史上初めて撮影に成功し注目されたブラックホールを1年後、改めて撮影したところ、大きさは変わらないが、周囲でリング状に輝くガスの明るい部分の位置が移動していた。こうした観測結果を新潟大学、国立天文台、台湾中央研究院などの国際研究グループが発表した。一般相対性理論の説明通りで、またブラックホールや周辺の現象の理解を深める成果となった。
ブラックホールの初撮影は2019年に発表した。日本が主導する南米チリのアルマ望遠鏡など世界6カ所、計8基(当時)の電波望遠鏡を連携させ、仮想的に直径1万キロに匹敵する高性能の望遠鏡「イベント・ホライズン・テレスコープ(事象の地平面の望遠鏡、EHT)」を構築。国際研究グループ「EHTコラボレーション」として地球から5500万光年離れたおとめ座の楕円銀河M87の中心にある巨大ブラックホールを17年4月に撮影した。質量は太陽の65億倍。ブラックホールへと吸い込まれる周辺のガスがリング状に輝き、その中には一般相対性理論で予言された暗黒部分「ブラックホールシャドウ」があることを確認した。
同じブラックホールを翌18年4月、改めて観測した。再度観測することには、ブラックホールの存在をより確実にし、また一般相対性理論の効果で安定するリングと、周辺で変動するガス構造とを見分けられるなどの意義があるという。新たに最北端となるグリーンランド望遠鏡が参加し、画質が向上。観測の周波数帯を2つから4つに倍増させ、高精度化を図った。データの解析にも新手法を加えた。
その結果、リング状のガスの中にブラックホールシャドウがあり、一般相対性理論の予言を改めて裏付けた。ブラックホールの質量で決まるリングの大きさは、前年と同じだった。M87のブラックホールへと吸い込まれるガスの密度は小さく、ブラックホールの質量は1年程度ではほぼ変わらない。こうしたことから今回の結果は、周辺の時空構造が一般相対性理論で説明されることを、強く示しているという。
一方、リングの最も明るい場所がリング上で約30度、時計に例えると6時から5時の位置へと移動していた。また11時付近が、前回より暗くなった。このことから、周辺のガスが乱流になっている様子がうかがえる。
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