これまで大統領特権で刑事訴追を免れてきたトランプだが、1月になればその免責を失う。窮地に立たされた彼に残された選択肢とは──。元FBIエージェントで現在は「CNN」のコメンテーター(法律・国家安全保障)を務める筆者が解説する。
迫るタイムリミット
ドナルド・トランプは来年1月20日にホワイトハウスから去ると同時に大統領特権を失い、在任中および就任前に関与した可能性のある犯罪行為について罪を問われるだろう。だが今から退任までの50日余りの間に、司法省やFBIによる捜査を妨げる策を講じておくことはできる。 トランプはこれまで、大統領という立場のおかげで刑事訴追を免れてきた。たとえば、2016年大統領選にロシアが介入したとされる「ロシア疑惑」の捜査をめぐり、トランプが司法妨害を行ったとする証拠が十分にあったにもかかわらず、ロバート・ムラー特別検察官はトランプを起訴しなかった。「現職大統領は訴追できない」とする1973年の司法省の内部メモに基づく方針に従ったのだ。 さらにウィリアム・バー司法長官は是が非でもトランプを守る構えであり、大統領の利益を損ないかねない検察官らに圧力をかけている。 しかし、トランプが大統領の座を降りて、バイデン政権で新たな司法長官が就任したとき、前大統領は一市民として法の下で裁かれるだろう。 では、トランプが自分と家族を守るためにできることは何なのか? 最も強力かつ広範な免責を得る手段は、大統領恩赦だろう。ジェラルド・フォード大統領はリチャード・ニクソンに対し、彼が大統領在任中に犯したあらゆる罪についていっさい追及しないとする包括的な恩赦を与えた。 同じようにジョージ・H・W・ブッシュ大統領は、1992年のイラン・コントラ事件に関与していた6人に恩赦を与え、レーガン政権につながる捜査の手を断った(ブッシュはレーガン政権で副大統領を務めていた)。 だがトランプの場合、ジョー・バイデン次期大統領がトランプへの恩赦はないと明言している。ゆえに、トランプはこの政権移行期間中に自力で何とかしないといけないのだ。 選択肢は2つある。
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