「ヴェルファイア」はトヨタが高級ミニバン市場に向けて2002年に「アルファード」を発売し、人気車種になったことで、派生モデルとして2代目「アルファード」が発表された2008年に加わったモデル。発売当初から正統派の「アルファード」に対し、ちょいワルなプライベートユーザーに向けた高級ミニバンだった。そのため、販売台数も限られていた。
3代目「アルファード」と2代目「ヴェルファイア」が発売されて、5年目の2020年には「アルファード」が年間9万台で販売ランキング総合5位と絶好調の時でも「ヴェルファイア」は1万8000台で37位にとどまっていた。モデル末期の2022年でも「アルファード」は約6万台で10位だったが「ヴェルファイア」は50位にもランクインしていなかった。
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そんな状況だったので、4代目「アルファード」の発表の時に「ヴェルファイア」は消滅するのでは?という声がささやかれていた。しかし「ヴェルファイア」は復活。一説によると中国市場向け、という話もあるが、今回、日本市場でも「ヴェルファイア」は全体の3割近くまで台数を売りたい、というのだ。3割売るということは、過去の販売実績だと2020年に37位1万8000台を販売した時でも「アルファード」の2割だったので、かなり売らなければならない。
そこで、今回の「ヴェルファイア」は「アルファード」のエムブレム違いではなく、性格を変えるためにハードも異なるものにしたのだ。もちろん、外観も黒を基調とした金属加飾でアグレッシブさを強調、サスペンションやボディーにチューニングを施し、ヘビーデューティ仕様に仕立てた。スポーティーであると同時に、中国市場の過酷な道路事情にも耐える仕様でもある。
バリエーションだが、パワーユニットは2.5Lの直4、ガソリン+交流同期モーター×2と、2.4L直4ガソリンターボ+8速AT。グレードはガソリンターボとハイブリッドは「Zプレミア」、ハイブリッドの「エグゼクティブラウンジ」。駆動方式は全モデルにFFと4WDが組み合わされている。車両本体価格は2.4LターボのFF車、653万円から、ハイブリッド・エグゼクティブラウンジ、E-Fourの892万円というラインナップだ。
サスペンションはフロントがストラット、リアはダブルウイッシュボーン。プラットフォームはTNGAの新プラットフォームを「ヴェルファイア」用に最適化している。それは、ロッカーストレート構造に床下Vブレースを追加したほか、骨格に2種類の構造用接着剤を塗布した。これによりボディーの変形を効率よく制御し、操安性の向上とシート振動の低減を実現している。さらに、ばね上制振制御では、エンジンのトルクをリアルタイムで制御することで、車体の上下運動、サスペンションではバネ上の初期の動き出しを止めている。
「ヴェルファイア」専用の足回りで注目したいのは、フロントのパフォーマンスブレース。これはラジエターサポートとサイドメンバーを結びつなぐ棒状の部品。フロントの応答性を向上させる役目を持つものだ。果たしてこのパーツが本当に、スポーティな足回りを実現しているのだろうか?
早速「ヴェルファイア Z プレミア」を走らせることにした。2.4Lガソリンターボを搭載するFFモデル(車両本体価格655万円)だ。運転席への乗り込みは、Aピラーにグリップがないので、小径、太めハンドル持ち、シートに座る。Dレンジ、ノーマルモードで走り出す。スタートからダッシュは小さい。
2.4Lエンジンは2500回転あたりから、エンジン音が大きくなる。メーターパネルのエンジン回転計は8000回転まで刻まれ、レッドゾーンは6200回転から。スタートでのダッシュは期待外れだったが、0→100km/hの加速を計測してみると、8秒台前半。2.5Lハイブリッドのエグゼクティブラウンジは、9秒台前半なので、約1秒Z プレミアのほうが速いことになる。
2.4Lターボ、279PS、430Nm、車重2180kg+8速ATのZ プレミアと、2.5Lハイブリッド、190PS、236Nm、車重2310kg、電気式無段の違いだ。8速ATのパドルで走ってみる。5000回転を目安に引っぱると、1速40、2速65、3速100、4速140まで伸びた。2500回転以上はエンジンのうなり音も大きくなる。ハンドリングは、全体に操舵力は重め、直進性も強い。
乗り心地は硬めで、路面のザラつきも伝わってくる。目地での突き上げも強い。足回りは固めすぎ?という感じすらした。タイヤはダンロップ「SPスポッツMAXX050」の225/55R19を装着していた。パドルシフトを操りながら、侵入してくるエンジン音、硬めのサスペンション、少し荒めの乗り心地は、かつてのGTカーに乗っていたホールドスポーツマンには、懐かしい乗り味かもしれない。
最新の「ヴェルファイア」は、古典的GTカーの要素を感じさせるフルサイズミニバンだ。かつてヤンチャだった、クルマ好きの大人にすすめたい。
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文/石川真禧照 撮影/萩原文博
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