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近ごろはメッセージアプリ「WhatsApp」内のあちこちでこんな“悪魔との契約”が話題に上がっている。「ロックダウン中の街で、ほんの1時間だけ仲間とお気に入りのパブで1杯やれるなら、代わりに何を捧げる?」 悪魔の誘惑は日ごとに強さを増しているようだ。
新型コロナウイルス蔓延による外出制限下で、みんなヴィデオ会議アプリケーション「Zoom」を使ってどうにか「一緒に」お酒を飲んでいる。でもわたしにとって、そんなオンライン飲み会には何か根本的なものが欠けているように思えてならない。
確かに友達の顔を見ることはでき、こんな状況から抜け出すための甘っちょろい出口戦略に耳を傾け、酔っぱらいの戯言に笑い、愛とか芸術とか生活のあれこれについてぐだぐだと喋る友達に対してわかったように、うなずいてやることもできる。もちろん、そんなときはわたしも酔っぱらいだ。でも、これでは何かが違うのだ。
何かを経験するうえで、どこでその経験をするのかはとても重要だ。自分の部屋に望んでもないのにいつまでも閉じ込められていたらいずれ参ってしまう。そんなとき、外へ出かけなくても違う場所で物事を経験できる方法があったら? 壁をぶち壊すことなしにパブを丸ごと自分の部屋に持ってこられたら? 自粛要請を破らせることなく仲のいい友人たちをそこに呼べたら? 現実世界の制約を取っ払えたら? ヴァーチャル・リアリティ(VR)でパブを開いてみたらどうなるだろう。
VRゲームはホームブリューの時代へ
VRというものは、例えば電球、テレビ、電話、インターネット、洗濯機ほど世の中に拡まっているとは言えない。家で楽しめる究極の娯楽になりうるという当初の期待をよそに、いまのところはまだマニアの趣味の域を出ていない。
その理由について、ロブ・モーガンは「VRが人との社交を阻むことが大きな要因」だと言う。モーガンが設立したプレイラインズ(Playlines)は、現実空間でのパフォーマンスとデジタルメディアを組み合わせて“拡張現実(AR)”を提供する企業だ(パンチドランク[Punchdrunk]が提供するようなイマーシヴ・シアター[体験型演劇作品]とPokémon GO[ポケモンGO]を一気に楽しむようなイメージに近いかもしれない)。さらに彼は、2018年にマンハッタンのトライベッカ映画祭で上映された『The Unfinished』や、2019年にVRゲーム・オブ・ザ・イヤーを受賞した『A Fisherman’s Tale』など多数のVR作品の脚本を手がけてきた。「VRを楽しむにはかなりの時間と意識を費やさなければなりません」と彼は言う。「映画館で携帯電話の電源を切るようなもので、ただテレビを観るのとは違うのです」
ほとんどのVR開発者は日常のありふれた場所を再現することにはそれほど労力を費やしてこなかった。おそらく、たいていの人はわざわざ高度なテクノロジーを利用してそこを訪れるより、自分の足で行ってしまうからだ。少なくとも、ロックダウン前にはそれができた。
センスのかけらもない(あるいは、ありすぎるのかもしれない)わたしでも、自宅の居間をパブふうにできるものならしてみたい。しかし残念ながらうちは賃貸だし、時間のかかる割に市場価値を下げることになる大改装の許可をどうにかして大家から取りつけたとしても、そんな違法バーの開業工事をすぐに請け負ってくれるところはないだろう。
しかし、家にはパソコンが、YouTubeには無数のチュートリアル動画が、そしてわたしには暇な時間がたくさんある(初め、わたしのパソコンの性能ではCGIを処理できないという致命的な問題がすぐさま判明した。『トイ・ストーリー』1作目のスクリーンショットをグーグル上に表示させる以上の動作を要求すると自らの息の根を止めようとする、そんなパソコンの代わりに、カセット[Cassette]が気前よく貸してくれたパソコンを使うことになった)。
「今後数カ月で、ゲームをホームブリュー(自作)する人が一気に増えるでしょう」と、特にVRゲームを示してモーガンは言う。生まれつき自分でつくるのが好きなわたしにとって、この言葉は励みになる。一方、あまり励みにならないのは、ヴァーチャル空間にパブを1軒つくるのに必要な技術と時間に関する彼の冷静な見積もりだ。この規模のプロジェクトには大体4人のメンバーが必要だという──環境とデザイン担当、アニメーション担当、音響担当、それらすべてのまとめ役だ。
「この人数で3カ月かければいいものが出来上がるでしょう。粗いつくりでいいなら、2カ月かけるだけでも楽しいゲームになるはずです」とモーガンは言った。しかしわたしはひとりだし、この分野の経験はまったくない。しかも、『WIRED』UK版には数週間以内になんらかの形になったものを送ると言ってしまっていた。
プレイヤーを幻想のなかにとらえる
「ゲーム制作は地道な作業です」とヴィクター・ブロディンは、自分の表情に連動するキャラクターエフェクトを用いたヴィデオチャットで話してくれた。ブロディンは独学でVR作品を開発しているほか、エピックゲームズ(Epic Games)のコミュニティ・マネージャーでもある。わたしは今回、同社製のゲーム制作プラットフォーム「Unreal Engine 4(略称UE4)」を使うことにした。
「照明をうまく使って、居心地よく中に座っていられる箱をつくれれば、いいスタートです」とブロディンは言うが、実際にはそのほかにも考えなければならないことがたくさんある。「研究しましょう。照明技術、映画制作技術、中に入りたくなるような配色、人間の脳が興味をもちそうな素材。わたしはまずこう考えます。もし自分がインテリアデザイナーだったら、どうやってこのスペースを快適な空間にするだろうか?」
ブロディンは数多くのVR作品制作に携わってきた。そのなかのひとつであるマルチプレイヤー型オンラインVRゲーム「Perilous Orbit’s Social Club」では、プレイヤーは高級カジノでヴァーチャルの葉巻をくわえながらブラックジャックやルーレットを楽しめる。作品の制作中、チームはそのVR空間を使って会議をした。どれほどその環境が整っているかを確かめながら改善点を探るためでもあったが、リモートで話し合えるからという理由もあった。VRのおかげで、自宅を出ることなく職場に通勤できたのだ。
「ヴィデオゲームは幻想空間です。プレイヤーを幻想のなかにとらえられるなら、それはよくできたゲームです」とブロディンは語る。「ヴィデオゲームはエキサイティングです。プレイ中はある意味で神になれるんですから。何でも新しいことを試せるんです。これはなかなか得られない体験です」
理論的にはUE4を使えば、想像力の許す限りどんな世界でもつくり上げることができる。だから、建築、インテリアデザイン、人類学、社会学、カクテルのつくり方、美学、ビールの醸造法、酒場オーナーたちの体験談など、客観的に見て完璧なパブづくりに必要な知識を蓄えることに専念できる。
しかし幸い、わたしにこれらの知識は必要ない。すでに完成形のパブが存在するからだ。
英国で最高のパブ
ナンヘッドのキットー通りとゲラトリー通りの交差点に建つスケハンズは、ロンドン最高の、そしておそらくは英国最高のパブだ。なぜかって? わたしの行きつけの店だからだ。
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July 06, 2020 at 05:00AM
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パンデミック下に地元のパブをVRで再現してわかったこと - WIRED.jp
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