のっけから私事で恐縮だが、筆者の文春野球“初登板”は2018年。当時の文春スワローズ・長谷川晶一監督に“代打”として起用されたのが最初だった。執筆のテーマを長谷川さんに伝えると少し驚いたような反応があったのだが、わがままを通させてもらった結果、無事にデビュー戦を白星で飾ることができた。
その“デビュー戦”で取り上げたのが、西武からヤクルトに移籍したばかりの田代将太郎である。あれから4年、今や現役を引退して“一般人”となった彼に再びこの文春野球に登場してもらおうと思ったのは、5月にヤクルト恒例の「みんなのイケメン総選挙」の結果発表があったからだ。
そう、くだんの記事で「スワローズの隠れイケメン」として紹介した田代は、ルックスに関していえばヤクルトでも屈指の男前。控えの外野手という立場ながら、2018年の第1回から2年連続で8位にランクインし、現役最後の2020年も「男性の部」で7位に入った“常連”だったのだ。そこで、まずは彼に今年の「総選挙」の結果について聞いてみると……。
ユニフォームを脱いでわかった「選手はみんなカッコいい」
「これって“イケメン”総選挙ですよね? 本当なら(8位の)川端(慎吾)さんや(11位の)荒木(貴裕)さんがもっと上に行ってるはずなんですけど……。もし僕がいたらですか? 僕も今はだいぶ顔が変わったって言われますね。現役の時は運動してましたし、鍛えてたんでもっとシュッとしてたんですけど、今はちょっとボヤっとしてきたって(苦笑)。でも結局、選手はみんなカッコいいんですよ、あそこ(グラウンド)にいると」
イケメンであれ何であれ「選手はみんなカッコいい」。ユニフォームを脱いだ今、田代は球場に足を運ぶたびにそれを実感しているという。
気づけば今日もスタンドへ
「(引退してから)試合はけっこう見に来てますね。6月5日はヤクルトと西武の交流戦を見に行くんですけど、とにかく選手がみんなカッコいいんですよ。それが一流の選手であっても、そうでなくても関係ないんです。グラウンドに立てるっていうのは本当にうらやましいことであって、あそこには(競争を)勝ち抜いてきた人たちしか立てないですから。だからスタンドから試合を見るのは楽しいんですけど、うらやましいのが勝るんですよね。『ああ、いいな。カッコいいな』って思いながら見てます」
かつては自身もその舞台に立っていた。八戸大からドラフト5位で2012年にプロ入りし、西武で6年、ヤクルトで3年。もしも、時計の針をどこかに戻すことができるとしたら──。
辻監督になって初めて使ってもらえたプロ6年目の戦力外通告
「2017年じゃないですか。西武の最後(の年)じゃないですかね。あれが僕にとって、人生の分かれ道だったと思うんで……」
それまでなかなか一軍に定着できなかった田代にとって大きなチャンスが訪れたのは、プロ6年目の2017年のことだった。「2番・左翼」で初めて開幕スタメンに起用されるなど、4月だけで12試合に先発出場。ところが思うような結果を残すことができないまま出番は減り、10月に“1回目”の戦力外通告を受けることになる。
「辻(発彦)監督になって、初めて一軍でけっこう使っていただいたんですけど、結果が出せなくて……。『チャンスは一瞬』だと思うんですよ。チャンス自体、回ってこない人の方が多いと思うんですけど、僕はチャンスをいただいて、それをモノにできなかったっていうところです」
西武での一軍経験がヤクルトで生きた
ただし、この経験がのちにモノを言う。トライアウトを経てヤクルトと契約すると、移籍1年目の2018年だけで西武時代の通算を超える73試合に出場。スタメンこそなかったものの、代走や守備固めに加えて代打でも起用されるなど、打っては31打数10安打(打率.323)、1本塁打の成績を残した。
「西武ではチャンスをモノにできなかったんですけど、一軍の雰囲気をつかめたことがヤクルトで生きました。あの経験がなくて戦力外になってたら、ヤクルトに行ってもあまり結果を残せなかったかもしれないですし、あの時、辻監督に使っていただいたのは、僕にとってめちゃくちゃ大きかったです」
もしも時計の針を2017年に戻して、西武である程度の成績を残せていたなら、もしかするとクビはつながっていたかもしれない。だが、その1年後にあらためて戦力外になっていたら、ヤクルトとの縁は生まれていなかった可能性もある。
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