“身の丈をちょっとだけ越えたクオリティ”
かつて“女性仕様車”というのがあったのをご存じだろうか? 内外装にかわいらしいパステルカラーをあしらい、運転席の回転機構やバニティミラーなどを装備するのが女性仕様車の特色で、1980年代から1990年代にかけて軽自動車やコンパクトカーなどに多く設定された。 いっぽうで、あからさまには謳っていないものの、「きっとこれって男性ユーザーをターゲットにしているんだろうなぁ」と、思しきモデルはいまも少なからず存在している。その手の多くは外装色が黒っぽくて、メッキパーツを多用するなどして“いかつい雰囲気”を醸し出していたりする。 ただし、“ジェンダーレス”という考え方が一般的になったいま、色や装備でクルマを「女性用」「男性用」と区別するのは時代遅れな感じがする。女性か男性かにかかわらず、「自分の好みにあったもの」「オシャレに見えるもの」を選ぶのが現代流ではないだろうか? 話は急に飛ぶけれど、スズキのニューモデル「ワゴンRスマイル」は内外装色の組み合わせによって4つの世界観を提案しており、ひとつは落ち着いた雰囲気の「ブリティッシュ・スタイル」、2番目は華やかさが際立つ「エレガント・スタイル」、3番目は海岸沿いの街並みを意識した「カリフォルニア・スタイル」、4番目はクールで都会的な「モダン・スタイル」を表現しているという。 ワゴンRスマイルの開発陣は「ここまで内外装色の設定にこだわった軽自動車は(少なくともスズキには)なかった」と胸を張る。その主張どおり、私も、「ワゴンRスマイルは、コンセプトもセンスもクオリティも軽自動車という枠を大きく越えている」と感じた。 とくに「うまいなあ」と思ったのがテーマを4種類にしたこと。なぜかといえば、4種類にすることで「男性的」「女性的」というステレオタイプから抜け出して、「ジェンダーを越えて選ばれる世界観」が表現できたような気がするからだ。 われわれの試乗車は「ブリティッシュ・スタイル」で、外装色はメタリックのネイビーブルーにホワイトのルーフというツートーンカラー。粗めのフレーク(メタリックカラーに使われる金属片でキラキラと光る効果を生み出す)を用いたボディカラーは深みがあって、ワゴンRスマイルの小さなボディになんともいえない落ち着きを与えている。 また、ボディ側面がゆるやかに弧を描いているおかげで、軽自動車的な安っぽさも不思議と感じられない。あくまでも「ちょっとおとなっぽい感じのコンパクトカーだなあ」という印象なのだ。 インテリアのデザインも外観によくマッチしたもので、十分にクオリティが高くてオシャレという感じ。いっぽう、ダッシュボードの縁取りやエアコンの吹き出し口にはメタリック系のカッパー(銅)という色の加飾が施されており、これもネイビーブルーのフェイシアとよくマッチしていて、軽自動車とは思えないクオリティを醸し出している。 実はこのカッパー、ネイビーブルーにくわえてアイボリーパール、アイボリーの計3色が用意されているインテリアカラー・パネルとの相性を考慮して、光が当たったハイライト部分はイエロー系が、シャドウ部分は赤味が、それぞれかかって見える塗料を使っているという。ライトグレーもしくはダークグレーに染め上げられたチェックのシート地もシックで落ち着いている。 そして私がなによりいいと思ったのは、ワゴンRスマイルのインテリアが“背伸びした高級感”を無理やり作り出すのではなく、“身の丈をちょっとだけ越えたクオリティ”を生み出している点にある。もし、“背伸びした高級感”だったら、かえって安っぽく見えてガッカリしただろう。このセンスもまた、絶妙であると思う。
からの記事と詳細 ( 新型ワゴンRスマイルの“絶妙なセンス”とは? 公道で乗ってわかった美点と気になる部分……スズキの軽自動車はやっぱり凄かった!(GQ JAPAN) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース )
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