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夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定について、最高裁判所大法廷は2021年6月、憲法24条の「婚姻の自由」には違反しないとする判断を示しました。
15人の裁判官中11人が「合憲」との判断を下し、4人は違憲とする意見や反対意見を出しました。
大法廷は2015年にも民法の規定を合憲としており、「夫婦別姓を認めない」という判断は今回で2度目となります。「社会や国民の意識の変化を踏まえても、2015年判決の判断を変更すべきとは認められない」とし、選択的夫婦別姓などの制度の在り方は「国会で論じられ、判断されるべきだ」と指摘しました。
結論を押し付け合う「テニスのラリー」
夫婦別姓を認めない民法に対し、最高裁判所大法廷は2015年に続き、2度目の「合憲」判断を下した。
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この判決について「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」事務局長の井田奈穂さんはBusiness Insider Japanの取材に対し、「まるでテニスのラリーのように、司法も立法も結論を出すことから逃げている」と厳しく指摘します。
「そもそも、判決文もこちらが訴えた論点に答えていません。法律婚にもいろいろな形態があっていい、と訴えたのに、『夫婦同姓は法律婚のパッケージの一部で違憲ではない。パッケージ自体が妥当かについては司法では判断できない』との一点張りで、肩透かしを食った気持ちです」(井田さん)
夫婦別姓を求める動きに対して現在政府が提示しているのは「旧姓の通称利用」です。
第5次男女共同参画基本計画(2020年12月閣議決定)では、選択的夫婦別姓をめぐり「婚姻により改姓した人が不便さや不利益を感じることのないよう、引き続き旧姓の通称利用の拡大をその周知に取り組む」としています。
ただし、今後は「国民各層の意見や国会における議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、さらなる検討を進める」とも明記しています。
「旧姓の通称使用拡大では(法的な裏付けがないため)不十分だというのは当事者が一番分かっています。まずは当事者の意見を聞き、その問題をどう解決すべきか?と動くのが立法府の役割であるはず。そして現に(同姓の強制によって)問題が生じていることは、内閣府も外務省も認めているのです」(井田さん)
夫婦別姓に賛成しないのは「自民党のみ」
7月4日に投開票される都議選。各政党の「選択的夫婦別姓」への意見は?
撮影:吉川慧
では、肝心の「立法府」の議論はどうなっていくのでしょうか。
任期満了を迎えるため、2021年秋までには衆院総選挙が行われる予定です。その前には、7月4日には都議選が実施されます(6月25日告示)。Business Insider Japanは、都議選に候補者を擁立する全政党にアンケートを実施しました。
選択的夫婦別姓の導入の是非について聞いたところ、回答に「賛成」の文言がなかったのは自民党のみという結果になりました。
賛成派の中でも、回答には濃淡がありました。賛成する理由として、共産党・れいわ新選組は「女性の尊厳」「女性差別」の観点から、公明党はそれに加えて「精神面やキャリア面での負担」を掲げています。
生活者ネットワークは「若い世代を中心とした世論」を理由に、すぐにでも導入すべきとしています。
以下、全政党の回答を記載します(太字は編集部によるもの)。
東京都議会自由民主党
都議会では「選択的夫婦別姓制度に係る国会審議の推進に関する意見書」を全会派一致で採択しました。現在、国政での議論が活発に行われています。その意義や必要性、家族生活、社会生活、子供世代への影響等について、慎重に議論を深めるべきと考えます。
都民ファーストの会 東京都議団
選択的夫婦別姓の導入に賛成です。 社会の変化に伴い、婚姻に伴う改姓による不利益が大きくなっており、男女同権の理念に基づいて、選択肢を拡大する選択的夫婦別姓制度を導入すべきであると考えるからです。
日本共産党東京都議会議員団
選択的夫婦別姓制度の導入に賛成します。姓名は個人の人格の象徴であり、選択の自由が当然保障されるべきです。夫婦同姓義務付けはジェンダー平等、民主主義に反します。 結婚時に、女性が改姓する例が96%です。姓が変わることで、仕事上など様々な不利益を受けている女性がたくさんいます。夫婦同姓を法律で義務づけている国は、世界で日本だけです。国連の女性差別撤廃委員会も、法律で夫婦同姓を義務付けることは女性差別で改正すべきだと勧告しています。 一日も早い選択的夫婦別姓の実現へ、全力をあげます。また、女性のみに課せられた再婚禁止期間、婚外子差別規定など、民法・戸籍法などに残る時代遅れの差別的な条項をなくします。
都議会公明党
都議会公明党はこれまで一貫して選択的夫婦別姓制度の導入に賛成してきている。また、これまで都議会において公明党が紹介議員になった国への意見書提出を求める請願が賛成多数で採択されている。さらに、今年6月の都議会第6回定例会では全会一致で国への意見書が可決された。日本の夫婦同姓制度のもと、結婚により改姓する96%が女性。改姓によって女性が精神面やキャリア面で負担を負っている現状がある。現在の同姓制度の根底には、女性蔑視や性差別に通ずる考え方が根強く残っており、世界的にジェンダーフリーが叫ばれている今、改善が望まれている。姓を「選択」できる制度にすることにより、夫婦それぞれの意思はしっかりと尊重されることになる(「同姓がいい」という人にとっても)。
東京維新の会
現実に夫婦同姓による弊害に苦しむ方が現に存在していることから、選択的な夫婦別姓は導入すべきものであると考える。その上で、家族の一体感や戸籍一体性との両立を鑑み、戸籍に旧姓を記し法的効力を付与する、維新版「選択的夫婦別姓」を提案している。
都議会生活者ネットワーク
賛成です。 夫婦同姓を強制されるのは、女性の側が96%変更している現状を考えると問題であり、希望すれば別姓を選べるよう制度改正するべき。通称使用では、戸籍名と違うことでさまざまな不便や不利益があり、また、男性が苗字を変えることを選べばいいという問題でもありません。若い世代を中心に選択的夫婦別姓に賛成する世論も高まっていることから、すぐにでも導入するべきと考えます。
れいわ新選組
現行の夫婦同氏制度は、日本の家制度の名残りであり、個人の尊厳を保障した憲法と相容れません。また、2015年の政府答弁書によると、「夫婦が法律で同性を義務付けている国があるのは日本だけ」とのことです。現状では、事実上女性に姓の変更を強いており、女性の個人の尊厳がないがしろにされている状況です。そのため、別姓を望む夫婦に、その選択肢を設けることは両性の平等に資するものであると考えます。
東京都議会立憲民主党
立憲民主党は、選択的夫婦別姓の早期実現に向けて、法案を提出するなどの取り組みを進めてきました。今後も、選択的夫婦別姓の早期実現に向けて全力で取り組んでまいります。
古い政党から国民を守る党
夫婦別姓を認めない民法と戸籍法の規定が憲法に違反するかどうかが争われた家事審判の特別抗告審で、最高裁大法廷は「合憲」との決定を出したが、この問題はむしろ、民主政治が正しく行われなかったことによる国会の問題である。選択的夫婦別姓の導入の是非について、民意を正しく汲み取り国会で十分な審議がなされ、立法府として必要な法整備がなされていれば、このような判決には至らなかったのではないか。今回、最高裁の判決をきっかけにして注目を集めている今、民意を踏まえた国会での審議を強く求めていく姿勢が必要である。
※国民民主党は期日までに回答が得られませんでした。回答が届き次第、更新します。
(文・西山里緒)
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