育児休業を経験し、子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」。今回は2021年8月に育休取得し、2023年1月から二度目の育休に入るパパに話を聞きました。
「赤ちゃんのいるライフスタイル」は夫婦一緒に作り上げる 若松家の子育て
今回のパパ
若松裕さん/35歳/FUJIOH(富士工業株式会社) 研究開発職
●ご家族
妻:麻巳子さん/34歳/サービス業 (※現在は産休中)
長男:陽向くん/4歳
長女:紬ちゃん/1歳
次男:悠生くん/0歳
(※ご家族のお名前は全て仮名です)
●若松家のパパ育休
2021年8月に第二子が誕生。母子の入院期間中と産後の母体の回復期に、上の子のお世話をするため、出産翌日から約1ヶ月の育休を取得。2023年1月に第三子誕生のタイミングで、二度目の育休を取得中。
若松さんの育休中のスケジュール(第二子誕生後)
赤ちゃんとの生活を構築するために必要な期間だった
――育休の期間を「1ヶ月」と定めたのはどうしてですか?
若松さん 産後1ヶ月は体もしんどいので、妻の回復期間にあてたいと思いました。長男のときは里帰り出産だったので育休は取得していません。今回は自宅近くでの出産を予定していたので、長男のお世話と家での生活リズムを作れるようにと希望しました。
――社内では過去にも短期で育休を取得された方はいらっしゃるとのことですが、若松さんの育休取得に関して上司や同僚の反応はいかがでしたか。
若松さん 会社には妻が安定期に入るころに育休を取得したいことを伝えました。上司は「貴重な機会だから」と応援してくれましたね。
中途半端に仕事を残してしまうことだけは避けたかったので、同僚など周囲には取得期間を早めに伝えていましたが、すんなり理解を得られて引き継ぎもスムーズでした。僕の勤めるFUJIOHには「人の暮らしや社会の明日を豊かに変える」というビジョンがあり、会社は私たち社員の「豊かさ」にも気を配ってくれています。そのような考えの一環として、会社が男性育休を前向きに捉えていたので取得しやすさにつながっていたように感じますね。
――育休に入る前に、復職後のキャリアプランについてなども話し合ったのでしょうか?
若松さん 長期的なビジョンを共有したわけではないのですが、復職後の2ヶ月間は在宅勤務にしたいことを伝えました。長男のときは妻が2ヶ月ほど里帰りしていたので、第二子の産後も2~3ヶ月は慣れるまでの期間が必要かなと思ったんです。
最初の1ヶ月はとにかく安静に過ごして回復してもらい、2ヶ月目からは少しずつ赤ちゃんがいる生活に家族みんなで慣れていくための時間がほしいなと。もしも僕が産後1ヶ月の育休期間を終えてすぐに、朝出社して夜帰宅するような生活になっていたら、赤ちゃんのいるライフスタイルの構築を妻だけにお願いすることになって、かなり大変だろうなと思いました。
24時間休みなし! 自分の甘さを思い知らされた
――第二子が誕生して育休に突入。特に強く印象に残っていることは何ですか?
若松さん 第二子で初めて、毎日娘の沐浴を担当したことですね。長男のときは妻の実家にたびたび顔を出してはいましたが、毎日沐浴をできたわけではなかったので。新生児って、とても小さくてふにゃふにゃなんですよね。最初は力加減に迷いました。僕は背が高いので、中腰になると腰が痛くなって……(笑)。
――沐浴タイムは貴重な時間ですよね。お兄ちゃんの赤ちゃん返りはありましたか?
若松さん 産後すぐから妹の存在を受け入れてくれていたように思います。でも、息子が寂しくならないように親としてちゃんと配慮できていたかという意味では、反省は多かったですね。
どうしても赤ちゃんの世話を優先してしまい、あらためて思い返すと、長男は言葉が通じるぶん、わかってくれるだろうという気持ちがどこかにありました。つい長男にお願いすることが増えてしまって。「もう少し長男の気持ちを優先しないといけないね」と妻と話すこともありました。
――奥様と育児について話し合う機会は以前よりも増えましたか?
若松さん 長男の誕生後、僕は何も変化なく普通に働いていたので、妻が抱える育児の悩みに対して、本当の意味では向き合えていなかったと思います。今回の育休で一緒に育児をして、理解が深まりました。今は些細なことでも密に相談できるようになりましたね。
麻巳子さん 第一子の産後、里帰りから自宅に戻ってからはずっと赤ちゃんと2人きりで……仕事から帰った夫に「こんなことがあって大変だった」と訴えても、なかなか伝わりませんでした。今回、育児の大変さを実感してもらえたことは本当に大きかったです。
育児休暇に入る前は、「赤ちゃんが寝ている間はやることないでしょ」「寝ている間に庭の手入れでもしようかな」とか言っていて(苦笑)。「それなら、やってみてよ!」と思っていました(笑)。
――実際に経験してみないとわからないことがたくさんありますよね(苦笑)。
麻巳子さん 娘が生まれてからは、夫も「もう本当に時間がない!」「あっという間に夜になっちゃうね」と言うようになりました。体感してもらえてよかったです。
――実感を伴っているかどうかはかなり大きな変化ですし大事なことですよね。
若松さん そうですね。息子と娘が同時にグズグズしたり、お昼寝のリズムがずれてしまったりしたときは特に大変で、もう耐えるしかありませんでした。庭の手入れなんて全然、できるわけがなかったです(苦笑)。
麻巳子さん そういえば今回は夜中の授乳のときも、一緒に対応してくれました。
若松さん オムツ替えをしたり、授乳中に上の子が起きないように横についたりしましたね。育休を取ってよかったと思うのは、育児の大変なところやいかに重労働であるかがちゃんと見えてきたところにあります。育休中の1日のスケジュールが本当にカツカツだったから、たとえば終わらない家事を翌日に持ち越すことがあるのもわかりました。
育休後に職場復帰したとき、一番痛感したことがあって。仕事では、話がしっかり通じる相手がいて、自分のペースで計画を立てられて、集中して仕事に取り組める。それが、いかに当たり前じゃないのかということ。仕事も育児ももちろんラクではないし比較できないけれど、育児にはやはりやってみないとわからない大変さ、ままならなさがあるんですよね。
第三子の育休「家事育児全部やります」
――まもなく第三子が誕生予定とのことで、再び育休を取得されるんですよね(※取材は2023年1月に実施)。
若松さん 3人目となると大人の人数を子どもが上回るので、さらに大変なのかなと考えて、職場には長女のときよりも、少し長めに取得したいと相談しました。社内の半期末が5月ということもあり、今回は出産日から5月末までの約4ヶ月間、育児休業を取得する予定です。
――頑張ってください! 麻巳子さんの体調は安定していますか?
麻巳子さん つわりはそんなにひどくありませんでしたが、だるさはありましたね。娘と年子になるので、体調がすぐれない中で小さな娘と、まだ3歳くらいだった長男の育児をするのはやっぱり大変だなと思いました。でも体がつらくなったら常に夫に伝えるようにしています。言わなければ「平気なんだな」と思われてしまいそうなので(笑)、やってほしいことは積極的に伝えました。
若松さん 言ってもらわないと気づけないこともあるので、そのほうが僕も助かっています。妊娠中の母体の大変さって、一応理解はしていても、やはり男性にとって根本的にはわからない感覚があり、表面的なことしかわかっていないかもしれないとは感じました。だから妻には、我慢して最後の最後で爆発するんじゃなく、少しでもつらいと思ったらすぐ教えてもらうようにしています。
――今回の育休はこんなふうに過ごしたいとか、前回の育休経験から活かしたいことがあれば教えてください。
若松さん まずは前回と同じになりますが、産後の1ヶ月は基本的に妻には動かないでもらうことが僕の目標ですね。僕が家事育児全てやる予定です。あとは日記を書こうかなと思っています。前回は書けなかったので、記録として残したいですね。
――それはいいですね! 二度目の育休なので、「これは自信がある」というポイントもあるのでは?
若松さん 寝かしつけですね。長男は最初、全然僕の隣で寝てくれなくて、ママがいないと泣いてしまうという感じでした。長女はそれほどでもありませんでしたが……今は2人とも僕の横で寝てくれるようになりました。寝かしつけさえできれば、いけるかなと。上の子もだいぶ大きくなってきて、娘をお昼寝で寝かしつけているときなど1人で遊んでくれるようになったので、一緒に協力してくれると思います。
(取材・文:宮本貴世、撮影:佐藤登志夫、イラスト:ぺぷり)
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