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Saturday, July 25, 2020

20年以上ヤクザを取材してきたライターが「52歳でピアノを習い始めて」わかったこと(文春オンライン) - Yahoo!ニュース

「プロのピアニストを目指すなら幼少期から習う必要がありますが、大人になってからピアノを学ぶ方が得るものは多いと思います。学習するための『芯』があるから、色々なものを吸収できる」 【写真】この記事の写真を見る(2枚)  と語るのは暴力団社会に詳しいライターの鈴木智彦さん。本書は52歳にしてピアノを習い始め、発表会で初舞台を踏むまでの1年を綴った異色作だ。 「人によると思いますが、俺は校了後にハイになるんです。特に『 サカナとヤクザ 』は5年がかりで取材していたので尚更でした。興奮冷めやらぬまま、映画館で朝から晩までぶっ通しで観た映画のうちの1本が、ABBAのヒット曲で構成されたミュージカル映画『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』。心温まる物語ですが、この程度では普段の俺は感動しません。ところが『ダンシング・クイーン』が流れたとき、ふいに涙が溢れてきました。グリッサンドから始まるピアノの旋律が素晴らしくて、全身の毛穴から音楽が入り込むような恍惚感があった。そして雷に打たれたように、『ピアノでこの曲を弾きたい』と思ったんです。  中学時代にクラリネットを齧り、大学までロックを熱狂的に聴き、音楽には一家言あるつもりでしたが、まさかABBAで感動するとは――。思い返せば、小学生の頃からピアノを習っている女子が羨ましかった。尊敬する作家の溝口敦さんにも、『元々ピアノを弾きたいと思っていたのでしょう。素養と関心がないとできないことだよ』と言われました」  衝撃のABBA体験を経て、鈴木さんはすぐに腰を上げた。ピアノ教室に次々と電話を掛け、「『ダンシング・クイーン』が弾きたいんです」と単刀直入に訴えたが、成人男性を受け入れている教室は極めて少数。なんとか漕ぎつけた最初の体験レッスンで“運命の人”レイコ先生と出会った。

「レイコ先生は演奏も生徒の乗せ方もすごく上手いです。『「ダンシング・クイーン」を弾けますか?』と例の質問をしたときもピシャリと一言、『練習すれば、弾けない曲などありません』。俺は長年の取材の蓄積から、暴力団について聞かれればパッと答えられます。レイコ先生も『人に教えるとは?/音楽とは?』と考え続けているから、どんな問いにも硬質な答えを返してくれる。言葉の端々からそう感じました」  レッスンの感想をSNSに書き込むと、編集者から本書の執筆依頼が舞い込んだ。「発表会をエンディングにして欲しい」というリクエストをされ、渋々エントリーしたのだが――。 「発表会直前は原稿そっちのけでピアノばかり弾いていました。編集者に進捗を聞かれても『それどころじゃない。弾けるか弾けないかの瀬戸際なんだ!』と突っぱねて。ついに迎えた本番では、緊張のあまり数小節飛ばして演奏してしまいました。20年以上ヤクザを相手に取材してきた経験から、並大抵のことでは動じない自信があったのですが……。俺の人間力はこの程度かと叩きのめされましたね。レイコ先生は『お通夜みたいに悲愴な感じになる』と言っていましたが、その通りでした」  ピアノを始めたことで、思わぬ副産物もあった。 「以前は、きれいなものを褒めるときの語彙が『美しい』しかなかった。犯罪や暴力団に関する血なまぐさい語彙は豊富にあるのですが(笑)。『ヤクザときどきピアノ』を書いたことで、新たな語彙を自分の辞書に加えられました。きっと類書や二番煎じはあり得ない。それは嬉しいですね」 すずきともひこ/1966年、北海道生まれ。雑誌・広告カメラマンを経て、ヤクザ専門誌『実話時代』編集部に入社。『実話時代BULL』編集長を務めたのち、フリーに。著書に『サカナとヤクザ 暴力団の巨大資金源「密漁ビジネス」を追う』『潜入ルポ ヤクザの修羅場』など。

「週刊文春」編集部/週刊文春 2020年7月30日号

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