* * * 新型コロナウイルスが流行して以降、感染状況などが刻々と変化していくなかで、在宅医療を守る取り組みも変わっていきました。 新田國夫医師が理事長を務める、在宅ケアに関わる専門職の団体が連合した「日本在宅ケアアライアンス」では、在宅医療がスムーズにおこなわれるよう、在宅ケアにおける感染対策の行動指針、対処方針などをその都度、公開してきました。 「新型コロナ流行の第1波、第2波のころは、PPE(個人防護具)など感染予防のための装備がなかったので、訪問介護に関わるスタッフが発熱患者のいる自宅を訪問できないといったことがありました。現在は予防のための装備などが普及し、無症状でもPCR検査ができるようになったことやワクチン接種が進んだことなどにより、在宅医療がスムーズにできるようになったと感じています」 さらに感染拡大に伴う自宅療養者の増加で、在宅医療は重要な局面を迎えました。 「2021年春に兵庫県で新型コロナが感染拡大した際、在宅医療の役割が大きく変化しました。入院できない自宅療養者が増え、在宅での酸素療法やステロイド剤の投与など、新型コロナの基本的な治療プロトコール(ガイドライン)を作成する必要が生じました。中等症以下であれば、入院しておこなう治療と変わらないのです」 これを機に日本在宅ケアアライアンスでは、新型コロナの患者が自宅でも必要な医療を受けられるように、自宅療養者に対する治療指針を策定しました。 「そもそも高齢者や認知症の人の中には、在宅医療を希望している人もいるのに、新型コロナにかかると、原則入院せざるをえなかった。在宅医療のスタート時から積み上げてきた自立尊重という原則を守ることができなくなってしまったのです。そこに私たち在宅医は矛盾を抱えていました。新型コロナは軽症だったのに、入院することで認知症の症状がかえって悪化する人もいるのです」
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