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Sunday, February 4, 2024

アップル「Vision Pro」を着けたまま24時間過ごしてわかったこと | 仕事や動画視聴、料理、スキーをした結果… - courrier.jp

Photo: Michael M. Santiago / Getty Images

Photo: Michael M. Santiago / Getty Images

Text by Joanna Stern

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アップルの複合現実ヘッドセット「Vision Pro(ビジョンプロ)」をほぼ24時間ぶっ続けで装着してみた結果、驚いたことがいくつかあった。

1. 吐かなかった
2. 多くの仕事をこなせた
3. おいしい料理を作れた

それともう一つ。筆者のペルソナ(ビデオ通話用のアニメーションのアバター)にあなたは夢でうなされるだろう。

筆者は先週、スマートフォン後の未来に関するアップルの最も大胆な賭けとなるビジョンプロをテストした。重さ約635グラムのゴーグルを着けると、リビングルームにアプリが浮かんでいるのが見える。イライラするほど散らかったリビングルームを仮想現実(VR)の世界に変えれば、ハワイの火山の火口に据えられた巨大なスクリーンで3D映画を視聴できる。

最初にはっきりさせておこう。あなたは恐らく3500ドル(約51万円)するアップルのビジョンプロを買わないだろう。アプリ開発者やアップルの筋金入りのファンでない限り、それだけのお金があれば、実際にハワイの火山を訪れる旅に使うだろう。

それで構わない。ビジョンプロを試すことで、筆者はこのデバイスの可能性や、少なくとも当面は買わなくてもいいと思わせる技術的な制約を理解したかった。そして何よりも、次の疑問の答えを知りたかった。スクリーンがあふれるこの世界で、その一つを目に装着するメリットは何なのか。

そこで、この「フェースコンピューター」──アップルではなく筆者がそう呼んでいるだけだ──を試した1週間のうち1日については、ほぼ終日ぶっ続けで着けてみることにした。画期的なテクノロジーの限界を試すには、そうするのが一番だ。笑ったときもあれば、泣いたときもあった。笑いすぎて涙が出たこともあった(本当だ。筆者のペルソナを見れば、分かるだろう)。

では早速、アップルの最も新しくて最も奇妙な製品の狙いが何なのかを見ていこう。

操作法は


ビジョンプロを装着すると、格子状に並んだ丸いアプリアイコンが現実世界に浮かんでいるのが見える。

「Meta Quest(メタ・クエスト)」などのVRヘッドセットを着けたことがあれば、次は通常、ハンドコントローラーを手探りでつかむことになるのはご存じだろう。ビジョンプロの場合、必要なのは目と手だけだ。

使いたいアプリを見て、宙をつまむ動作をして選択する。スクロールするには、宙をつまみ、止め、ドラッグする。アプリが自分の「近く」に表示されたら、手を伸ばしてタップすればいい。操作は直感的だ。部屋に誰かがいた場合、イカれたジェスチャーゲームをしているのかと思うかもしれないが。時にビジョンプロの視線検出機能が筆者の動きに反応しないこともあったが、ヘッドセットのフィット感を調整すると直った。

最もクールなのが、右を見て電子メールアプリを開き、真正面を見てブラウザーウインドーを開く操作だ。頭を少し傾けるだけで、ウインドーをあちこちに配置できる。アップルはこれを「空間コンピューティング」と呼んでいる。

ハードウエアについては、いくつかの重要な疑問に答えよう。

Q:重いか

A:重い。メタルとガラスを使用したデザインには高級感が漂い、重厚だ。付属のバンドの一つには頭の上部にかぶせるストラップが付いており、圧迫感を軽減するようになっている。もう一つのバンドは、履き心地のいいチューブソックスのように頭を包んでくれる。クッションと光を遮る役割を果たす「ライトシール」も付いている。筆者のバンドは今はメーキャップが付着してしまっている。

Q:なぜケーブルがぶらさがっているのか

A: バッテリーパックがケーブルでつながれているのは、ハイテクな操り人形のような見た目にはなるが、気にはならなかった。しかし、2~3時間おきに充電しなければならなかったため、ほとんどの時間、約1.5メートルのケーブルで壁につながれることになった。

Q:眼鏡をかけたらどうなるのか

A:ビジョンプロは眼鏡をかけたまま着用するようにはデザインされていない。代わりにツァイス製の矯正レンズを99ドルで購入する必要がある。この片眼鏡のような2枚のレンズをゴーグルにカチッとはめ込む。

Q:AirPods(エアポッズ)は必要か

A:必要ない。ヘッドセットは優れたスピーカーを内蔵する。しかし、周りの人に何をしているかを聞かれたくなければ、エアポッズを簡単に接続できる。

Q:目はどうなっているのか

A:ビジョンプロのカーブがかかった前面ディスプレーは、装着者が地球にとどまり、どこかのメタバースにテレポートされずに済むようデザインされている。装着者が周囲の人を見た際、相手にはデジタルで再現された装着者の目が見えるはずだ。見える「はず」というのがポイントで、かすかにしか見えない。ヘッドセットを着けてウインドーを見ると、他の人たちには装着者の目が青紫色の光を通して見える。やや見かけ倒しの機能であり、かなりのコストがかかっているのは間違いない。

どのような使い道があるのか


筆者の日々のルーティンの中で、ビジョンプロに向いていた作業と向いていなかった作業は以下の通りだった。

仕事

周囲に複数のウインドーを開いて作業するたびに、映画「マイノリティ・リポート」のトム・クルーズのような気分になる。未来の犯罪を防ぐ準備はできている――。学校宛ての電子メールを一度に一通書くという作業によって。

バーチャルキーボードが内蔵されているため、宙で入力できる。しかし、これで長い文章を打とうとすると気が狂いそうになる。小さいボタンをつまんで選択するのも、まるでお祭りでやるゲームだ。ビジョンプロにブルートゥース(近距離無線通信規格)対応のキーボードとマウスを接続して初めて、まともに仕事をこなすことができた。

さらに「MacBook Pro(マックブック・プロ)」とも接続してレベルアップした。こうすることで、デスクの上に浮かんだ大きなバーチャルモニターを使用して、このコラムを書くことができた。

コミュニケーション

ビジョンプロのカメラのほとんどは外側を向いているため、ビデオ通話で自分の顔を写すことはできない。そこでアップルは写真のようにリアルな3Dのバーチャルな分身を用意している。この「ペルソナ」と呼ばれる分身(下の写真)は、ヘッドセットで顔をスキャンして作成する。

アップルのビデオ通話アプリ「フェイスタイム」で友人や家族とペルソナを使用して通話してみたところ、感想は全員一致していた。「ひどい見た目」。姉妹にはこう言われた。「地獄からやってきたボトックス(しわ取り注射液)みたい」。いつもはやさしい同僚のジェイソン・ゲイ記者はこう言い放った。「怖い」と筆者の父親は言った。

ビジョンプロをテストしている他の人たちと通話したときは、ややましだった。なぜなら、私たち全員がばかみたいな見た目をしていたからだ。それでも、筆者の見た目が一番ひどいと皆が言った。プロ用の照明を顔に当て、何度もペルソナを作り直したにもかかわらずだ。

この機能は素晴らしいテクノロジーを存分に活用している。カメラを使用してリアルタイムに目や手、顔の動きを追跡する技術だ。しかし、通話相手がことごとくペルソナを見て腹を抱えて笑ったり、恐怖でひるんだりするのであれば、何の役に立つのか。アップルはこの機能はまだベータ版だと説明している。

視聴

ビジョンプロを装着すれば巨大なホームシアターを作り出すことができる。しかも、自宅にいる必要さえない(飛行機の揺れの影響を軽減するためのトラベルモードもある。ビジョンプロが実際に発売されるまで、そのモードのテストはできない)。

筆者は動画配信サービス「ディズニープラス」のビジョンプロ用アプリを使用して映画「ブラック・ウィドウ」を3Dで視聴した。大型スクリーンと臨場感ある空間オーディオに挟まれ、後は映画館の心地よいシートさえあれば文句なしだった。ヘッドセットの「デジタルクラウン」と呼ばれるダイヤルを回すと、現実の環境がバーチャルな環境(ヨセミテ公園の峰の風景など)に取って代わる。アップルは、恐竜やノルウェーのフィヨルド、米歌手アリシア・キーズをそれぞれ題材にした180度見渡せる一連の3D動画も用意している。筆者はそれらを見るたびに吐き気を催した。

動画配信サービス「アマゾン・プライム・ビデオ」「パラマウントプラス」「ピーコック」はiPad(アイパッド)向けのアプリをビジョンプロに移植した。「ネットフリックス」や「ユーチューブ」の動画はビジョンプロのウェブブラウザー経由でしかストリーミングできない。

撮影

非常に素晴らしいことの一つが、自身の3Dホームビデオを視聴できることだ。アップルは数カ月前、「iPhone15 Pro(アイフォーン・フィフティーン・プロ)」に「空間ビデオ」機能を導入しており、筆者はこの機能を使用して息子を撮影し始めていた。それらのビデオを今、ヘッドセットを装着して3Dで視聴すると、その瞬間を追体験しているような気分になる。ビジョンプロでそうした動画や写真を撮影することもできる。左上のボタンを長押しすればいいだけだ。

冒頭の動画にある通り、筆者はスキー場で空間ビデオを撮影してみた。ビジョンプロは実際、スキーゴーグルのような見た目をしているが、そのような活動を意図したものではない。それでも、手を使わずに写真や動画を撮影するのは素晴らしく、スマートグラスにもなるということだ。

料理

頭がメタルに覆われているときに、鋭利な刃物や表面が熱くなった鍋などを扱いたくないかもしれないが、ビジョンプロは究極の料理コンピューターだ。筆者はビジョンプロ用のレシピアプリ「Crouton(クルトン)」を起動し、「バルサミコ・マッシュルーム&ソーセージ・パスタ」のレシピをキッチンの片側に表示させた。

ナイフを使うのは心配だったが、スクリーンに見えるものと実際に起こっていることの間には目立った時差はなかった。全てが多少ピクセルっぽく見えるが、いいこともある。タマネギを刻んでも涙が出ないことだ。

感激したのは、タイマーの一つをパスタをゆでている鍋の上に、もう一つのタイマーをマッシュルームを炒めているフライパンの上にドラッグしたときだ。タイマーは設定時間になるまで、そのままそこに表示されていた。

ビジョンプロの使い道で欠けているのが、運動だ。だが、いずれそれもできるようになると筆者はみている。メタ・クエストを持っている人の間ではそうした使い方が人気だ。

アップルが思い描く未来


アップルのヘッドセットは第1世代の製品にありがちなあらゆる特徴を備えている。大きくて重く、バッテリーの持ちは悪く、アプリは優れたものがほとんどなく、バグも多い。そして、アバターはあのできだ。
しかし、ビジョンプロではSFの世界のようなことがたくさんできる。仕事部屋のあちこちでアプリをフリックしたり、バーチャルタイマーをコンロの上に表示させたり、子どもたちがラマをなでているホログラム映像を見たり。ビジョンプロは筆者がこれまで試した複合現実ヘッドセットの中で最も優れており、実質唯一のライバル製品で、はるかに安い「メタ・クエスト・プロ」や「クエスト3」よりもずっと先進的だ。

こうした企業は、それらが私たちが求めているデバイスそのものではないことは分かっている。彼らは皆、バーチャルな体験を普通の眼鏡のように見える端末に組み込むことを目指して取り組んでいる。それが実現するまで、彼らはただ私たちの頭をもてあそび、混乱させるだけだ。

今のところ、このフェースコンピューターの最適な使い道は、アップルが思い描いている未来をのぞき見ることだ。それと、フェイスタイムで知り合いを全員、震え上がらせることだ。お父さん、怖がらせてごめん。

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