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Monday, June 20, 2022

16.5mmの超大型ダイナミックドライバーを搭載!試してわかったワイヤレスイヤホン「Oladance」の圧倒的な臨場感| - @DIME

今回取り上げる『Oladance』は、単に「ワイヤレスイヤホン」と呼ぶべき製品なのだろうか?

我々が知っているワイヤレスイヤホンは、その大半が「耳の穴に入れるもの」である。ただ、そのような仕組みでは「合う、合わない」の個人差がどうしても大きくなってしまう。

10代の頃に組技格闘技で右耳を潰してしまった筆者は、その苦労をよく理解しているつもりだ。

しかし『Oladance』なら、そのような心配に苛まれることもないだろう。なぜならこれは、オープンイヤー型のワイヤレスオーディオだからだ。

イヤホン単体で成田からニューヨークまで!

「澤田さん、すごい製品が届きましたよ!」

応援購入サービスMakuakeの広報にそんなことを言われたのは、今から(即ち、この原稿の執筆日から)1週間ほど前。曰く、プロジェクト公開から僅か10分で目標金額を達成してしまったワイヤレスイヤホンがあるという。

そしてそれを、筆者の自宅に試供品として送ってくれるそうだ。このあたりもガジェットライターの役得というもので、誰よりも早く新製品を楽しめるのはこの商売ならでは。

「それじゃあ、私の自宅に配送してください」

気軽にそう返事をしてしまったのだが、数日後に届いた実物を見て唖然としてしまった。

充電ケースがふたつ……?

筆者はこれまで、様々なワイヤレスイヤホンをレビューしてきた。が、1組のイヤホンにケースが2個用意されているものはこれが初めて。こ、これはどうリアクションすればいいのだろうか?

とりあえず細長いほうはバッテリーが内蔵されていないもので(ケーブルをつないでイヤホンに電力を送る)、角ばっているほうが充電ケースだということは分かった。そして充電ケースのほうは別売りとのこと。

それにしても、デカい。充電ケースなどはまるでファンデーションのコンパクトケースのようだ。

しかしこのデカさこそが、『Oladance』の肝でもある。

耳の穴を塞がず、その周辺に引っかける設計の『Oladance』。筆者の右耳にもきちんとハマる。長時間装着しても耳が痛くならない点は特筆に値する。そうだ、筆者はこういうイヤホンを求めていたんだ!

内蔵電池も非常に大きく、イヤホン単体の連続再生時間は最大16時間である。

これはすごい! 成田からニューヨークまでのフライト所要時間が約12時間ということを考えると、太平洋と北米大陸を跨いでもまだ余りあるスタミナを持っているというわけだ。

なお、充電ケースの電力を加味すると最大94.4時間使用可能とのこと。こりゃあ世界一周できるぞ!

兵舎の前、門の向かいに

『Oladance』は16.5mmの超大型ダイナミックドライバーを内蔵している。「超大型」というのは、そもそもが小さいワイヤレスイヤホンの中での話である。

これがどのような効果を音楽にもたらすのか。今回はララ・アンデルセンの『リリー・マルレーン』で試してみよう。

ララ・アンデルセンという歌手を知っている人は、日本では決して多くないはずだ。彼女はドイツのキャバレー歌手である。

1939年、ララはこの『リリー・マルレーン』のレコードをリリースした。ところが当初は全く売れず、レコード店でそれが投げ売りされていたという。

しかしレコード店のスタッフがドイツ軍に提供するためのレコードの中に『リリー・マルレーン』を紛れ込ませた。特に意図はなく、単に数合わせだったと思われる。

1939年は第二次世界大戦が勃発した年。ドイツがポーランドに突如侵攻し、そこから6年にも及ぶ人類史上最大の戦争が始まった。『リリー・マルレーン』がドイツ軍のラジオ放送で最初に流されたのは1941年の秋。

ロシアではドイツ軍がモスクワ攻略を目指す「タイフーン作戦」が開始され、北アフリカではロンメル軍団が大暴れしていた。

ベオグラードの放送局で毎晩21時57分に放送される『リリー・マルレーン』は、ドイツ兵の胸を打った。地獄の戦場に似合わないほど感傷的で甘酸っぱい歌詞だったからだ。

兵舎の前、門の向かいに
街灯が立っていたね
今もあるのなら、そこで会おうよ
また街灯の下で会おうよ
あの頃みたいに、リリー・マルレーン

この歌は、最前線の兵士がかろうじて恋人に会えた日々のことを振り返る内容である。

ナチス宣伝相ゲッペルスは、『リリー・マルレーン』を「兵士の士気を削ぐ曲」として嫌った。しかし凍土の塹壕の中で震える装甲擲弾兵や、灼熱の砂漠で粉塵にまみれる戦車兵は、ベルリンの支配者の都合など一切考えなかった。

『リリー・マルレーン』は現在でもストリーミングサービスで視聴することができる。『リリー・マルレーン』でそれを聴くと、まるでララがすぐ脇に立っているかのような錯覚すら覚えてしまう。彼女の息遣いがはっきりと聞こえるのだ。

音楽視聴からゲームプレイまで

それにしても、『Oladance』の低音はまるでスピーカーのようだ。鼓膜を容赦なく「ドン、ドン」と刺激する。

ララが『リリー・マルレーン』を収録したのは1939年。その頃のドイツで一介のキャバレー歌手が使えるスタジオにはどのような設備があったのか、筆者には分りかねる。

だがララがより前面にいて、バンドがその後方にいるという「距離感」までよく理解できるほどの立体的音質なのだ。

そして手抜かりのない低音を響かせつつ、女性歌手の声の「伸び」を水飴のように再現するという芸の細かさも有している。

もちろん曲自体が現代の技術でデジタル処理されている、というのも考慮しなければならない。

それでも従来型のイヤホンで聴いた場合、先述の「距離感」がまったく出てこないのだ。やはりこのあたりは大型ドライバーユニットの賜物である。

その「距離感」を体験する手段が、もう一つある。それはスマホでオンラインゲームをしてみることだ。

世界的バトロワゲーム『PUBG Mobile』のプレイに、『Oladance』を使ってみよう。

この『PUBG Mobile』は敵プレイヤーの足音や銃声をいち早く察知しなければならないゲーム。たとえば自分の右手側を敵が歩いていたら、その足音が右耳から聞こえるのだ。

ゲーミングスマホを使って実際にプレイしてみると、むしろ気持ち悪くなってしまうほどの臨場感を獲得できる。

敵の足音、そして突然の銃声。こ、これは音量注意だ!

下手に大音量でやってると、鼓膜より先に心臓が破れてしまう。
どうもイヤホンのドライバーユニットというものは、デジタルカメラのセンサーに似ている。

それが大型化すれば、撮影した画像に奥行きが表れる。イヤホンであれば、強烈な臨場感と誰でもすぐに察することができるほどの距離感が表現されるのだ。

「本物」を手に入れる

この『Oladance』は、決して安いものではない。

一般販売予定価格は2万980円で、Makuakeでは1万5,480円からのオーダー。上述のとおり、充電ケースは別売りだ。

ワイヤレスイヤホンは最近では5,000円台でも十分な性能のものが売られている。では、『Oladance』は「買い」なのか?

物価が目に見えて上がっているこの時期、「高いが突出した付加価値のあるもの」は売れなくなるかもしれない。景気が悪くなると安価かつアルコール度数の高い酒が売れるようになり、地上波テレビで徳川埋蔵金の特番が放映される。

一方で「背伸びをしなければ買えないもの」は、どうしても敬遠されてしまう。

だからこそ、ここは敢えて背伸びをしてみるという判断も悪くない。

「ララ・アンデルセンの息遣いが感じられるほどの音質」を、みんなが苦境に喘ぐ中で密かに楽しむ。

もちろん、モノを買ってしまったせいで当分はふりかけともやしだけの生活……ということはあるかもしれない。

しかし「本物」を手に入れた経験は、決して遠くないうちに必ず光を放つはずだ。

そして、「本物」は我々のすぐ目の前にある。

【参考】
まるでスピーカー!未来の高音質と装着感!「Oladanceウェアラブルステレオ」-Makuake

取材・文/澤田真一

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