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Tuesday, May 12, 2020

はやぶさ2の高解像度画像からわかった、リュウグウがツートンカラーな理由 - ギズモード・ジャパン

無事に帰っておいでー!

去年の11月13日に小惑星リュウグウを出発したはやぶさ2号は、現在地球へまっしぐら。そろそろ帰還フェーズ第2期に入り、イオンエンジン運転を再開する段階に差しかかっています。

2020年12月の帰還が待ち遠しい反面、はやぶさ2号がリュウグウ滞在中に集めたデータの解析も着々と進んでいます。新しく解析された画像はこれまでにないほど低高度かつ超高解像度で、リュウグウの地質や歴史を知る上で重要な手がかりとなりそう。

さらに、なぜリュウグウの表面が希妙な赤と青のツートンカラーなのかを説明する有力説も浮上しています。なんでもリュウグウはその昔太陽に近づきすぎたせいで、赤茶けてしまったのかもしれないそうです。

太陽系初期の歴史を知る手がかり

リュウグウは太陽を半径約1億8千万kmの軌道に沿って周回している小惑星で、直径は 870メートル。上下がすぼんで赤道がでっぱっているコマ形で、どこもかしこも岩石だらけです。リュウグウは昔なんらかの衝撃を受けて破壊され、バラバラの破片に砕け散ったと考えられています。その破片同士がお互いの重力で寄せ集まって、やがてまたひとつの天体に再結成したのがいまのリュウグウです。

JAXAによれば、リュウグウは水や有機物を含む物質があると推定される「C型小惑星」。はやぶさ1号が探査した小惑星イトカワよりもさらに古く、太陽系初期の情報を多く保っていると考えられています。

はやぶさ2号のミッションを研究してきた東大の諸田智克准教授、杉田精司教授と長勇一郎助教らは、今月8日に『Science』誌上で論文を発表し、リュウグウは太陽に接近して表面の岩石だけが赤くなったのではないかとの仮説を立てました。

小石が見えるほど鮮明な画像

この仮説のヒントとなったのが新しい超高解像度の画像です。

東大によれば、小惑星イトカワで撮影された画像の最高解像度が6 mm/pixelだったのに比べ、今回はやぶさ2号に搭載されている広角の光学航法カメラで撮影された画像は1 mm/pixelの解像度。解像度が6倍もアップしたんですね。

これだけ高い解像度ですからひとつひとつの岩石や小石までもが見えるようになり、いままで不鮮明だったディテールもありありと見られるようになりました。今回の研究は、タッチダウン時にリュウグウの表面に起こった変化に着目しました。

はやぶさ2号が最初のタッチダウンを行った2019年2月22日(日本時間)、タッチダウンと同時に弾丸が発射され、大量の赤黒い微粒子と岩石が舞い上がったことが画像から確認されました

こちらがタッチダウンの際の動画です。

Video: 東京大学大学院理学系研究科・理学部 School of Science, The University of Tokyo/YouTube

赤と青の謎

Image: Morota et al., 2020 via Gizmodo US

さて、リュウグウの謎のひとつ、ツートンカラー

リュウグウ表面の反射スペクトルの傾きマップ(上画像)を見てみると、赤道に沿って赤っぽい色が集中していて、両極では青が多くなっています。岩石は比較的青いものが多い反面、それを囲んで散らばっているもっと細かい物質は赤い色をしており、青いクレーターのほうが赤よりも若いこともわかっているそうです。しかし、なぜこのようなまだら模様になってしまったのかは今まで誰も説明できていませんでした。

そこへ、うれしい事件が起こりました。はやぶさ2号がタッチダウンした際、鮮明なビフォー&アフター写真を撮ることに成功したのです。

タッチダウン前のリュウグウ表面の様子と、タッチダウンとともに巻き上げられた粉塵をどちらも超高解像度で観察した結果、巻き上げられた微粒子が赤黒い色の物質だったことがわかりました。さらに、この結果からこんな結論が導き出されました。

…過去のある短い期間にリュウグウ表面物質が、太陽に焼かれることで変質してつくられたことが分かった。この結果は、リュウグウが一時的に現在よりも太陽に接近する軌道にいたことを示している。

はやぶさ2のタッチダウンで観測された小惑星リュウグウ表面の擾乱とそれから示唆される表層と軌道の進化史』より抜粋

赤く変化するイベント

リュウグウがいつ太陽に焼かれたのかはまだ完全にわかっていませんが、過去に他の天体と衝突した頻度をシミュレーションでたどってみたところ、可能性としては30万年前か、850万年前だと考えられるそうです。

…過去にリュウグウ表面は赤く変化するイベントがあったこと、内部が赤いクレータはリュウグウ表面の赤化が起きる前につくられたものであり、内部が青いクレータは表面の赤化が起こった後につくられ、地下の新鮮な青い物質を露出させたものであることが明らかとなった。

表面の赤さ分布の緯度依存性は、リュウグウ表面の赤化イベントが太陽による加熱または風化によるものであること、赤道の青い物質の露出は地形的高地(赤道)から低地(中緯度)への表面流動によって、赤道で新鮮物質が露出したことを表している。また、赤いクレータと青いクレータが明瞭に二分されることから、表面赤化は短期間で起こったことを意味している。

このことから…[中略]…青いクレータは表面赤化が起こってからつくられたものなので、その数密度から表面赤化の年代を推定することができ、30万年から800万年の年代が推定された。

はやぶさ2のタッチダウンで観測された小惑星リュウグウ表面の擾乱とそれから示唆される表層と軌道の進化史』より抜粋

ちなみに、リュウグウそのものは900万年前に誕生したと考えられています。

赤く変化するイベントとしてもうひとつ提案されているのは宇宙風化作用。しかし、こちらはたった100ナノメートルほどの薄い表土にしか影響を与えないので、多くの研究者から可能性として除外されています。

一方、太陽に接近して焼かれたとすると、数10センチの深さまで影響が到達すると考えられ、リュウグウの赤い地質の深さとも適合するそうです。

おみやげに期待

はやぶさ2号が地球に帰還すれば、赤と青の物質をどちらもおみやげに持って帰ってきてくれるはず。無事にサンプルを採取できていること、無事に帰ってきてくれることを願うのみです。

赤と青の物質から太陽系初期の様子がわかるヒントがさらに得られるかもしれないと思うと、今からワクワクが止まりません。

Reference: はやぶさ2プロジェクト(JAXA), 日本経済新聞, 東京大学大学院理学系研究科附属宇宙惑星科学機構(UTOPS), 東京大学大学院理学系研究科理学部

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May 12, 2020 at 06:00PM
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