況がある。買い手の現状にあわせた売り方の検討が必要であり、テクノロジーを活用することで顧客体験を細やかに調整する工夫が必要である」と指摘した。

向かい風から「営業活動のデジタル化を加速したいと」いう追い風へ

 HubSpot Japan セールスディレクター兼共同事業責任者の伊田聡輔氏は、HubSpotの現況について説明。「インバウンドという思想に基づいたマーケティング、営業、カスタマーサービスを支援するクラウド型CRMプラットフォームを提供する企業」とし、2020年第3四半期の売上高は2億2800万ドルで、2014年以降の平均成長率は40%に達していること、世界11カ国に拠点を展開し、120カ国で9万5000社の企業が活用していること、上場した2014年には海外売上比率は22%だったが、最新四半期では44%にまで増加していることなどを示した。

 伊田氏は、「HubSpotは、スタートアップ企業を対象に、マーケティングソフトウェアを提供する企業という印象が強かったが、事業分野の拡大によって、スケールアップのためのCRMプラットフォームに変化してきている」とし、「スケールアップとは、事業に積極的投資を行ない、投資成長率を超える非線形的な事業成長を目指している企業のことを指す。ベンチャーキャピタルなどの支援により、いままでの成長の速度から、より加速した成長を遂げる段階をスケールアップと捉えて、この段階をサポートできるのが特徴である」と述べた。

創業以来からのHubSpotの歩み

 同社のCRMプラットフォームの特徴として、「企業における顧客との関係性を一元的に、網羅的に管理できるものでなくてはいけない。マーケティング部門、営業部門、カスタマサポート部門が使っている顧客管理データベースが林立し、それぞれに少しずつ異なる情報が蓄積されているという状況は、正しいCRMプラットフォームの使い方とはいえない。HubSpot CRMは、Marketing Hub、Sales Hub、Service Hub、CRM Hub、CMS Hubによって、顧客情報の一元管理を実現できる。また、プラットフォームと定義しているように、様々なソフトウェアと連携して利用できる。現在、550以上のアプリケーションとの連携を可能にしており、日本固有のソフトウェアであるSansanやFreeeなどとも連携ができる。2015年にはUp-Marketを用意し、より連携しやすい環境を整えた」とした。

 また、日本におけるHubSpot CRMの利用が拡大していることを示し、「2021年1月時点の顧客数は、前年同月比で85%増加した。コロナ禍において、ソフトウェア分野への新規投資は控える傾向があるが、営業活動のデジタル化を加速したいという追い風があった。1回目の緊急事態宣言の時には向かい風だったが、2020年後半からは追い風になってきた。結果として、1年間を通じて堅調な成長ができた」と振り返った。

日本でも堅調な成長を達成

 さらに「日本での導入企業が面としての広がりを見せている。従業員数が200人を超える企業でも利用が増加している。インバウンドの思想や、顧客情報を一元管理することの大切さが広く浸透した結果だと考えている」とした。

 伊田氏は、「今後は、日本においても、スケールアップ段階にある企業を支援していく。従業員数が200人を超える中堅企業でも使いやすくなるように、エンタープライズ版の機能を拡充したり、販売パートナーの連携を強化したりといった取り組みのほか、日本では日本発のソフトウェアを活用しているケースが多いため、日本のソフトウェアとの連携強化を図るための専任担当者を2021年1月から配置した。また、DX化を支援する立場として、HubSpot 自らが実践し、提言していきたい」とした。

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