東京都町田市立小6年の女子児童(当時12歳)がいじめを訴えて自殺した問題で、学習用デジタル端末のチャットで女児を中傷していた同級生らのメッセージが何者かに削除されていたことが、市教育委員会への取材でわかった。メッセージの復元は可能だが、同校ではパスワードが全員で共有され、「なりすまし」による操作ができたため、投稿や削除をした人物の特定は困難だという。
同校で児童らに配布されたタブレット端末は、文字で会話するチャット機能が利用できた。女児は昨年11月30日に自宅で自殺。両親の代理人の金子春菜弁護士によると、学校の調査で、死亡2か月前に複数の同級生が女児について、「うざい」「死んで」とチャットでやり取りしていたとの証言がある。
市教委によると、学校が同級生らのチャットのやり取りを確認しようとしたが、中傷するメッセージはすでに削除されていた。
当時、同校ではチャットの投稿、閲覧、削除に使うIDは通し番号などで類推できるものだった。さらにパスワードは、初期設定の「12345678」の末尾に「9」を加えただけで、全員共通だった。
市教委は昨年5月、パスワードを他人から推定されにくいものにするよう市内の公立学校に通知していたが、同校は女児の死亡後の昨年12月まで対策を講じなかった。このため、誰でも他人のチャット内容をのぞき見ることができ、他人になりすまして投稿や削除ができる状態だった。
チャットのシステム上、削除されたメッセージの復元は可能だが、パスワードが共有されていたことから、「そもそも誰が投稿し、削除したかが分からない状態だ」(市教委)という。
この問題では、石阪丈一市長が、市条例に基づく「いじめ問題調査委員会」を設置する方針を明らかにしている。市教委は「調査委からの要請があれば、すぐにメッセージの復元作業を始められるよう準備を進めている」とした。
子供のネット問題に詳しい竹内和雄・兵庫県立大准教授は「詳しいことは分かっていないが、今回はIDやパスワードのずさんな管理が、使用する児童の匿名性を高め、チャットでの中傷を助長したと考えられる。再発防止のためにも、中傷メッセージを投稿・削除した人物も含め、調査委員会は可能な限りの調べを尽くしてほしい」と語る。一方で竹内准教授は「小さな子供は複雑なパスワードを覚えられないこともある。国や自治体は、顔や指紋を使った生体認証や、『死ね』などの有害な言葉を書き込めないようにする機能の導入などを検討するべきだ」と指摘した。
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