『アバター:ジェームズ・キャメロン 3Dリマスター』が、2022年9月23日(金・祝)より、2週間限定で上映されている。ここでは、初めて『アバター』を映画館で観る方はもちろん、昔に観たという方にも新たな感動がある理由を紹介しよう。
前置き:名実ともに「世界一」の映画
2009年に公開された『アバター』は、はっきり「世界一」の称号を得ている映画だ。何しろ、全世界歴代興行収入は全ての映画の中で1位。2019年に『アベンジャーズ/エンドゲーム』がその記録を一度は更新したものの、2021年の中国での再上映でふたたび世界No.1に返り咲いた。もちろん、ただ世界一売れた映画というだけではない。『アバター』はそれに見合うだけの技術が詰め込まれた内容であり、映画の歴史そのものの転換点になっている。しかも、今回は映像のリマスターが行われており、2009年版にはなかったシーンも追加されていている。
そして、2022年12月16日、実に13年の時を経て、その続編である『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』が公開となる。その「予習」のためにも、今回の『アバター:ジェームズ・キャメロン 3Dリマスター』を映画館で観てほしいのだ。その魅力をさらに記していこう。
1:「そこにいる」と思わせてくれる3D映像
今回の『アバター:ジェームズ・キャメロン 3Dリマスター』は、IMAX(レーザー)3D、ドルビーシネマ3D、4D、通常3Dという4つのフォーマットで(IMAX以外では吹き替え版も)上映されている。2009年版にはかろうじてあった「2D上映」が「今回はない」ことからも、本作が3D映像に特化した内容であることがわかるだろう。2009年版から、その3Dが革新的とされた理由は、とんでもなく「奥行き」感があり、「世界へと没入させてくれる」ことにある。その頃にアトラクション的な「前に飛び出てくる」タイプの3D映像を推した映画がいくつか公開されていたからこそ、まるでコクピットから観ているような「世界を体感できる」『アバター』の3D映像は、驚きをもって世界中から賞賛された。当時の「観るのではない、そこにいるのだ」というキャッチコピーは、まったく伊達ではない。
そして、2022年の今では3Dを推した映画自体がとても少なくなっている。直近では『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)がバトルシーンで3Dの効果が絶大だったものの、それ以外ではハリウッドの大作映画でも3Dの上映自体がなかったり、3D版があっても大した効果を感じられないケースも多々あった。そんな今だからこそ、「やっぱり『アバター』の3Dはすごかったんだ…!」と映画館で再認識してほしい。
2:シンプルかつ王道、新しい世界を知る過程を経ての感動
『アバター』のメインプロットはシンプルと言っていい。「異文化との交流と対立」と「勧善懲悪的な活劇」なのだから。先住民との、また男女の関係は『ダンス・ウィズ・ウルブズ』(1990)や『ポカホンタス』(1994)に近い。ナヴィ族はアメリカ先住民を思わせ、白人至上主義的な価値観や歴史の自己批判的な要素も込められている。さらにエコロジー的な問題提起があることなどから、『風の谷のナウシカ』(1994)を思い出す方も多いだろう。他の場所にある身体に意識が転送される様は、『マトリックス』(1999)のようでもある。2009年の当時から、物語や設定は良く言えばエンターテインメントとして王道、悪く言えば新鮮味には欠けるなどと評されていたのだ。
実はジェームズ・キャメロン監督自身、当時のパンフレットで「見慣れない環境で、見慣れたタイプのアドベンチャーを作り出したい」「異星の土地と文化を舞台とした、典型的なストーリー」であると語っており、シンプルかつ王道なのは意図的でもある。ただ、それでもキャラクター描写がやや類型的であったり、後述する障害の描き方が人によってはネガティブに映りすぎるかもしれないなど、今に観ると少し問題だと思える要素も、正直に言ってある。
だが、『アバター』は、その見慣れない環境こと、「惑星パンドラ」という架空の世界を、細部まで作り込まれた「映像」で語っていることが何よりも大きい。ネオンや蛍のように光り輝く動植物が映える夜のシーンはため息が出そうなほど美しく、霧の中から現われるハレルヤ・マウンテン(空に浮く山)は圧巻の一言。さらには「高所にある草木を跳んで渡る」「巨大な鳥のような動物に乗って空中を縦横無尽に飛ぶ」など、そこでの生活の過酷さ、または冒険が多分に魅力的に映るアクションが数多く用意されている。
さらに、主人公が半身不随の障害を持ち車椅子生活を余儀なくされていて、初めは死んだ兄の代理でやってきた設定も、突如として新たな世界を知っていく喜びと開放感に大きく寄与している。観客も彼と一緒に、この惑星パンドラという場所、ナヴィ族の人々、そしてさまざまなことを教えてくれる女性ネイティリが、かけがえのない存在となっていく過程を楽しめるのだ。
その新しい世界を知る過程があってこそ、後半での戦いで主人公たちを心から応援できるようにもなっている。つまり、シンプルかつ王道で誰もが楽しめる、わかりやすく感情移入がしやすい物語としてやるべきことを、今までに観たことがない(3D)映像をもって、ストレートかつ最大限にやりきっていることこそ、『アバター』の大きな価値だろう。「相互理解の大切さ」は今の世にももちろん通ずるテーマであるし、似た作品を多く挙げられるというのも「面白い映画の面白い展開が詰め込まれている」などと、好意的に捉えることもできるはずだ。
3:新たな4K HDRの映像&ドルビーシネマでの魅力
ここまで書いたことは、2009年版の『アバター』と変わらない、そして2022年の今もまったく古びていない魅力だ。さらに今回は「リマスター」版であり、「4K HDR(High Dynamic Range:広く明るさの幅を表現する技術)」の映像へと進化していることも、映画館で今観てほしいと心から願えるさらなる理由になっている。さらに、筆者は試写でドルビーシネマ版を観たのだが、こちらも相性が抜群だった。ドルビーシネマは通常の上映よりもさらに鮮明な色彩と幅広いコントラストの映像と、立体的な音響を楽しめる上映方式で、中でも「黒」を基調とした映像がくっきりと見えることにも魅力がある。前述した通り、本作は夜のシーンで動植物がまるでネオンや蛍のように光輝くため、ドルビーシネマで観るとさらに明暗がはっきりした映像の美しさにうっとりできるのだ。
しかも、ドルビーシネマ版ではHFR(ハイフレームレート)の映像にもなっており、キャラクターが「ヌルヌル」と動いているように見えるのが面白かった。他にもシネマサンシャイン大和郡山など一部のIMAX3DスクリーンでもHFRのようだ。
過去の別作品の3D上映では、激しいアクションシーンでの「ブレ」を感じてしまうこともあったのだが、今回のドルビーシネマでのHFRの映像はワクワクする冒険や迫力満点のバトルの数々を、「現実も超えたような滑らかな動き」で楽しめる贅沢さがあった。このHFRは現在の4Kテレビにも対応していないらしく、それもまた「一部の映画館だけ」の魅力にもなっているのだ。
また、2009年版にはなかったシーンは、体感的にはほんのわずかに追加された程度にも思えたものの、前後の活劇がよりエモーショナルに感じられるようになっていたとも思う。キャラクターそれぞれに、より思い入れもできるだろう。
そして、ジェームズ・キャメロン監督は、『ターミネーター2』(1991)や『タイタニック』(1994)など、興行面でも映像面でも映画の歴史を塗り替え続けているという意味で、世界一と言っていい映画監督である。特に映像面での革新性が絶賛された『アバター』が、13年の時を経た『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』で、さらに、どのような進化を遂げているのか、楽しみにしている。
(文:ヒナタカ)
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