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Saturday, February 26, 2022

薄暗いロシア社会、膨れあがる無力感と不満 侵攻の先にある未来は [ウクライナ情勢] - 朝日新聞デジタル

 ウクライナへの侵攻に乗り出したロシアのプーチン大統領は、国内でも強権ぶりを強めている。私がモスクワに赴任して3年余り。日本に住む両親や姉妹、おいっ子らの近況は、家族のLINEグループのメッセージを時々のぞいて確認している。だが今年の1月半ば、いつものようにスマホでLINEを見ようとしたところ、何度やっても開かない。原因を調べ、理由がわかったとき、ロシアの社会を覆う灰色の雲がまた厚みを増したような気がした。

 ロシアではLINEは、2017年5月から国内での接続が遮断されている。ロシア人ユーザーの個人情報をロシア国内に保存し、当局が求めた場合は提出を義務づけたネット規制法に応じなかったためだ。ただ、当局の接続規制をかいくぐることができる仮想プライベートネットワーク(VPN)のアプリを使えば、接続は可能だ。法律上、VPNアプリの使用は違法ではない。事前にVPNアプリを起動する手間はかかるが、私もこれまでさほど気にせず使ってきた。

 ところが当局は昨年6月から、VPNサイトやアプリのブロックを開始。年末までに10以上のサービスが使えなくなった。1月にはついに、私が使っていたVPNアプリにまで対象が広がった。慌てて別のVPNアプリをインストールしたが、それも今は使えなくなっている。

 VPNの規制は、有害な児童ポルノサイトなどへの接続を防ぐためという名目で始まった。だが本当の狙いは、プーチン政権を批判するサイトへのアクセスを遮断することにある。政権批判の急先鋒(きゅうせんぽう)として知られる反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏は昨年1月に拘束され、2年半の実刑判決を受けて刑務所に収監された。活動の母体となる組織は「過激派組織」に指定され、支持者らが発信を続けるサイトへの接続はできなくなった。さらにロシアでは、プーチン政権を批判するウクライナやベラルーシのメディアのサイトも、接続がブロックされている。VPNは、国民が反政権派の動向を知ったり、検閲を受けていない情報を得たりするのに欠かせないツールなのだ。

権力が恐れるネットの力

 ソ連崩壊後の1990年代…

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