撮影/大坪尚人
2024.03.12
青木崇高が「実写化不可能」な謎に挑んでわかったこと
「十角館の殺人」インタビュー前編
上田 恵子
ドラマや映画では野性味のなかに繊細さが見え隠れする演技で観る者を魅了し、トーク番組ではニュートラルかつ率直なコメントで場を盛り上げるーー。年々その存在感を増していく青木崇高さんが今回挑んだのは、綾辻行人氏のデビュー作にして伝説のミステリー小説を実写ドラマ化したHuluオリジナル「十角館の殺人」だ。長年「映像化不可能」と言われてきた本作で物語の語り部とも言える島田潔を演じた青木さんに、ドラマへの思い、そして現場への向き合い方を聞いた。
出典/YouTube Hulu Japan公式
「映像化は不可能」と言われてきた『十角館の殺人』
『十角館の殺人』は、タイム誌が選ぶ「<史上最高のミステリー&スリラー本>オールタイム・ベスト100」に選出され、全世界でシリーズ累計670万部を売り上げている小説だ。緻密かつ巧妙な叙述トリックで読者を翻弄したあげく、たった1行で事件の真相を描くという大胆な手法で、ミステリー界に衝撃を与えた作品でもある。その特異性から、長い間「映像化は不可能」と言われてきた。
「内片輝監督から最初に話をされたのは、WOWOWのドラマ『邪神の天秤 公安分析班』でご一緒している時でした。その時は立ち話のような感じで言われ、それからしばらくして原作を読んだのですが、読み終わった瞬間『いやいや監督、これはどういうこと!?』と(笑)。
これまで“映像化不可能”というと、テクニカルな意味で不可能というケースが多かったと思うんですね。でもこの作品は、ストーリーの構造上無理だと言われているもの。内片監督とはかれこれ10年近いお付き合いになりますが、僕自身も実際に読んでみて、これは無理だろうと思いました」
実写化にあたっては、原作者である綾辻氏も次のようなコメントを寄せている。
”どうやって実写化するの? できるの? という疑念を抱かざるをえませんでした。ただ内片監督はかつて、非常にマニアックかつアクロバティックな犯人当てドラマ「安楽椅子探偵」(有栖川有栖さんと綾辻の共同原作による深夜枠のTVドラマ)を計7作、撮ってくれた人です。その内片さんが「やりたい」と云うのだから、何か彼なりの(実写化のための)アイデアがあるのだろうな、と思いました”
『安楽椅子探偵』シリーズ以外にも、ドラマ『孤高のメス』(WOWOW)、『シグナル』、『相棒』など、数々のミステリー作品を世に出してきた内片監督。作家からも役者からも信頼される監督だからこそ実現できたドラマなのだ。
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