
最先端のCTスキャンで、古代エジプトを生きた6人の“人生”に迫る
この展覧会では、暮らした時代、年齢、社会的地位が異なる6人のミイラが紹介されている。6人はそれぞれ紀元前800年~紀元後100年頃にかけて古代エジプトを生きた人々だ。 展示会最大の特徴は、実際のミイラとミイラ内部の高精細な3次元構築画像を並列させた展示だ。 イギリスの大英博物館は最先端のCTスキャンでミイラを解析。頭頂部から足先までを輪切り状に撮影した1体あたり約7000枚にもなる画像をつないで、3次元構築画像を作成した。 ミイラそのものに加えて、当時の信仰や食事、化粧用品、装飾品などの生活習慣も紹介。ナイル川流域での生と死にまつわるさまざまな側面に光を当てる。 大英博物館のハートウィグ・フィッシャー館長は、本展の図録でCTスキャンによる解析の成果をこうつづっている。 「古代エジプト人は文字による記録を多数残しましたが、それらが語るのは一部のことでしかありません。本展の目玉である6体のミイラを、CTスキャンを用いた画像解析技術を駆使して研究した結果、他の情報源からはなかなか得ることができない独自の発見がありました」 「これら6体のミイラを通して古代エジプト人の生活や健康状態、病歴を調査し、信仰や葬祭儀礼、日常の慣習についても詳細が明らかになりました」
ミイラの「透視」で動脈硬化、悪性腫瘍の骨転移も判明
監修者の一人で国立科学博物館・人類史研究グループ長の坂上和弘さんは「ミイラは、その人が生きた『履歴書』のようなもの。人の生きた証が、そこに存在するんです」と、Business Insider Japanの取材に語る。 「今回の展示では、CT解析の話を中心としながら、ミイラとなったその人の人生を知る……という構成になっていることが特徴です」「個々人の情報を大切することで、当時の人々や社会の全体像がみえてくる。そこが本展の意義だと思います」 かつてこうしたミイラの構造を調査するには、亜麻布(包帯)をほどいて解剖するしかなかったが、1980年代にはX線撮影による診断技術が発達。 現在は包帯を解かず最新のCTスキャンで「透視」するかのごとくミイラを解析できるようになった。 坂上さんは新たな発見について、こう解説する。 「今回、高性能のCTを用いた解析によって、その人が抱えていた疾病などもわかりました。たとえば“現代病”の一つと言われる動脈硬化です。心臓の冠状動脈や頚椎の椎骨動脈などが硬化している例もみられ、心臓と脳の両方に影響を与えていた可能性があります」 たとえば、上の写真は古代エジプトの都市テーベ(現:ルクソール)の役人「アメンイリイレト」のミイラだ。紀元前600年頃(末期王朝時代・第26王朝)の人物だと推定される。 CTスキャンではさまざまなことが判明した。まず、身長が164cmで、35~49歳で亡くなった中年の男性だとわかった。 骨盤には大きさ2cm以上にわたる骨が溶けたような変化が見られ、前立腺や腎臓などで発生した悪性腫瘍が骨に転移した痕跡と推定される。 動脈の内部表面には石灰化したプラーク(脂肪の塊)も確認されることから、アテローム性動脈硬化症にも悩まされていたことがわかった。 坂上さんは、さらにこう付け加える。 「動脈硬化は年齢を重ねるほど進みやすく、現代では50~60代を超えるとそのリスクが高くなるとされます。ただ、今回紹介する6体のうち4体、それも30~50代の比較的若い人々のミイラで動脈硬化が見られました。たとえば偏った食事だったり、運動していなかった可能性……なども考えられますよね」 上の写真は、古代エジプトで食べられていた食材の遺物だ。遺跡で発掘されたこうした食べ物の遺物や壁画などからは、古代エジプトの人々がどんな食生活だったのかが分かる。 上段は左からビールの原料となったエンマー小麦・大麦、すり潰された大麦、乾燥ブドウ。下段は左からヤシの実、ザクロ、硬果の殻、エジプトイチジク、ナツメヤシだ。 この他にも豆や魚、鶏肉、キュウリ、ニンニク、葉タマネギなど様々な食材が食べられていた。 肉は特別な機会に食された贅沢品だったが、死後ミイラ化されるような富裕層は頻繁に肉を食べていたようだ。 古代エジプトの人々の主食はパンと濃厚な大麦ビール。富裕層はワインも飲んでいた。 特にパンは種類が豊富だった。大英博物館にもパンの遺物が所蔵されている。上の写真下段に並ぶのはパンの遺物で、左から虫害のあるパン、葉の形をしたパン、円形のパン、手跡が残ったパン。 これらを走査型電子顕微鏡で分析したところ、小さな石や砂、もみ殻が検出された。とても固いパンだったことがわかる。
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