海外に拠点を移し、永住権をとった日本人の数は過去最高に達している。さらに、看護師や保育士、教員など、人手不足が叫ばれる職種に就いていても「海外で働く」道を検討する人が増えているという。彼らは何を求めて海外に飛び出すのだろうか。
ここでは、海外移住を選んだ若者たちへのインタビューをまとめた『ルポ 若者流出』(朝日新聞出版)より一部を抜粋。「がんばる親の背中を見せたい」と、夫を残し息子とマレーシアへ移住した、津村ようこさん(34歳)の事例を紹介する。(全4回の1回目/続きを読む)
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津村ようこさんは2022年夏、9歳と6歳の息子を連れて首都圏からマレーシア・クアラルンプール近郊に移住した。マレーシアは年間の平均気温が約27度で、年間を通じてTシャツにショートパンツといった夏の装いで生活できる。ホテルやショッピングモール内は冷房が効いて肌寒いほどだが、一歩外に出ると強い日差しが照りつける。
海外生活は学生時代からの憧れで、息子たちにも日本の公教育とは別の選択肢を見せたかった。日本で働く夫は、2カ月に1度のペースで会いに来る。毎日、テレビ電話は欠かさず、週末はZoomをつなぎっぱなしにすることもある。
「みんなそれぞれ本を読んだり、仕事をしたり好きなことをして会話をしない時間もあります。同じ空間にいる感覚が味わえて、現代の留学は寂しい思いをしなくてもいいんだってびっくりしました」
日中は自宅で仕事をしている。夕方になるとインターナショナルスクール(以下、インター)から帰宅した子どもたちをのせて車を運転し、公園やスーパーに出かける日もある。自宅の敷地を出ればすぐ目の前が学校という恵まれた環境で、子どもたちは徒歩で通学している。現地では治安面の不安から、スクールバスや親の送迎で通学することが多く、日本のように子どもが1人で通学する姿はほとんど見かけない。
夜は親子で一緒に勉強するのが日課だ。現地での生活に欠かせない英語に向き合うのは、大学受験以来。辞書を引きながら、長男と一緒に学校の宿題にも取り組む。日本の小学校に通ったことのない次男とは、タブレット教材も活用しながら家庭での日本語学習を欠かさない。
「上の子は日本では小学3年生で日本語の読み書きの土台ができてからマレーシアに来たので、日本語をすっかり忘れて書けなくなるってことはない。本好きで日本語の本からどんどん吸収しているので心配していません。でも、やっぱり親が日本語力の維持向上に無頓着だったら、どんどん忘れていくと思います。英語はインターに高学年から入ったので苦戦していますね」
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