東日本大震災について語り継ぐ「大震災かまいしの伝承者」になるための研修が1月28日、岩手県釜石市であった。10代から50代までの男女12人が受講し、新たに伝承者になった。受講者の中には、研修で震災を学んだことで、祖父母が亡くなった理由を理解できたという中高生の姉妹もいた。
釜石市は2019年、災害から未来の命を守るための市民の誓いとして、「備える」「語り継ぐ」など四つの柱からなる防災市民憲章を制定した。伝承者制度は、その理念を継承し、身近な人や震災体験のない人たちに教訓を伝え、防災意識を高めてもらう目的で、同年から始めた。
この日の研修は、市内の犠牲者の約6割が集中する鵜住居地区の公民館で行われた。小笠原敏記・岩手大教授らが地震のメカニズムについて能登半島地震の例も盛り込んで説明。また、今後30年間、釜石で震度6弱以上の地震が起きる確率が高いことや、大地震が起きたとしても対策を取っていれば被害が8割減ることなどを説いた。
その後、近くにある震災伝承施設「いのちをつなぐ未来館」を見学した。同館の付近には以前、「鵜住居防災センター」が建っていた。震災時、センターに避難した約160人が亡くなったと推計されている。
未来館スタッフの説明を一番前の席で聞いていた50代の男性は当時、センターの2階まで達した津波に遭い、天井とのわずかなすき間に頭を出して助かった経験がある。「やっと心の整理がついた」と伝承者になる決意をしたという。
本来センターは津波の後に被災者が生活する「避難所」に指定されていた。だが、避難訓練では津波が来る前に逃げ込む「避難場所」として使われていたため、震災時に多くの住民が勘違いして避難していた。
受講者の釜石高2年・菊池音乃さん(17)と妹の甲子中1年の音羽さん(13)の祖父母も、センターに避難して亡くなっている。
音乃さんは「祖父母がなぜここに逃げて亡くなったのか、初めてわかった」と話し、「避難所と避難場所の違いがわかっていたら、助かっていたのかもしれない」とうつむいた。
2人は、犠牲者が少しでも減るように震災を伝えたくて「伝承者」に応募した。音羽さんは「これから生まれてくる人たちは震災を全く知らないから、伝えることは大切」と話す。音乃さんは「小学生たちに機会があれば語りに行きたい」と意欲を見せた。
「伝承者」は今回を入れて、これまでに合計110人に証明書を授与したが、その後継続を希望しない人もいるため、現在は71人が登録されている。(東野真和)
からの記事と詳細 ( 新たに12人が震災伝承者に 「祖父母の死の理由わかった」受講者も:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
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