9月29日の発売日がいよいよ迫って来た、スクウェア・エニックスのPS5/PS4/Steam用アクションRPG『ヴァルキリーエリュシオン』(※Steam版は11月12日発売)。今回は、その先行プレイレビューを掲載! エンディングまで遊んだことで見えてきた魅力の深淵について、ネタバレを含みつつ書き記していきます。
もちろん物語の核心に迫るネタバレには触れないよう考慮していますが、気になる方はご注意ください。
アクション性が高いバトルシーンでは属性の概念が超重要
『ヴァルキリー』シリーズ14年ぶりのコンシューマ新作として多くのファンの注目を集めている本作。東京ゲームショウ2022での試遊や生放送、体験版の配信などで、すでにゲーム性の一端に触れた方も多いのではないでしょうか。
今回はスクウェア・エニックスさんのご厚意もあり、本作の製品版をひと足お先にプレイさせていただきました。『ヴァルキリープロファイル』シリーズ3作品、そしてアプリ『ヴァルキリーアナトミア』もプレイしてきた自分にとって、本作はどのように映ったのか? どうしてもファン目線という名の色眼鏡はかかってしまう気もしつつ、出来るだけ客観的に感じたアレコレを書き記していきたいと思います。
まずはプレイヤーデータから紹介しますと、本作は難易度を“EASY”“NORMAL”“HARD”の3つから選べます。今回、自分は“NORMAL”で3章(チャプター3)までクリアし、その後“EASY”で最初からやり直してエンディングまで物語を進めました。
“NORMAL”でクリアできない難易度かというと、実際そんなことはなく。育成などにもしっかり時間を割けば、さほどアクションが得意ではない自分でも十分戦える手ごたえがありました。ただ、今回はどうしても物語の結末を見てから記事を執筆することにこだわりたかったので、先行プレイは“EASY”で遊ばせていただくことに。
そんな状況のなか、エンディング到達時のゲーム内カウントは17時間ほど。サブクエストやエインフェリアの育成に手を付けず、武器のカスタマイズも最低限にとどめ、難易度を一番簡単にすると、だいたいの方がこれくらいのプレイ時間に落ち着くんじゃないかなと思います。“NORMAL”であればもう少し時間がかかって、たぶん20時間くらいにはなりそうかなって手ごたえでしたね。
シリーズ初のアクションRPGとなった本作ですが、バトルシステムの詳細については先日アップした体験版レビューをお読みいただければご理解いただけると思います。
今回も端的にまとめておくと、
・エインフェリアたちと共闘する本格アクション
・ソウルチェインを駆使することでハイスピードバトルが展開
・属性や武器の相性が影響する戦略性
……上の3つがアクション要素の核となっていました。チャプター1で終了となる体験版ですが、ことアクション要素に関してはほとんどの要素に触れられますので、こちらをプレイすればバトルシステムについて正しく理解できると思います。
なお、SNSで体験版の感想などを拝見した感じ、“HARD”でも物足りなく感じている人もいるようですね。これは素直にすごい。自分にもそれだけの腕があれば……(ないものねだり)。
個人的には“EASY”といえどもボタンを連打しての脳筋プレイはせいぜい序盤のザコ戦までしか通用せず、アクションRPGとしてのツボをおさえつつ、丁寧なバランスに仕上げられている印象です。
勝利の秘訣として一番大切なのは、もちろんプレイヤーのアクションテクニックだと思いますが、それに比肩するくらい大切なのが相手との属性相性を考慮すること。本作は敵のHPゲージに、ご丁寧にも弱点属性がしっかりと表示されています。ボス敵の弱点ですらこれでもかと言わんばかりにあけすけで、「ちゃんと相手の弱点を突いて戦ってね!」ってアピールがものすごい。
弱点を突くには、アーツゲージを消費して繰り出す属性攻撃の“ディバインアーツ”、および各々が得意な属性攻撃を繰り出すエインフェリアとの連携が重要です。
弱点属性を突けば与えるダメージは如実に違ってきますので、エインフェリアのレインフォースは積極的に利用していきましょう。なお、ソウルゲージは敵撃破時に落ちるブルーソウルで結構な量を回復できますので、あまりケチケチせずに召喚しても問題ないです。むしろケチったぶんだけ苦戦して、結果的にエリクサーなどのアイテムを消費せざるをえない、なんて悪循環に陥る可能性もあります(体験談)。
アーツゲージを消費するディバインアーツは、エインフェリアの召喚ほど気軽ではないものの、ザコに囲まれたときや大きくて硬い敵と戦うときには積極的に使っていきました。アーツゲージは攻撃を命中させたり、ダメージを受けたりすることで回復できるので、無秩序に連発さえしなければザコ戦で枯渇する心配はほぼないかと。
一方、ボス戦ではディバインアーツこそが攻撃の中心。まずは相手の弱点属性をチェック→それを突けるエインフェリアを召喚→レインフォースがかかったヴァルキリーで弱点属性のディバインアーツを使用……という流れがセオリーとなってきます。
敵には属性のみならず、武器への相性も設定されており、苦手な武器で攻撃すればそれだけ戦況は有利になりました。とはいえ武器ごとに繰り出す攻撃アクションは異なり、なかにはややクセが強い技も存在するため、基本的に弱点は属性で突けば十分。武器自体は自分自身の好みや使いやすさ重視でいいと思います。
ちなみに、エインフェリアは1人ずつ仲間に加わっていく形となり、4人全員がそろうのは物語も後半に差し掛かるあたり。ザコ戦においては、エインフェリアの数が少ない(=弱点が突きづらい)序盤~中盤のほうが、後半よりも駆逐に時間がかかった印象です。それだけ本作は属性の概念が重要ってことなのかな、と。
あとは、相手に急速接近できるソウルチェインがとにかく強く、それでいて気持ちいいのでめちゃくちゃ多用していました。慣れてくると敵を空中に斬り上げて空中コンボを決める→吹き飛んだ敵にソウルチェインで近づいてさらに空中コンボを決める→敵を撃破したらソウルチェインで別の敵に近づいて奇襲をかける→奇襲攻撃で吹き飛んだ敵にソウルチェインで追撃を仕掛ける……といった立ち回りも身についてきます。この成長感と達成感たるや!
蝶のように舞い、蜂のように刺す──これこそ新しいヴァルキリーならではの立ち回りといえるかもしれません。
アクションの気持ちよさは本当にクセになるうえ、バトルをこなせばこなすほど成長を実感できるのは楽しいです。ただ、終盤は一度に出現する敵の数、および遭遇する機会ともに多くなりますので、人によってはバトル疲れを感じる人も出てきそう。ハイスピードでバトルが展開されるぶん、狭い場所での戦いでは若干3D酔いしやすい側面もあるので、適度に休憩を挟みつつプレイするのがオトナの嗜みといえるかも。
ヴァルキリーの能力や武器にはカスタマイズ要素も存在
ヴァルキリーにはスキルツリーが存在し、攻撃、防御、補助の三項目を成長させることができます。成長には魔晶石や紫炎石といったアイテムが必要で、これらは敵の撃破、およびフィールドオブジェクトの破壊時に入手することが可能。とくに紫炎石は入手機会も多いぶん消費量も多いため、メインストーリーのみを追いかけていくと枯渇しがちでした。壊せるフィールドオブジェは積極的に壊して回ってもよさそうです。
“攻撃”のスキルツリーでは物理攻撃力や魔法攻撃力を上げられるほか“レンジアタック”や“チェインアタック”といった特殊攻撃も習得可能。“防御”のスキルツリーでは、被ダメージ減少に加えて“ジャストガード”や“パリング”といった防御系アクションを覚えられます。“補助”のスキルツリーではヴァルキリーのHPやソウルゲージ、アーツゲージなどを増やすことが可能です。
攻撃、防御、補助それぞれには“サポート召喚”の項目も複数存在。たとえば補助のツリーで“サポート召喚(被ガードブレイク)”を覚えておけば、敵の攻撃でヴァルキリーのガードが破られた瞬間、エインフェリアが割って入って助けてくれます。このサポート召喚はシチュエーションに合わせて10種類ほどが存在し、いずれもソウルゲージを消費することなくエインフェリアを召喚できます。つまり、とても優秀。自分は最優先で習得させました。
武器の強化も可能。こちらもヴァルキリーの育成と同様、魔晶石などのアイテムを使用します。フィールドオブジェ、ガンガン壊しましょう(遠い目)。
ちなみに、自分がエンディングまでに入手した武器は全6種類。武器ごとに基礎攻撃のモーションや使えるアクションが変化し、戦闘には2本を選んで持ち込むことになります。2本の武器は攻撃アクション中以外ならいつでも持ち変えられるほか、メニュー画面からほかの4つの武器へ交換することも可能。最終的な物理&魔法攻撃力はどの武器も同じパラメータになるので、自分好みのアクションが繰り出せる相棒をチョイスして戦いましょう。
なお、エインフェリアたちは召喚回数でパラメータが上昇していくほか、特定のサブクエストをこなすことで攻撃技が強力になっていきます。自分は1回エンディングを見たあとで、これらのサブクエストをこなしましたが、最高ランク(4段階)まで強化するとかなり使い勝手も変わるので、もっと早くプレイしておけばよかったと後悔したものです。
何より、エインフェリア関連のサブクエストは各キャラの人となりに触れられることもあって、彼らへの理解度がグッと深くなります。初代『ヴァルキリープロファイル』は人間が死する際のドラマを重厚に描いていましたが、この『ヴァルキリーエリュシオン』では死したあと(エインフェリアになったあと)の物語に、ものすごく力が込められていました。縛りプレイなどにこだわる人でもない限り、エインフェリア関連のサブクエストは優先的にクリアしていくとよさそうです。
魔晶石などはサブクエストでもたまっていきますので、やり込み派の方はエインフェリアの強化がてら、ぜひ挑戦してみてください。
謎めいたストーリーはマルチエンディング! 条件ははたして……
ここまではシステム面について、感じたことを感じたままに書き連ねてきました。ここからはストーリーの感想を述べたいと思うのですが……正直、どこまで言及したものかと悩んでいます。というのも、プロデューサー/ディレクターである近藤貴浩氏へのインタビューで、本作がマルチエンディングであることが判明したのですが、自分はまだ、いわゆる“ベストエンディング”には辿り着けていないと思うので……。
ええ、ちょっとモヤモヤが残るんですよ。たぶん、多くの皆さんが最初はこのエンディングにたどり着くのではないかと思っているのですが。微妙にビターな終わり方で、むしろまだ終わってない! って気持ちだったり(苦笑)。
ここらへんはある意味、初代『ヴァルキリープロファイル』のプレイ感をリスペクトしているともいえるので、自分としてはおおいにアリですね。さすがにあそこまで複雑なフラグではないと予想しているのですが……どうなんでしょう? 個人的に特定のサブクエストのクリア、そしてニーベルン・ヴァレスティが意味を成してきそうだと感じています。……完全にあてずっぽうなので、間違えていたらごめんなさい。
ちなみに、初代へのリスペクトは何もエンディングへの導線のみならず、さまざまなところに感じられました。発売前のタイミングでどこまで書いて許されるかわかりませんが、たとえば最初は人間味を感じられないヴァルキリーが、エインフェリアたちと交流することで徐々に人間っぽくなっていくところとか。腹にイチモツ抱えているオーディンと、彼に使役されるヴァルキリーの関係性とか。鈴蘭畑に隠された大切な想いと秘密とか……もういろいろ!
もちろん、本作は初代とはなんの関連性もないので、エピソードを知らなくてもまったく問題なくプレイできます。ただ、知っていたら「おや?」っと感じられる要素もさりげなく盛り込まれているのもまた事実。PS5/PS4版『ヴァルキリープロファイル -レナス-』もありますし、もしまだ未プレイ&本作を遊んで気になったという方は、ぜひ『レナス』も遊んでみてほしいです。こちらも名実ともに“神ゲー”ですのでね。
これはあくまで主観ですが。終盤はグワッと盛り上がるものの、そこに至るまでの序盤~中盤は、ちょっと展開が大人しすぎるのが気になりましたね。ヴァルキリーの成長を描くという物語の構成上、序盤は人間味がないぶんドラマ性が薄くなるのも仕方ない気はします。それでも、物語が大きく動くのはエインフェリアが全員集まってからになるというのは少しもったいないような……。ここらへん、サブクエストを吹っ飛ばした弊害かもしれませんけどね。
ヴァルキリーこそ無個性なものの、エインフェリアたちはしっかりと人間味が感じられてそこはよかったです。みんなの兄貴分として頼りになるイーゴン。抜け目ない軍師的なポジションでありながら、茶目っ気もあるサイファ。凛とした真っすぐな性格と、死してなお王女としての矜持を貫くクリストフェル。めちゃくちゃ重たい過去を背負いながら、どこまでも優しいタイカ。彼らとの絆はメインストーリーのみならず、サブクエストを進めることでもしっかり描かれていきますので、ばっちり感情移入できると思います。
仲間になる瞬間はいろいろあるわけですが、最終的に、4人が4人ともみんなヴァルキリーのことが大好きになっていくのがすごくいいんですよ。それはひとえに、最初はツンツンしていたヴァルキリーが少しずつ人間たちに心を開き、彼らのことを知ろうとしているからに他ならず……この関係性、とても胸がぽかぽかする!
願わくば自分のように駆け足ではなく、サブクエストまで含めてじっくり腰を据えてプレイして、エインフェリアたちとの関係性を深めてほしいですね。もしかしたら、それがベストエンディングへ繋がるカギになっているかもしれませんし(これも確信はありませんけど……苦笑)。
桜庭統さんによるサウンドがしっとりと重厚なのも、個人的にすごくお気に入りな部分です。初代は神曲「未確認神闘シンドローム」をはじめ、軽快さと神々しさが同居したサウンドにオリジナリティを感じたものですが、今回はどちらかというともの哀しくダークなサウンドが多めで、それが世界観にぴったりマッチしているんですよね。桜庭さんによる『ヴァルキリー』サウンドの新境地、こちらもぜひお楽しみに。
とにもかくにも、14年ぶりのコンシューマ版『ヴァルキリー』シリーズの新作発売まであと少し。個人的に、ベストエンディングはゲーム発売後に大手を振って遊んだうえで辿り着きたいと思っています。じつはベストエンディングなんて存在しない、ビターテイストな作品だったらどうしよう……などと、少しだけヒヤヒヤしつつ。
記事を読んで少しでも気になった方は、現在PlayStation Storeで体験版も配信中ですので、まずはそちらをプレイして感触を確かめてみてはいかがでしょう? それでは、今回はこのへんで。
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