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Wednesday, August 16, 2023

コロナ感染でも注目、「味覚」は鼻と深いつながり…味の異変は ... - 読売新聞オンライン

 [New門]は、旬のニュースを記者が解き明かすコーナーです。今回のテーマは「味覚」。

 甘い、辛い、しょっぱい――人間の五感の一つで、豊かな食生活に欠かせない「味覚」。においを感じ取る鼻の嗅覚と強く関係していることがわかってきたほか、味の変化や新たな味を最新技術から作り出す試みも進んでいる。

 2020年から続く新型コロナウイルス感染症では、「味を感じない」といった味覚障害が、自覚症状の一つとして注目された。

 厚生労働省の研究班が陽性者251人を対象に調査したところ、味覚障害を訴える患者101人のうち、9割以上が「においがわからない」などと嗅覚の異常も感じていた。また、味覚障害と自覚する人たちを検査した結果、7割は味覚を感じる機能は正常だった。研究班代表を務めた三輪高喜・金沢医科大主任教授(65)は、「ウイルス感染に伴う鼻の奥の炎症などによる嗅覚の異常が、味を感じにくくさせた可能性が高い」と話す。

 苦手な飲食物を口にする際、鼻をつまむと味が弱く感じられて何とか食べられる。そんな味覚と嗅覚の強いつながりは、実験でも確認されている。

 産業技術総合研究所の小早川達・上級主任研究員(56)は、味覚、嗅覚、視覚が互いにどう関係するかを探るため、味やにおい、光を実験の参加者に与えた。その結果、味と光、においと光は別々に認識できた反面、味とにおいは感じ分けにくいことがわかった。味とにおいを一体的に感じて「風味」と認識している可能性が示されたという。

 味をおかしいと感じる原因は、嗅覚障害のほかにも、ビタミンや亜鉛の欠乏、加齢、心理的な負担などが複雑に絡み合っているとみられている。

 味の異変は、病気発症のサインとしても注目されている。認知症や手足に震えなどが出る難病「パーキンソン病」の初期症状として味の感じ方に変化が起きると考えられており、小早川さんは「メカニズムを詳しく調べて、医療分野への応用にも生かしたい」と話す。

 味は、舌にある「 味蕾みらい 」と呼ばれるつぼみのような形の小さな器官のセンサー(受容体)で感じている。ショ糖なら甘味、アミノ酸の一種として知られるグルタミン酸ならうま味のセンサーがそれぞれ反応する。酸味、塩味、苦味を加えた「基本五味」と呼ばれる5種類の情報が脳に伝わり、味を認識している。

 この仕組みに着目したキリンホールディングス(東京)は、微弱な電流で減塩食の塩味を最大1・5倍強く感じられる食器「エレキソルト」を開発し、今年末にも販売を始める。

 おわんやスプーンが口に触れると流れる電流の働きで、塩味を感じる「ナトリウムイオン」が舌のセンサー周辺に集まり、摂取した塩分が少なくても塩味を堪能できる。担当した同社ヘルスサイエンス事業部の佐藤愛さん(37)は「食生活の質を損ねずに、塩分の取り過ぎという社会の課題解決に貢献したい」と意気込む。

 宮下 芳明ほうめい ・明治大教授(47)が開発を進めているのが、味などに関する大量の情報を読み込ませて学習させた生成AI(人工知能)を活用し、新しい味を提案する装置だ。

 利用者が「綿雲の味」「深海魚の味」などと、食べたこともない味をリクエストすると、基本五味など20種類の味の最適な組み合わせを提示する。既存のレシピを超え、思いもよらない新たな味を考え出してくれる可能性もある。宮下さんは「私たちの常識にとらわれない未知の味を提示できれば、楽しい暮らしにつながるのではないか」と語る。

 最新技術によって生まれた味が、人々を魅了する日も遠くなさそうだ。

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